【オリパラ】世界各国の“五輪虎の穴”~ケニア、豪州編

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(写真:photoAC)※写真はイメージ
五輪の日本代表らを鍛える「味の素ナショナルトレーニングセンター」が、20年6月から順次、営業や業務を再開する。新型コロナウイルス感染拡大の影響で練習拠点が閉鎖に追い込まれたのは日本も世界も同じ。20年夏に開催される予定だった20年東京大会に出場していたであろう、日本のライバルたちが鍛錬してきた各国の“虎の穴”を紹介する。
 

 


大迫の日本新記録を後押しした聖地「イテン」

ケニアにある小さな町イテンは、「マラソンの聖地」と呼ばれている。ケニア国内の選手に限らず、世界各国から常時1000人を超える中長距離のトップ選手が長期合宿を行うため集まってくる。20年3月の東京マラソンで、2時間5分29秒の日本新記録をマークした大迫傑がトレーニングを積んだことでも有名。世界的なマラソンランナーを数多く輩出してきた町の入り口には「チャンピオンズ・ゲート」と呼ばれる門があり、「WELCOME TO ITEN HOME OF CHAMPIONS(チャンピオンの本場イテンへようこそ)」「THANKS FOR VISITING HOME OF CHAMPIONS(チャンピオンの本場への訪問ありがとう)」と書かれている。

地元高校の陸上合宿がきっかけ

首都ナイロビから飛行機で北西1時間ほどの都市エルドレットから、さらに北東へ車で1時間のところに位置する、標高2400メートルの高地。朝晩は寒いが、日中の気温は18~25度。雨期でも、雨は夕方や夜に降ることが多いため、昼間の気候は比較的安定している。地元高校の校長が、同校の生徒たちが陸上の長距離選手に向いていることに気づき、学校の休みを利用して合宿を始めたことがきっかけ。当時から、国外選手も受け入れていた。

朝のラッシュ時はランナーだらけ

町中ではいたるところで大勢のランナーが走っている様子を見ることができ、特に朝のラッシュ時は見もの。特別にハイテクな施設があるというわけでなく、単に「走ることに集中できる場所」といえる。

そんな中、1999年には、同地初の本格的なトレーニングセンターで、外国人選手を対象とした「High Altitude Training Centre(HATC)」が開業。70人が宿泊でき、ジムやプール、サウナなどが整備されている。

コロナ禍でまさかの逮捕劇

このイテンで20年3月、12人のランナーが逮捕されたと英BBCが報じた。報道によると、ランナーたちは3月30日の朝のランニングを終えたところで逮捕され、イテンの警察署に10時間以上も拘束された。新型コロナウィルス感染拡大を防ぐために、国が定めた社会的距離を守らなかったためだとされている。すでに釈放されているが、このグループには海外選手も含まれていたという。

豪州は国家主導モデル

豪州のナショナルトレーニングセンター及び強化拠点施設は、大別すると国内外に3カ所ある。中核となるのが、1981年に設立された「オーストラリアスポーツ研究所(Australian Institute of Sport:AIS)」。トップアスリートを支援するためのトレーニング拠点で、ナショナルトレーニングセンターとしての機能だけでなく、スポーツ医科学研究機能を併せ持つ。設立当時、国際スポーツ舞台を席巻していた旧ソビエトを中心とした旧共産主義国による国家主導型がモデルとされた。

国内各地に専門拠点

特に 20 歳前後の若いアスリートに質の高い指導が提供され、多くのオリパラ選手を輩出している。現在は、五輪やパラリンピックなどの 26 種目が対象。約 75 人のコーチのもとで 常時700 人のアスリートがトレーニングに励んでいる。
首都キャンベラにあるメインの拠点施設は、65 ヘクタールの敷地内に、陸上競技、バスケットボール、体操、ネットボール、サッカーなど 12 種目の専用スポーツ施設や多目的施設、トレーニング施設、宿泊施設、スポーツ医科学研究施設、託児施設などが完備。各競技の状況に応じて、シドニーやメルボルン、ブリスベンなどにも強化拠点がある。

98年長野五輪後から冬季種目も本腰

「オリンピック冬季種目トレーニングセンター(Olympic Winter Institute of Australia:OWIA)」は、1998年長野五輪開催後の99年に、AISの冬季種目専門のトレーニングセンターとして設立された。特に、スキーのフリースタイル、スケートのショートトラックが強化の対象となっている。2010年2月には、フィギュアスケート専門の強化拠点がメルボルン市郊外に設置された。

欧州にも強化拠点を開設

2011年3月には、初の海外拠点も開設している。「ヨーロッパ・トレーニングセンター(European Training Centre:ETC)」をイタリアのガビラテに設置。豪州選手のさまざまな地理的問題を軽減するため、また欧州でのスポーツの医科学サービス、トレーニング施設を提供するために、政府が 1250 万豪ドル(約 10 億 2,500 万円)を投じて立ち上げた。

センターを中心に、現地のクラブや施設などを利用して、アーチェリー、射撃、ボート、カヌー・カヤック、自転車、サッカー、ヨット、ビーチバレーボール、バスケットボール、水泳、トライアスロン、ラグビー、ゴルフ、テニス、バレーボール、陸上、ボクシング、水球といった多くの種目が対象となっている。
(mimiyori編集部)

 

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