宿泊業界のトップランナー・星野リゾートがまた、新機軸を打ち出している。
来たる年末年始に向け、全国各地の宿泊施設で展開するプランは「開運」「厄払い」。
新型コロナウイルス感染拡大がやまない今、まさに内心みんなが最も必要としている要素を詰め込んだ。
京都では和尚さんとのトークつきで「今年のわたしの漢字」1文字を書き初め。栃木・日光では祈とう済みの部屋に泊まり、お清め風呂にジャポン。青森・奥入瀬渓流では雪の中でかんじきを履き、二大霊場の1つまで自力でたどり着くというハードコアなツアーが予定されている。
後編は「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」「青森屋」「界伊東」のユニークプランについてご紹介。
どうでしょう。2021年こそ、いいことがありそうな気がしませんか?
- 奥入瀬渓流ホテル:幻想的な冬の青森でパワースポットへ
- 奥入瀬渓流ホテル:雪かき&かんじきで”参道”づくり
- 青森屋:コロナ中止の「ねぶた」不足はここで充填
- 界伊東:真打・アマビエ登場 和菓子手作りでお茶会
奥入瀬渓流ホテル:幻想的な冬の青森でパワースポットへ
前編では「星のや京都」のアクティビティ「清水寺書き初め」、「界日光」の厄払いしまくりプランを紹介した。
今回は本州最北端・青森県。
「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」では、2021年2月1日~3月22日の土日限定で、「冬の十和田湖開運ツアー」を実施する。
冬、青森の山は美しい。
大地は雪で覆われ、森林は樹氷と化し、流れ落ちるはずの滝も時が止まる。
奥入瀬渓流ホテルから、夏は森林浴にふさわしい奥入瀬渓流を抜けると、左握りこぶしをさかさまにしたような形の十和田湖が広がる。
ちょうど人差し指のまたに相当するあたりに、北東北の二大霊場の1つ、十和田神社が鎮座する。
古風に言えば霊験あらたか、今ふうであればパワースポットだ。
奥入瀬渓流ホテル:雪かき&かんじきで”参道”づくり
ホテルから神社への送迎はしてくれる。しかし、さい銭箱の前にたどり着くには雪が深い。
そこで取り出したるは無料貸し出しの「スノーシュー&スコップ」。冬用の靴も貸してもらえる。
おしゃれに言えばスノーシュー、要するに「かんじき」だ。
スコップで雪かきして”参道”を切り開き、かんじきで自己圧雪しながら進む。
あれ、人生と似てる?
ツアーの発表のプレスリリースでも「雪国ならではの体験として(中略)自ら参拝までの道を切り開きます」と鼓舞しており、参拝者には「何が何でも拝むぞ」「前へ前へ」という明大ラグビー部魂が降臨する可能性もある。
しかし、いかに気温が零下であっても、雪かきは意外と全身運動になる。さい銭箱付近にたどり着く頃には、ひと汗かいているだろう。
十和田神社の象徴「龍の手水舎」で手などを洗い清め、拝む。
有料オプションとして珍しい木製のご朱印蝶、青龍のご朱印も持ち帰ることができる。
拝んだ後は、なぜか達成感に包まれることは間違いない。
青森屋:コロナ中止の「ねぶた」不足はここで充填
同じ青森県の三沢市にある「青森屋」では、邪気払いが行われる。
2020年12月1日~2021年3月31日、「ねぶた邪気払いプラン」が登場する。
8月2~7日に毎年行われる青森ねぶた祭りは、残念ながら新型コロナウイルスの感染拡大で2020年は中止の憂き目にあった。
見る人、跳ねる人両方に1年分の元気を与える祭りであるため、「ねぶた不足」に陥っている人もいるかもしれない。
病魔やけがれを払い、無病息災を祈る行事が始まりといわれる。コロナ禍が続く今、邪気をはらってもらうべく、ねぶた尽くしの旅だ。
客室「青森ねぶたの間」を使用する。
小さい山車(だし)が飾ってあるだけだろう、と思った方。とんでもない。
メーンの部屋には視線の先、全方位にいる。
ベッドが置かれた隣室にも、四隅に四天王(持国天、広目天、増長天、多聞天)がにらみを利かせ、ふすま、天井もねぶた。
病魔や災厄を防いでくれているのだ。
主室の隣、ベッドが置かれた部屋には四隅でねぶたが災厄をにらんでいる
(写真:星野リゾート提供)
夜中に目覚めてしまった時、目が合う危険性もあるが、相手は四天王であるため安心してほしい。
露天風呂に行くと、ねぶたが浮かんでいる。北方の守護をつかさどる毘沙門天だ。
1台だけだろうと油断してはいけない。
鍾馗様もいる。
お風呂に浮かぶ山車は、青森ねぶた祭りで制作者に贈られる最高の賞を受賞したねぶた師・竹浪比呂夫氏が制作した。
最後に、祭りの囃子(はやし)に使われる鉦(かね)、地元では「ガガシコ」と呼ばれる楽器を体験演奏できる。
2枚の鉦をすり合わせると、軽やかな音色。囃子に合わせてねぶた気分を味わえる上に、自ら音を発することで、災厄を追い払うクライマックスを迎える。
旅を終えて帰宅した後、もしもガガシコをもう一度鳴らしてみたくなったら、アルミ製の灰皿を2枚用意するといい。
習ったように鳴らしてみる。ちょっと似ている。
それは地元の小学生がよくガガシコのまねをする手段だ。
界伊東:真打・アマビエ登場 和菓子手作りでお茶会
温泉界の中軸を担う伊東では、「界伊東」が2020年12月1日~2021年2月28日、「家族みんなにツキを呼び込む開運旅」プランを販売する。
疫病退散を願う「アマビエ」をかたどった練り切りと、「運」のつく和菓子「運盛り菓子」を和菓子職人と一緒に手作りし、桜茶とともに「開運お茶会」で味わう。
8名まで一緒に泊まることができる特別和室で、長寿や開運の願いが込められたつるし飾りを眺めながら、楽しくツキを呼び込むご家族向けのプランだ。
見ているだけでほっこりしてしまう和菓子を食べながら、家族団らん。
コロナ対策に励みながらも、可能な範囲で楽しむ冬でありたい。
(おわり=丸井 乙生)