2004年アテネ、08年北京五輪柔道男子66キロ級を連覇した内柴正人氏は現在、熊本県内の温浴施設でマネジャーを務めている。18年からキルギス共和国の柔道総監督に就任し、19年秋に帰国した後は柔術と柔道の練習をしながら働く、いち社会人となった。
これまで、彼はどんな日々を過ごしてきたのか。内柴氏本人がつづる心象風景のコラム連載、今回は「手先が器用な話」中編。
家業は建築関係で、本人も生活にまつわる物は何でも自分で作ってしまう。
実家のリビングにWi-Fiを引く工事を父と一緒にしながら、柔道時代に応援してくれた父、そして最もつらかった減量失敗による大会欠場の裏側について振り返った。
僕の休みの日当日
要は無線LANから有線にする工事。
建築関係の父に電話して
「ケーブルは何メートルか?」「Wi-Fiはいくらの物か?」
確認をして、実家への帰りがけに買う。
20メートルで足るだろう。Wi-Fiは強いのがいい。
作業終了時にこの20メートルという目測がまさにぴったりで、父と喜んだものでした。
さすが父。
仕事の作業で覚えたコツ
さて、作業です。
まず、買ってきた物が使えるのか、その方法で良いのかの確認。
20メートルもあると、ケーブルはそのまま張るとクルクル巻いた状態になり、ケーブルによろしくないことを学んでいる僕は、ちゃんと一度全て伸ばす。
そして、届くかどうか、方法が合っているのかどうかの確認で、2階の事務所の窓を通してリビングの窓から送り、リビングで接続する。
この方法が合ってるのかは知らない。
ここでミス一つ。
間違えてWi-Fi接続機を買ってきてしまっていることに気づかない。
まっ、そのためのチェックなので想定内。大丈夫。もともとWi-Fiを飛ばしていた古いWi-Fi機がある。
つながらない理由になんて知らんぷりして、古い物を持ってきてつなぐ。ばっちり。
作業はさっさと進めないと進まない。終わらない。ちょっとの不具合を調べるより前へ進む。
次はケーブルをていねいに張っていく、穴を開けて通していく作業です。
父との作業で思い出が頭をよぎる
父は僕のことをとても心配する。作業でも、電動ノコギリとかインパクトもあんまり触らせたくない感じ。ケガの心配第一。
とある昔話。
僕の日本代表がかかった全日本体重別選手権の当日か前日。父も周りのみんなもワクワクドキドキ。そんな時に姉ちゃんが「正人がケガした‼」なんてウソをついた。
もーーー、父は血相を変えて驚き、心配し、悲しむことも忘れてアワアワしてたらしい。
「うっそーん」
父、激怒(笑)。姉さんの冗談通じず。
そしたら、その年の福岡体重別選手権大会。僕、減量ができなくなって、当日に計量に行かないで失格してるんです。地元から何人も来ている正人応援団はガッカリしながら熊本へ帰ったと聞いています。
僕はチャンピオンになれる前、1つ下の階級で勝負していました。
(内柴正人=この項つづく)
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うちしば・まさと
1978年6月17日、熊本県合志市出身。小3から柔道を始め、熊本・一宮中3年時に全国中学大会優勝。高3でインターハイ優勝。大学2年時の99年、嘉納治五郎杯東京国際大会では準決勝で野村忠宏を破って優勝。減量にも苦しんだことから03年に階級を66キロ級へ上げて2004年アテネ五輪は5試合すべて一本勝ちで金メダル獲得。08年北京は連覇した。10年秋引退表明。11年に教え子に乱暴したとして罪に問われ、上告するも棄却。17年9月出所。得意技は巴投げ。160センチ。18年に現在の夫人と再婚し、1男がいる。20年1月から現在の職場に勤務。
#MasatoUchishiba
◆内柴選手 柔術出場大会
2021年12月26日(日)17:30~
「ASJJF ROLLING TOUR」(東京・新宿「GEN SPORTS PALACE」)
配信チケット購入→ https://tiget.net/events/154909
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大会サイト→ https://asjjf.org/main/eventInfo/1126