【サッカー】クラブワールドカップ アフリカ王者「アルアハリ」最強の矛と盾が大暴れ

クラブワールドカップ エジプト ピラミッド

クラブワールドカップが2月にいよいよ開幕!栄冠を手にするのはどのクラブ?

(写真:にゃがさん/photoAC)※写真はイメージ

21年2月、コロナの影響で延期されていた、サッカーのFIFAクラブワールドカップ2020(CWC)が、カタールでようやく開催される。

4日深夜(日本時間)の準々決勝に登場するアフリカ王者・アルアハリ(エジプト)は、エジプトのみならずアフリカ全土から絶大な人気を誇るクラブ。

12月末には、監督や選手が相次いで新型コロナウイルスに感染するも、現在は復帰し、2月の決戦に向け準備は万全の様子だ。

各チームのお国柄から注目選手のプチ情報まで幅広く紹介する。

 

 

 

THE・エジプト!アフリカの伝統クラブ・アルアハリ

1907年に創立以来、100年以上の歴史を誇るエジプトのクラブ「アルアハリ」は、アフリカ・中東地域に6000万人ものサポーターを持つ名門。

高まる反英運動やナショナリズムを背景に、エジプト人のためのスポーツクラブを設立しようという機運が高まり、エジプト人の学生のためのクラブを設立したのがきっかけ。

よってチーム名は「アルアハリ(国民)」、チームカラーは当時のエジプトの国旗の色であった赤色を採用。

このチームに,人びとはエジプトの連帯と希望を託したといえる。

 

その想いに答え、アルアハリはエジプト・プレミアリーグ優勝42回を始め、タイトル数でも他を圧倒し、アフリカの20世紀最優秀クラブにも選出された。

 

そして現在はエジプトだけでなく、世界中にその名をとどろかせている。

20年5月には、世界のサッカークラブのタイトル数ランキングでも120タイトルで1位に輝いた。

また、世界最高のサッカースタジアムランキング(本拠地カイロ国際スタジアム)、世界で最も美しいサッカークラブのエンブレムランキングでも圧勝でトップに輝いているのだ。

 

決勝日のカイロはコロナでも熱狂の渦

無観客で行われた20年11月27日、CAF-CL(アフリカ・チャンピオンズリーグ)決勝では、ザマレク(エジプト)を2対1で制し、史上最多9度目のアフリカ王者に輝いた。

両チームの試合は普段でも「カイロダービー」と称される人気カード。

コロナ対策で無観客開催にしたにも関わらず、街頭のカフェではテレビの前に陣取る人々で満員。試合終了後の午後11時すぎからは多くの車のクラクションが鳴り始め、お祭り騒ぎだったようだ。

それほど、エジプトのサッカー人気、特にカイロの2大クラブの人気が凄まじいことが伺える。

 

サッカー100年の歴史~政治的混乱を乗り越えて

エジプト・サッカーの起源は、20世紀初めのイギリス統治時代にまでさかのぼる。

欧米人によって設立されたスポーツクラブを皮切りに,エジプト国内に数多くのクラブが設立され,サッカーは普及していった。

1921年にはサッカー協会が設立され,1948年からは国内リーグが開催。国民的スポーツとしての地位を徐々に確立していく。

 

1952年のエジプト革命時や第三次・第四次中東戦争,80年代末の政治的混乱の時代にリーグの中断・中止と政治情勢に翻弄されても、人びとは変わらずサッカーを愛し続けてきた。

 

生きる伝説「モハメド・サラー」や、74歳で世界最年長のプロサッカー選手としてギネス記録に認定されたエゼルディン・バハダー氏などエジプトを代表する選手の活躍は大きい。

 

アルアハリとザマレクはエジプトの希望

アルアハリと、1911年に創設されたザマレク、この2つのチームがエジプトのサッカーを牽引し,エジプト・サッカーの歴史とともに数多くの名勝負を繰り広げてきた。

2チームの直接対決は今でも国中が注目し、盛り上がる。

 

お察しの通り、アルアハリファンとザマレクファンの間には、長年の確執がある。

アルアハリのファンが経営する店でアルアハリのファンだと言ったら、「そうなら値段をまけてやるよ」と言ってくれるという。

しかし、違うチームのファンだと分かると容赦ないブーイングを浴びせ、教養ある大人たちでも子どものように自分のチームをたたえて、相手チームをけなすのが日常茶飯事だとか。

 

 

