未知のウイルスとの戦いに多くの時間を費やした昨今。
先の見えない不安に、心も体も疲れてしまった人も多いのでは……。
ということで、新たな年を迎えるにあたって「心の大掃除」。正月恒例のスポーツイベント箱根駅伝に挑む青山学院大・原晋監督の教えから、前向きに、時に厳しくも必ず「勝利」に導いてくれる哲学を紹介する。スポーツだけでなく、普段の生活にも応用できる考え方ばかり。年の始めからスタートダッシュを決めるために、まずは心の準備から。
強い信念を持つこと
原監督が挙げる伸びる選手の条件の中でも「強い信念を持つこと」は重要な要素だ。
強い信念は覚悟を意味する。例えば、3代目・山の神として活躍した神野大地は。高校時代から人生かけて陸上に取り組んでいることを公言するほど、真摯に向き合ってきた。
とはいえ、チーム全員が覚悟を決めた選手と同じ実力を持っているわけではない。さまざまな個性、能力を持った選手が集まっている。組織の目標を達成するために「自分に何が出来るか」を考え始める人間が増えれば、組織はより強力なものとなる。
「ごめんなさい」と言える人材は強い
伸びる選手の条件として「約束を守ること」、そして「ごめんなさいが言えること」も挙げている。
青学大の校風は文武両道。勉強も練習も頑張ると意気込んで入部した選手から早々に「練習についていけない。辞めたい」と言われた時に、原監督は怒るという。何も努力をしていないのに、入部当初の「頑張る」約束を破ることになるからだ。怒り方も、ただ叱るのではなく、徹底的に理由を聞いて、言い訳をさせずに逃げ場を作らせない。
原監督が怒る時はもう一つ、「言い訳」をした時だ。最初に謝罪がないまま、出来ない理由を次々に並べる選手にはガッチリ怒る。その半面、素直に謝すことができる選手には見どころがあるという。
反省することで、出来ない理由よりも「どうすれば出来るか」を考えるようになる。次のステップへ進むための自主性を持つからである。
何でもかんでも「ハイ」と答えるな
いくら元気に返事をしても、中身のない返事は意味がない。
学生の中には「なぜハイと言っているんだ」という質問に対しても「ハイ!」と答える人もいるという。どんなことにも「ハイ!」としか答えていない時は、自分の頭で何も考えていない可能性がある。原監督は、学生であっても学生なりに自分自身の選択に伴う責任を持つことが大事だと考えている。
大切なのは「良い返事」ではなく、自分の頭で考えた言葉で思いを的確に表現すること。体育会的な威勢の良い「ハイッ!」には、何も理解していないという危険が潜んでいる。
感動を与えることのできる人間になろう
原監督が監督就任当初から掲げる3カ条の一つである。
「感動を与えることの出来る人間」は、幅広い解釈ができる。選手として身を立てたい、人生を賭けると決めている選手であれば、いかにタイムを縮めるか、チームの底上げをするかに心血を注ぐ。
選手としての実力がイマイチでも、主務としてチームを支えていけば感謝されることもある。陸上で4年間輝けなかったとしても、社会人になってから目覚ましい活躍をすることができる可能性もある。
「選手になろう」ではなく「人間になろう」。陸上・スポーツ選手にとどまらない、社会に通用する人間教育を意識しているからこその言葉選びである。
詳細は『人を育て 組織を鍛え 成功を呼び込む 勝利への哲学157』(ぴあ)で。
(mimiyori編集部)