読んでいるうちに行ったつもりになれるかもしれない、プチ旅行の紀行文コラム「行ったつもりシリーズ」。
とある冬の1日、東京湾岸沿いをサイクリング。葛西臨海公園、東京ディズニーリゾートや若洲周辺を走ってきた。
葛西臨海公園はスイセンが見ごろ
この1月は、日本列島に寒波がたびたび襲来。東京周辺は雪こそちらつく程度だったが、山に入ると凍結や積雪があるかもしれないとビビって、今回は平坦中心のサイクリング。
朝起きるのも、外に出るのもおっくうな寒さだが、20~30分ほどペダルを回していると体も温まってくる。と、強がりを言っても、やっぱり寒いものは寒い。
最初に目指したのは、江戸川区の葛西臨海公園。この時期は水仙が見ごろで、公園のシンボルである大観覧車の真下の芝生広場に水仙畑が広がっている。
水仙の名所である静岡県下田市、福井県福井市、千葉県鋸南町、兵庫県洲本市から球根を提供してもらったそうで、約5万7千球が植えられているという。2月11、12日には「水仙まつり」も行われ、それぞれのスイセンの名所の特産品が手に入る出展ブースやステージイベント、夜にはライトアップも楽しめるとのことだ。
葛西臨海公園には他にも水族園や鳥類園など様々な見どころがあり、この日も寒さにかかわらず、多くの人出があった。
続いては旧江戸川を渡り、千葉県浦安市に入る。すぐ右に東京ディズニーリゾート(ディズニーランド&ディズニーシー)が広がっている。ディズニーリゾートの外周路は、ランナーや自転車乗りの間では練習コースとしてもちょっと有名で、江戸川サイクリングロードとセットで走るサイクリストも多いようだ。
自分は初めて来たのだが、距離は5km強で信号は何カ所かあるものの、広くて気持ちよく走れる道だ。外周路の南側の堤防の上には遊歩道や自転車道、ベンチなども設けられている。この日はいい天気で日差しも気持ちよく、東京湾の景色もよく見えた。
東京湾で最も奥まっている三番瀬
さらに東へ向かい、浦安市や市川市の海岸沿いを走る。このあたりから船橋市、習志野市一帯まで面する海は三番瀬(さんばんぜ)と呼ばれ、東京湾でも最も奥まったところ。かつては干潟が広がり、漁業やのりの養殖が盛んだったそうだが、戦後の埋め立てにより干潟が減少。そのため現在は、自然環境の保全と再生に取り組んでいるという。
そろそろ太陽が西に傾いてきたため、Uターン。帰りは、江東区の若洲方面へ寄り道する。新木場から運河にかかる若洲橋を渡ると、すぐ左に若洲海浜公園のサイクリングロードの入口が見える。
このサイクリングロードはゴルフ場の外周に沿って細い道がクネクネと続いているのだが、途中で堤防沿いの広いエリアに降りることもできるため、そっちを走ってみる。
堤防沿いに南に進んでいくと、東京ゲートブリッジが見えてきた。恐竜が向かい合っているようだ、と言われる独特な形状のこの橋は、2012年2月に開通。開通時にはランニングや自転車で橋を渡れるイベントが開催されて取材したのだが、現在は自転車では渡ることはできない。
東京ゲートブリッジをちょっとだけ歩いてみる
ただし橋の歩道部分は誰でも歩くことができ、そこまではエレベーターで上がっていける。橋は全長1600mあるが、反対側の中央防波堤のエレベーターは降りることができず、折り返して戻ってこなくてはいけない。100mぐらい歩いたところで、もういいかなと引き返した。
橋の向こう側の中央防波堤は、東京湾の中の巨大な埋立地。この中には、東京オリンピック・パラリンピックのボート・カヌーの競技会場だった海の森水上競技場がある。
現在、競技場まではバスや車を使えば行けるようだが、徒歩や自転車では入れないし、埋立地の大半は現在も立ち入り禁止のようだ。なお、競技場に隣接する海の森公園は今年3月の土・日・祝日にプレオープンイベントが行われるそうで、中央防波堤の中を見る貴重な機会になりそうだ。
冬のこの時期、海沿いのサイクリングは空気も澄んで景色も遠くまで見通せるため、寒さにへこたれずに走ってみるのも楽しいだろう。
(光石 達哉)