のんびりゆっくり、気になるところに立ち寄りながらサイクリングすることを「ポタリング」と呼ぶが、今回は世田谷区内をポタリング。いつも何気なく通っている街の片隅にある隠れた名所を回ってみた。
数日前にワクチン1回目を接種し、特に体調は問題ないけれど、大事をとって長距離のサイクリングは控え、自宅周辺の世田谷区内をポタリングすることにした。
手始めに区のサイトで「世田谷区サイクルマップ」を見つけて、スマホにダウンロード。このマップには、見どころ一覧として30カ所以上のスポットが紹介されている。まずは西半分の17カ所を回り、気になるスポットに立ち寄っていく。
文豪・徳富蘆花ゆかりの地
最初のスポットは、京王線・芦花公園駅の南にある「世田谷文学館」。世田谷区にゆかりのある文学と文学者に関する資料が展示されているという。読書の秋にのんびりするにはよさそうなところだ。
続いては南に800m走り、「蘆花恒春園」へ。小説『不如帰(ほととぎす)』などを著した明治・大正の文豪・徳富蘆花の旧宅がある公園だ。
公園全体は児童公園やドッグランなどがある市民の憩いの場だが、北西の一部が恒春園区域と呼ばれ、雑木林の中に蘆花の旧宅や記念館が建っている。
蘆花は明治40年にこの地に転居し、晴耕雨読の生活を送ったという。
米国寄贈の桜が里帰りした並木
次は1.5kmほど西の「祖師谷公園」へ。仙川の左右に広がる公園で、テニスコートやスケボーコートなどもある。仙川沿いには、ワシントン桜という桜並木が植えられている。1912年に当時の東京市が荒川の桜12種3000本を米国ワシントンに贈ったのだが、1990年にその苗木が里帰りし、ここに植樹されたという。
ちなみにワシントン初代大統領が桜の木を切ったという逸話はもっと昔のため、この桜とは関係ないようだ。
公園の南側には小さな花壇もあって、キバナコスモスや季節外れのひまわりが咲いていた。
今度は約1.5km南下し、「成城五丁目猪俣庭園」へ。成城の高級住宅街の中にある邸宅と庭園で、成田山新勝寺本堂、五島美術館なども手掛けた吉田五十八という建築家の設計だ。
吉田五十八は近代数寄屋建築の第一人者と言われ、要は伝統的な日本の建築を現代風にアレンジしたということなのだろう。
行く手を阻む「国分寺崖線」とは?
次は500mほど西へ進み、「成城みつ池緑地・旧山田家住宅」へ。画家・山田盛隆などが暮らした洋風住宅で、中には日本間などもある和洋折衷の作りだという。
このあたりは国分寺崖線と呼ばれる崖の地形で、旧山田家住宅も崖の先端に立っている。続いて、急な坂を下って崖の下へ。「みつ池」というのはその崖からの湧水でできた池だが、緑地の大部分は立ち入り禁止で池に近づくことはできない。
国分寺崖線は、大昔は今より北を流れていた多摩川が、南へと流れを変えていく中で武蔵野台地を削り取とってできた段差(河岸段丘)の崖。現在はほぼ野川に沿って崖が続き、立川から田園調布付近まで約30kmの長さ、高低差は最大20mほどある。
世田谷通りや甲州街道など大きな道ではやや緩やかな坂になっているが、住宅地の中では激坂として目の前に立ちふさがり、自転車では苦行を強いられるのだ…
500mほど北へ進み、野川を渡って「きたみふれあい広場」へ。ここは周りから一段高くなっているが、小田急線の車両基地の屋根を緑地化してできた公園だ。階段からは野川を挟んだ崖を覆うように住宅が並んでいるのが見える。
砧公園にはサイクリングロードも
次は再び野川を渡った向かいにある「世田谷トラストまちづくりビジターセンター」へ。小さな施設だが、崖線沿いに生息する生き物や植物などが展示され、地元で作られたお菓子なども販売されている。
今度は野川沿いを南下し、世田谷通りにぶつかったら東へ進み、崖線の上へ向かって坂を上る。4kmちょっと走った砧公園内にある「世田谷美術館」が次のスポットだ。
ここは、自然の中でアートを楽しめる美術館。区内最大級の公園である「砧公園」も見どころの一つで、園内には1周約1.7kmのサイクリングロードがある。
というわけで、今回は第1弾としてここまで9スポットを紹介。続きは次回!
(光石達哉)