【パラアルペンスキー】北京金メダリストの村岡桃佳が大会全4レース制覇! 原点の地で「スキーの喜び」を再認識~ジャパンカップ最終日

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今大会の4レースを全制覇した村岡桃佳。最終日はグレーのマスクでコーディネート
(撮影:丸井 乙生)

パラアルペンスキーのジャパンカップ最終日が7日、長野・野沢温泉スキー場で行われた。回転第2戦は、女子座位で北京金メダリスト・村岡桃佳が制して今大会全4戦で優勝を飾った。

7カ月間で夏冬パラリンピック出場を果たした村岡は、そのハードさから一時はスキーが苦痛になった時期もあったというが、今大会でスキーの楽しさを再認識。2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ大会に向けて気持ちを切り替えた。

また、北京大会銅メダリスト・森井大輝は男子座位で今大会3勝目を挙げた。パラアルペンスキーは今大会が今季最終戦となった。

 

 

 

人にも自分にも負けたくない

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回転第2戦を滑走する村岡桃佳(撮影:丸井 乙生)

今季最終戦で女王が盤石の戦いを見せた。村岡は大会4日間で大回転2戦、回転2戦の合計全4レースで優勝。北京パラリンピック3種目で金メダルに輝いた世界トップの実力を国内でも披露した。

「何だかんだで苦手はスラローム(回転)ですが、楽しく滑ることができました」

今大会は、初日から「とにかく楽しく。スキーの楽しさを味わう大会にしたい」と繰り返し口にした。ということは、スキーの厳しさもかみ締めていたのだ。

 

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村岡は今大会で日替わりでカラフルなマスクを着用(撮影:丸井 乙生)

パラリンピック2度目の出場となった18年平昌大会では金1個を含むメダル5個を獲得した。19年春からは陸上競技との二刀流で、東京2020大会での夏冬出場を目指していた。

練習スケジュール、夏冬競技にそれぞれ移行するタイミングなどについて計画を練ったが、20年春の新型コロナウイルス感染拡大による影響で東京2020大会は1年延期。準備に苦労しながら、2021年9月、陸上競技で東京2020パラリンピックに出場した。

100メートルで6位入賞を果たし、直後から今度はスキーの準備を進めようとした。しかし、燃え尽き症候群のような状態に陥り「やる気が起きない時期もありました」と振り返る。一時はスキーが嫌になった時期もあったが、徐々に気持ちをつくり直して北京大会では過去最高の成績を収めた。

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大会最終日の回転第2戦1本目のコース。地元の協力によるコース整備で、春先にもかかわらず硬く締まった雪質に(撮影:丸井 乙生)

今季最終戦となったジャパンカップの野沢温泉スキー場。2018年平昌大会前まで、春スキーといえば毎週のように訪れた思い出深い地だ。

「(日影)ゴンドラ駅のところにあるご飯がおいしくて。ゲレンデ沿いにホテルが並ぶ中で、レストランでは外のテーブルで食事をしたり。エンジョイ・スキーです。楽しんでいました」

原点の地で再認識した「スキーの楽しさ」とは何だろうか。

「スキーが好きだと心の底から感じました。きれいにターンができた時にG(遠心力)を感じることとか、ターンがクリーンに決まった時の加速する感覚が好きです。〝今、かっこいいターンをしてるな〟という(笑)。勝ちたいというよりは、負けたくないんです。対・人もそうですし、対・自分もそう。競技スキーが好きなんです。まだまだ速くなれる、上手になれる可能性を追究する時間は楽しい時間」

陸上競技を今後続行するかは未定だが、滑る喜びを取り戻した女王はさらなる高みを目指していく。

 

北京銅・森井大輝は4年後への〝ポジション〟発見

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森井大輝の回転第2戦2本目(撮影:丸井 乙生)

