トイレのトラブルや介護の負担を解消してくれるデバイス「D Free」が話題に
(写真はイメージ)
人生100年時代。
介護業界の人手不足が深刻化しているというが、いまだ多くの人がそれを他人事に感じているだろう。そんな人に知ってほしい。
一般的な介護施設において、介護職員は8時間の勤務時間のうち約3時間を排泄介助に当てているということを。
そんな介護職員の負担を減らす救世主が現れた。
排泄予知デバイス、その名も「D Free」。
D Freeとは、超音波センサーによって膀胱の変化を捉え、排泄のタイミングを予測し、スマホやタブレットに知らせてくれるというIoTウェアラブルデバイス。
ベンチャー企業「トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社」代表取締役・中西敦士氏が中心となって開発したスグレモノだ。
中西氏の“失禁”の過去が、オムツ(DIAPER)から自由になる世界を創る!
連載第1回は「D Freeとは何か?」。
トイレのタイミングを教えてくれるデバイス
多くの人々を救う大発明かもしれない。
D Freeは、下腹部に貼った超音波ユニットが膀胱など体内の様子を計測し、体内の排泄物を分析し、尿意のタイミングを計算する。そしてスマホに「現在、○○%溜まっています。そろそろです」などと知らせてくれる。
”いいタイミング”が分かれば、介護施設の職員も自宅介護を引き受ける人も、時間を有効に使うことができる。
また、出歩ける状態の本人であれば、いざという時も焦ってトイレを探す必要もなく、「70%か、そろそろ行っておこう」と備えることもできるだろう。
使う人すべてが幸せになるデバイスなのだ。
また、ただただ知らせてくれるだけではない。トイレのタイミングには個人差があるが、日々の排泄時間を記録していくことで、タイミングを学習する。
つまりトイレに行けば行くほど、D Freeのお知らせの精度も高まっていく。
これまで、排泄はとても身近なものにも関わらずその情報はほとんど蓄積されてこなかった。排泄は、食事・運動・メンタルに大きく影響される。だからこそ、人それぞれの排泄データを収集することで「排泄のビッグデータ」を構築し、人々の健康に繋げようというのだ。
国を挙げての事業に”格上げ”
21年6月から発売される、法人向け排泄予測デバイス「D Free Professional」の次世代機種を見ていこう。
最新型D Freeは、大幅な小型化・ケーブルレスを同時に実現し、機能面でも検知性能の向上に加え、水洗いも可能になったという。
下腹部に装着するのだから、軽く小さいに越したことはない。
この改良の裏には、20年6月に「令和2年度グローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業費補助金」の事業者に採択されたことが関係している。
20年6月~21年2月、D Freeの次世代モデルの開発・試作・量産化・社会実装等にかかる費用の一部を経済産業省が補助することになった。
さらに、D Freeを導入したいという中小企業・小規模事業者に対しての支援も手厚い。
D Freeが「IT導入補助金2020」の対象ツールに認定されたことで、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部について、こちらも経済産業省が補助してくれる。
まさに国を挙げた取り組みと言える。
いつか全人類標準装備?
進化を続けるD Freeに加え、トリプル・ダブリュー・ジャパンは排泄ケア記録サービスも提供している。
介護現場の生産性の向上・質の高い排泄ケアの実現に加え、利用者の自立排泄の改善にも尽力しているのだ。
もちろん法人向けのみならず、個人向けの「D Free Personal」もある。
現在日本には、排泄のコントロールが不十分な人が、20~65歳で300万人以上、65歳以上で130万人以上いるとも言われている。
さらに、これから高齢化が進むであろう世界中の国々でも注目されており、30カ国以上から問い合わせも来ており、海外拠点も展開中。
いつか全人類のお腹に、この装置がひょっこり装着されている日も来るかもしれない。
(つづく=五島由紀子 mimiyori編集部)
※これまで番組などで直接取材した経営者のかたの哲学についてまとめたコラムです。
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