【パラスポーツ】車いすバスケ=男女日本代表候補がパラリンピック会場で強化試合

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紅白戦に臨んだ車いすバスケットボール男子代表候補選手。ベテラン藤本怜央が存在感を示した(撮影:岡田剛)


車いすバスケットボールの男女日本代表候補選手による特別強化試合は、5月9日、東京・有明アリーナで行われた。パラリンピックまで限られた実戦の機会で、本番会場の有明アリーナでは初めての試合。男子は紅白戦を行い、パラリンピック5大会連続出場を目指す藤本怜央(宮城MAX)が出場選手トップの17得点を挙げ、ベテランが存在感を示した。また、女子は男子のクラブチーム「千葉ホークス」と対戦し、海外勢を想定して高さとスピードのある相手との戦い方を確認した。

 

 

藤本怜央 出場選手得点トップで若手にも助言

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藤本は出場選手トップの17得点を挙げた(撮影:岡田剛)


チームの柱としての自覚を胸に役割を遂行した。

藤本怜央はチームブラックのメンバーとして出場した。序盤はリングに嫌われる場面もあったが、「自分のシュートフォームとマッチできた」と、コートやリングの硬さに慣れてきた第3クオーターで得点を量産。出場選手トップの計17得点を挙げ54-53とチームホワイトとの接戦を制した。

チーム最年長の37歳は、ベンチにいてもコート内の選手に声を掛けていた。21歳の長身ハイポインター髙柗義伸(栃木レイカーズ)には、攻守あらゆる場面でどのように動くか指示。自らと似たような役割を担う若手選手にアドバイスを送った。

東京パラリンピックが延期となった1年は、日本チーム全体の底上げに集中。「海外に行けない状況が続いたことで、チームビルディングにフォーカスできた。攻守の切り替えを全体でスピードを上げることができ、自分だけでなく若手の成長も実感している」。

5大会目となるパラリンピック。代表の顔として初のメダル獲得を目指す。「大黒柱、精神的支柱としてリーダーシップを持ってやっていきたい。若手選手がのびのびとプレーできるような雰囲気づくり、コミュニケーションを取れるようにアドバイスもしていきたい」。不動のエースは先頭を走り続ける。

 

鳥海連志 持ち味のスピードと連係プレーで攻撃けん引

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持ち前のスピードを生かした攻撃を見せた鳥海連志(撮影:岡田剛)


チームホワイトで藤本らと対峙した鳥海連志(パラ神奈川SC)は、持ち味のスピードを生かした攻撃を続け16得点。同じクラブチームに所属する古澤拓也(パラ神奈川SC)との連係プレーも光り、2人でチーム総得点の半分となる27得点を挙げた。全体練習が限られる中でシュートやパスを改めて強化。今後は「フリースローの確率を70%まで上げたい」と意気込む。

男子代表主将の豊島英(宮城MAX)は、パラリンピック本番会場での初めての試合に「会場の雰囲気や構造、コートなどいろいろなことを確認できた」と振り返り、「第2クオーターは両チーム得点が1ケタだったように、プレッシャーがある中で得点を決められるようにしなければならない」と、チーム全体の得点力を課題に挙げた。

京谷和幸ヘッドコーチは「若手のスピードが上がってきて、引っ張られるようにベテランも走っている」と全体の成長を評価した。「これまで17人でやってきた。12人に絞ってもバックアップメンバーの力を借りてレベルを高めたい」と、チーム一丸で戦い続ける。5月中には12人のパラリンピック代表メンバーを選ぶ方針だ。

 

女子代表候補は高さとスピードに苦戦

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女子主将の網本麻里(撮影:岡田剛)

 

女子代表候補チームは、網本麻里、北田千尋(以上、カクテル)など得点源のハイポインターを中心に攻撃で流れを作りたかったが、スピードのある長身選手相手に失点が続いた。前半を28-33で折り返すと、後半も相手の攻撃を抑えられない場面が目立ち、第3クオーターで32-55と引き離され、最後は45-64で敗れた。

岩佐義明ヘッドコーチは、「ゲームの入りがあまり良くなかった。10点差以内で持っていきたかった。決定力、ディフェンスの戻り、リバウンドなど修正点がある一方で、自分たちのやりたいバスケはできた。ベンチスタートの選手が力を出せたことなど収穫もあった」と、敗戦にも手応えをつかんでいた。東京パラリンピックの代表メンバーは5月末から6月初めに決まる見通し。

4月から藤井郁美と共に主将に就いた網本は、「前半、練習でやってきたことができていた時間は良かった。悪い流れの時間をどれだけ短くできるか、そして良い流れの時間を長くできるかをチームでより意識していきたい」と本番に向けて気を引き締めた。(岡田剛)

▼北田千尋(出場選手トップの17点)「試合の入りはディフェンスが良くなくても点が取れていた。しかし、前半のうちに相手にアジャストできなかったことで、第3クオーターで離された」 

▼柳本あまね(出場選手最年少の22歳)「良い形で入れたが、プレーは満足していない。男子選手のスピードに追い付けず、前に出ることができなかった」