【ビジネス】経営哲学=スーパーホテルが成長したワケ③社長なのに社内で孤立⁉

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スーパーホテルでは11月、防疫対策として「シリカ・ナノコロイド・シールド(Si-Shield)」の塗布施工をスーパーホテルPremier東京駅⼋重洲中央⼝、スーパーホテルPremier銀座、スーパーホテル新横浜で行った(写真:スーパーホテル報道資料より)

「宿泊するだけで、健康になれるホテルがあります。もしぐっすり眠れなかったら返金します」

と聞いたら、あなたは信じますか?

外国の新手の詐欺かと思いきや、実は日本生まれ日本育ちのビジネスホテルチェーン「スーパーホテル」のこと。

「安全・清潔・ぐっすり眠れる」をコンセプトに、1泊5000円からという低価格帯&オリジナル寝具で全国展開し、業界屈指の高稼働率・リピーター率を誇る。

J.D.パワー・ホテル宿泊客満足度調査の「1泊9000円未満部門」では、2019年までに6年連続第1位を受賞し、競合必至の分野で話題となっている。

価格だけでなく、環境と健康に配慮したビジネスモデル「ロハス」や、二酸化炭素を出さないエコプラン「エコ泊」、オーガニックなアメニティなどSDGsへの取り組みも積極的に行う。

そんな”人に・環境に優しい”サービスの原点には、二度も社員から見切られた創業者・山本梁介会長の“先見の明”があった。

第3回は山本会長が若かりし時代、社長なのに社内で孤立。人に教えを乞うようになったエピソードについて。

 

 

 

なんでやねん!社長なのに社内で孤立 

繊維商社「山重商店」の3代目社長として奮闘する山本氏だったが、老舗の伝統を守ってきた社員にとっては、若者の強権的なトップダウン式に反発は強まるばかり。

社内だけでなく、営業担当者や傘下の工場長に対しても、電話で強い口調で指示。

船場でずっと生きてきた創業者の娘である母からも「そこまで言ってはいけない」と注意されたが、態度を変えなかった。

結果、社内で孤立、さらに傘下の工場で激しい労働運動が勃発した。

その時、事態終息に向けて奔走するはずの古参幹部は、山本氏ではなく社員についた。

「なんでやねん!」

そう山本氏は心の中で唱えつつ、社員の気持ちが自分から離れていること、繊維産業がかつての勢いを失い始めていることに気づき、店を閉めることにした。

 

 

「先祖に申し訳ない」をバネに次なる事業へ 

幕引きは美しかった。

会社ののれんを古参幹部がつくった会社に移す形で家業を閉じ、傘下の工場は大手企業に売却。取引先に迷惑をかけず、社員の雇用も維持したため、わだかまりは残らなかった。

そして次に参入したのは不動産事業。

事業資金は父の遺産、受け継いだ土地に賃貸用のビルを建設したことが始まりだった。

次なる一手を模索する中、英字新聞を読んだところ、単身者が増えるだろうという記事を見て「日本にもそんな時代が来るだろう」とシングルマンションに目をつけた。

 

1970年頃、シングルマンションの経営を開始した。

まず建てたのは、大阪・東住吉区のワンルームマンション(木造版)。

“お菓子の家”のようなかわいらしいデザインにしたところ、学生、女性であっという間に満室になった。

70年代以降、山本氏の読み通り、単身者の増加を見越したシングルマンションで、関西を中心に230棟、約6000室までに急成長を遂げた。

 

 

 バブル崩壊→多額の負債→円形脱毛症

しかし50歳を目前に、バブル経済の崩壊で痛手を受け、所有した施設の大半を売却し、多額の負債を抱え込んだ。

ちょうど大阪でスーパーホテルの建設に取り掛かろうとしている最中で、突然融資のめどがつかなくなり、融資金の返済、大幅な事業計画の見直しに苦戦した。

そして、身体が悲鳴を上げた。

円形脱毛症、過労・寝不足に加え、飲めない酒に手を伸ばしたことで急性肝炎となった。

「暗記力・計算力・分析力の3つがあれば、経営などと簡単と考えていた。しかし人生の試練の前では大学で学んだことなど、何の役にも立たない。本当に学ぶということは、目の前の壁をどうしたら乗り越えられるかを身を持って知ること」

 

 スーパー経営者、人に教えを乞う

これまでトップダウン方式で、自分の考えを押し付けるタイプだった。

だがピンチに際し、仕事で知り合った人々に教えを乞うべく、失敗した人・成功した人を含め約1年間で70~80人に会い続けた。

学ぶべきものは、「失敗した人」にあった。

失敗した人は、「一生懸命やったんだけどな」「ツキがなかった」など失敗の理由を自分に見出さない、自分のせいではないと考えていたのだ。

またある人物に会った際、「“無欲の大欲”という言葉を知っていますか?」と聞かれた。

意味は、欲をかくと利益は逃げてしまうが、無欲でいると利益は向こうからやってくるということ。

その言葉と、会社のピンチに夜中まで作業してくれる社員・家族の姿が心に染みて、強い「使命感」を持つようになった。

経営者として一皮むけたのだ。

(つづく=五島由紀子 mimiyori編集部)

 

※これまで番組などで直接取材した経営者のかたの哲学についてまとめたコラムです。

新型コロナウイルス感染拡大による影響と闘う各業界の方々へエールを。

 

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