【経営哲学】プロレスラー川田利明が学んだ ラーメン居酒屋10年で分かった「やってはいけないこと」③

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ラーメン居酒屋「麺ジャラスK」を切り盛りする元プロレスラー・川田利明

(撮影:丸井 乙生)

プロレスラー・川田利明がラーメン居酒屋「麺ジャラスK」を経営し、10年目に突入した。現役時代は全日本プロレスで故三沢光晴と名勝負を繰り広げたトップ選手だが、このラーメン店経営では数々の苦労を乗り越えてきた。「ラーメン店はやらない方がいい」と断言する川田は、なぜその結論に達したのか。"参考にしてはいけない経営哲学"を紐解く。第3回は「ラーメン店はやらない方がいい」について。

 

 

投入資金は総額7000万円 「ラーメン店はよした方がいい」

開業以来、初期投資、運転資金の借り入れなどトータルでかかった金額は6000~7000万円だという。初期投資分を支払い終わっても、厨房回りの保守点検料が地味に痛い。「ずっと赤字。お金、体、メンタルは全部、ずっと苦しい。こんなこと、やらない方がいいよと言いたい」と断言した。

ちなみに2015年、シンクロ・フードが運営する飲食店の出店開業支援サイト「飲食店.COM」が発表したデータによるとラーメン業態では、7割以上の店舗が営業3年以内、4割以上の店舗が営業1年以内に閉店している。
逆に言えば、10年走り続けている川田はすごいとも言えるが「意地だけでやってる」と精神力ありきを強調した。

器用だからこそ…1つのことしかできない

川田はプロレスラーの現役時代、キャラクターとして不器用を装ってきたが、実は非常に器用だ。技を早い段階で習得できたが、逆に「どこを伸ばしていいか分からなかった」時期があり、当初は選手として伸び悩んだ。

「1つのことだけに集中してやっていきたいタイプ。1つのジャンルの中では器用なんだけど、昔から2つを同時進行でやることができなかった」

器用であっても”器用貧乏”に陥りがちな自分を分かっていたため、開店以来プロレスラーとしての活動はほとんどしていなかった。

プロレスについては引退宣言、引退試合ともに行っていない。行う予定もない。

「プロレスラーって引退しても100%カムバックするじゃないですか。それだけはしたくないので、あえて引退はしてません。ただ、現役時代から体重も30キロ落ちちゃったので、いまのところ復帰は考えてないです。それに今のリングはここですから」

 故ジャイアント馬場さんの教え

故ジャイアント馬場さんの教えで「ステーキは白い皿で出さなければならない」と考えている。


ほかにもプロレスから学んだことは生きている。高円寺にある中華料理店に弟子入り。09年末から半年間の修業を経てオープンしたが、試行錯誤する中で「中華料理店で出すラーメンと、ラーメン店が出すラーメンは違う」ということに気づき、現在は当時教わったことは意外とやっていない事が多い。

しかし、教えてもらった基本があったからこそ応用が利くようになったと感じている。

「まずは基本を身につけないと戻るところがなくなる。プロレスもラーメンも一緒」

実はラーメンが嫌いだ

ラーメン主軸の居酒屋だが、実はラーメンがキライだ。

「背脂が1センチも浮いているようなラーメンは嫌い。脂と糖分があればウマいと感じるというのはねえ」

個人的には中華料理店で出てくるようなラーメンが好きだという。

「麺ジャラスK」のウリであるスープカレーラーメンはトロリとしたスープが特徴だが、ガラを圧力鍋で炊いてミキサーにかけるなど鶏のうまみで構成されており、トロリとしつつもアッサリ。レスラー時代と同様に、日々精進している。

それでも、ラーメン店開業を志す人たちに贈る言葉としては「やらない方がいいよ」。川田はきょうもラーメンのスープをつくり続けている。(終わり)