熱狂的であるがゆえに、「アラブの春」の翌12年2月には、アルアハリファンらの衝突で74人が死亡する事件「ポートサイドの悲劇」が起こったり、監督への脅迫文が届き監督が辞任したことも。アルアハリの元サッカー選手とテロ組織の結びつきも話題になった。

 

しかし、エジプトの人々皆に共通しているのは、エジプト社会特有の民族・宗教・階層による違いが生む“閉塞感”を打破してくれるサッカーに希望を託しているということ。

そして困難のたびに、チームが大好きで、給料が支払われなくともここでアフリカチャンピオンになるために戦うという意志を国民に見せ続けた、アルアハリの選手たちが皆大好きなのだ。

 

敏腕監督もコロナに感染

そんなアルアハリを今大会導くのは、ピツォ・モシマネ監督だ。

元南アフリカ代表監督で、20年9月にアルアハリの監督に就任。その後2カ月あまりでアルアハリをアフリカ王者に仕上げ、前クラブ・マメロディ(南アフリカ)と2つのクラブをアフリカ王者のタイトルに導いた史上3人目の監督となった。

 

しかし監督をコロナが襲った。

昨年末、妻・娘と共に新型コロナに感染し、クリスマスは病院で過ごすも、回復翌日の12月28日からすぐに監督に復帰した。

 

守護神ではなく守護天使(ガーディアンエンジェル)!

エジプトのGKで、アルアハリ主将も務めるモハメド・エルシェナウィは、キャリアハイの成績でCWCに臨む。

少年時代はアルアハリの下部組織で育ったが、09年からエジプトの複数の他クラブでプレーする。

そして16年にアルアハリに復帰したが、しばらくは控えGKだった。

18年W杯前は、エジプト代表とアルアハリの双方でシェリフ・エクラミーと正GK争いをしていたが、W杯での活躍で世界でも注目される存在となった。

 

19-20シーズンは、エジプト・プレミアリーグでは先発した30試合中24試合で無失点、シーズンを通して8失点とリーグ記録も樹立し、チームの5年連続42度目のリーグ優勝に貢献した。

CAF-CLでも出場12試合中6試合で無失点、許したゴールは6点のみと、優勝に大きく貢献し、キャリア最高の活躍を果たした。

19年夏以降、リヴァプールなどイングランドへの移籍を噂されたが、アルアハリに根を張っている。

 

PK職人~左サイドバックで得点王

他クラブからのオファーがあっても、アルアハリに残る選手は珍しくない。

チュニジア代表でDFのアリ・マールル(Ali Maaloul)もその1人だ。

チュニジア国内リーグで史上初となるDF登録での得点王に輝き、16年夏にアルアハリに移籍以降チームの主力として活躍。

CAF-CL20年大会では9試合出場4ゴール3アシストで悲願の優勝に貢献。

彼の持ち味が存分に発揮されるのが、ペナルティスポットだ。

プレースキックが得意で、得点の多くをペナルティスポットから奪った「PK職人」である。

左足でのキックの精度に定評があり、鋭く曲がるボールに注目だ。

 

カイロダービーを制した最強MF達

MFで注目なのはフセイン・エル・シャハト(Hussein El Shahat)だ。

18年クラブW杯では、日本代表・塩谷司とともにアルアイン(UAE)で出場し、決勝でレアルマドリードに敗れるも、準優勝と世界を驚かせた。

そして19年1月、アルアイン(UAE)からアルアハリに移籍した。当時、欧州、湾岸諸国のクラブも獲得に興味を示していたが、本人がアルアハリを希望し、契約がまとまったという。

20年CAF-CL決勝のカイロダービーでは、相手選手と乱闘騒ぎを起こし、アフリカ・サッカー連盟主催試合2試合出場停止処分をくらった。

 

またMFでは、20年CAF-CL決勝のザマレク戦で先制ゴールを挙げたアムル・エルソリア(Amr El Solia)、終盤86分に決勝ゴールを決めたモハメド・マグディ・アフシャ(Mohamed Magdy Afsha)の2人が新型コロナウイルス感染したものの、現在は復帰。

CWCで大暴れすることが間違いなしだ。

 (五島由紀子=mimiyori編集部)

 

※この試合のもようは2月5日(金)午前2時15分~午前4時30分(最大75分延長)で、BS日テレで放送される予定。

放送予定|FIFAクラブワールドカップ Qatar 2020|日本テレビ

 

 

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