【パラスポーツ】パラ陸上=義足のレジェンドジャンパー 2m挑戦へ第一歩~日本選手権・2日目①

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日本を代表するパラアスリート・鈴木徹の跳躍(撮影:岡田剛)

パラ陸上の日本選手権第2日は9月6日、埼玉県の熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で行われた。6大会連続パラリンピック代表内定の男子走り高跳び(T64)・鈴木徹(SMBC日興証券)は1m90をマーク。大台の2m超え、そしてパラリンピックにおける悲願のメダル獲得へ一歩を踏み出した。トラック種目では女子100m(T47)で重本沙絵(日体大大学院)が自らの日本記録を0.01秒上回る12秒85で優勝した。

 

 

 

今大会は2m届かずも 踏み切りを見直して活路~鈴木徹

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走り幅跳びで1m95をマークした鈴木徹(撮影:岡田剛)

「踏み切り」から大台突破へのヒントを探っている。

男子走り高跳び(T64)に出場した鈴木徹は、1m75からスタートし、1m90まで一発でクリア。大会記録、さらには2m超えのジャンプも期待されたが1m95で3度失敗。「高さが上がってきて多少力が入った」と、さばさばした表情で話した。

緊急事態宣言解除後、5月末から競技場でのトレーニングを再開させ、6月には約3カ月ぶりに跳躍練習を行った。40歳、キャリア20年の日本を代表するトップジャンパーにとっても大きなブランクだった。

今季初戦は8月に地元・山梨で行われた県選手権。東京大会代表内定を決めた19年11月の世界選手権から9カ月ぶりの実戦だった。健常者も出場していた中、1m90の記録で3位。2m目前の記録は練習ができず、大会すら行われていなかった状況を考えればスタートは上々だった。  

現在は踏み切りに重点を置いている。空中姿勢を無視して助走を短くする工夫をしているが、とにかく踏み切りからジャンプ全体を見直している。「今は(練習を)やりながら試合が行われている。なかなか大きなジャンプはできないが、(11月予定の)関東パラには形にしたい」と話し、2か月後の大会へさらに磨きをかけていく。

新たな武器も手に入れる。先が3本指のように分かれた新しい義足を取り入れ、練習から使用していくという。「(義足は)この後、受け取ります」と、早くも準備は整う模様。パラ陸上界のリビング・レジェンドは、今なお自らの可能性を広げようとしている。


リオ銅メダリストが理想の「400m」へあと一歩~重本沙絵

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16年リオパラリンピック銅メダリストの重本沙絵は進化をうかがわせた(撮影:岡田剛)

2種目に出場した重本沙絵は、100mで4年前の日本選手権で自身が記録した12秒86を上回る日本新で優勝。16年リオで銅メダルを獲得した400mは、リオでのタイム1分0秒67を上回る1分0秒35だった。

最初に走った100mはスピードに乗って走り切ることができた。一方、400mは前半から飛ばす狙い通りのレース運びはできた。しかし、ラスト150mのギアチェンジができず、つまずくような場面もあったが、リオの記録より速かった。後半もスピードを維持することができれば、タイムが伸びる余地は大いにある。  

練習では100mを中心に、250mや300mを走る時も前半から飛ばすことを意識していたという。「前半はクリアできた。後半は直線で走りを切り替えられず、上手く足を動かせなかった」。途中までは思い通りだっただけに、後半の走りを悔やんだ。

まだパラリンピックの代表には内定していない。それでも「あと1年もっと速くなるための期間ができた」と前向きに捉え、自粛期間中の練習も集中できた。2大会連続のメダルへ。明確になった課題と向き合って、レベルアップを目指す。

世界記録ホルダーが1500mで大会新~佐藤友祈

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世界記録保持者の佐藤友祈が貫禄を見せた(撮影:岡田剛)

T52の4種目の世界記録ホルダー・佐藤友祈(WORLD-AC)は男子400m、1500mの2種目に出場。単独出場となった1500mは、最後まで安定した走りで3分33秒82の大会新記録をマーク。400mは58秒03と今季の世界ランキング1位に相当する唯一1分を切るタイムで走り切った。

400m、800m、1500m、5000mと4種目の世界記録を持ち、21年東京パラリンピックの400m、1500m代表に内定。T52クラスの800m、5000mは行われない。

19年11月の世界選手権では、日本人選手で唯一の2冠。地元で行われるパラリンピックでも「金メダル最有力候補」として大きな期待がかかる。 (岡田 剛)