男子座位では、パラリンピック5大会連続メダリスト・森井大輝が回転第2戦も優勝。これで今大会は大回転2戦を含む3戦で優勝を飾った。

4年後に向けた研究に余念がない。ジャパンカップでは、全レースでチェアスキーのセッティングを変えて臨んだ。

「いいセッティングのとっかかりをつかむことができました。新しい発見は〝ポジション〟です。(パラリンピックが)終わった、ではなく、次に向けてどうしようという楽しみがあります。やりたいことがたくさんあり過ぎて」

 

今後は練習も兼ね、レーシングカートのドライバーにも進出するつもりだという。

「スキー選手以外にもう一つ、ということもありますし、いいトレーニングでもあるんです。ライン取りとかですね」

18年には所属先であり、チェアスキーの研究・開発を行うトヨタ自動車の協力で、日本を代表するレーサー・脇阪寿一がハンドルを握る車の助手席を体験。また、脇阪が監督を務めるチームのピットに入り、チーム無線を聞かせてもらったことも刺激となった。

「一言でドライバーのやる気を引き出したんです。これはチーム運営にも生かせるなと思ったんです。僕も(若手選手の)〝やる気スイッチ〟を押せればと」

いち選手として、ベテランとして。

森井は全方位からチェアスキー日本代表チーム全体を世界トップクラスに再浮上させるつもりだ。

 

回転のスペシャリスト・鈴木猛史は無念の途中棄権

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回転1本目で途中棄権した鈴木猛史(撮影:丸井 乙生)

14年ソチパラリンピック回転金メダリスト・鈴木猛史が、回転第2戦の1本目で無念の途中棄権となった。

このレースでは、チェアスキーでは世界でも遣い手が少ないポールの倒し方「逆手」で臨んだ。通常であれば、アウトリガーの先端と手元をつなぐひもに指をかけて滑走するが、力んだことでひもを握って引っ張る形となり、アウトリガーの先端が裏返って〝ストックを雪面に突けない〟状態になってしまい、コースアウトした。

前日の回転第1戦では優勝しており、得意種目での連勝を目指していたが「ゴールして終わりたかった」と残念そう。

今後は個人トレーナーと相談してトレーニング計画を立てるほか、遠征や合宿で多くの日々を不在にした家庭で夫人、長男と共に過ごす時間をつくりたいという。

「さびしい思いをさせたと思うので、1泊だとしても温泉にでも行きたいですね。息子にはおもちゃを買ってあげたい」と優しい表情を見せていた。

 

日本代表チームリーダー・大日方氏が今季総括

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北京パラリンピック日本代表チームリーダーの大日方邦子氏は、大会運営で無線で連絡を取り合う(撮影:丸井 乙生)

今季最終戦となったジャパンカップ。北京パラリンピック日本代表チームリーダーの大日方(おびなた)邦子氏は、今後の課題について若手の育成、立位部門の強化を挙げた。

「ベテランが多いので、若い選手をどう育てていくか。また、立位では(パラリンピックで)昔は入賞にかかるか、かからないかというところでしたが、4年経ったら北京では(順位が)後ろから数えた方が早い。これは(立位の日本代表のレベルが)じりじりと下がっているんだということを競技団体として認識する必要がある」と話していた。

(丸井 乙生)

 

◆大会成績(回転第2戦 ※タイムは2本合計)

<男子立位>
①三澤拓 1分25秒07
②東海将彦 1分26秒90
③小池岳太 1分27秒76
④宮田一也 2分01秒36
※途中棄権=髙橋幸平、青木大和

<男子座位>
①森井大輝 1分15秒66
②藤原哲 1分26秒99
※途中棄権=鈴木猛史、狩野亮

<男子ID>
①木村嘉秀 1分31秒36
②木附雄祐 1分37秒99
③平野井渉 1分39秒72
④三浦良太 1分47秒41
⑤五味逸太郎 2分00秒97
※途中棄権=津田幸祐、金澤碧詩、失格=宮本涼平

<女子立位>
①本堂杏実 1分29秒85

<女子座位>
①村岡桃佳 1分29秒91
②田中佳子 1分46秒71
③岸本愛加 1分49秒49
④原田紀香 1分50秒62

<女子ID>
①馬場圭美 2分02秒17

 

 

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