その中、ステイホームで楽しめるバーチャル空間でのスポーツイベントも最近は増えてきて、注目を集めている。テニスの錦織圭やNBAの八村塁などプロアスリートが参加するヴァーチャルの大会が開催されたり、「Jリーグ eSports ONLINE」では本物のJリーガー同士がチームを代表して対戦したりしている。
- ヴァーチャルスポーツはゲーマー向け
- プロの実力が反映される自転車ロードレースオンライン版
- 多くのサイクリストがヴァーチャルシステムを導入
- 「デ・ロンド2020ザ・ロックダウン・エディション」を観戦
- リアルさながらのガチレース!
ヴァーチャルスポーツはゲーマー向け
しかし、これらはあくまでもコントローラーを使ったゲームで、リアルでの競技の実力が結果に反映されているとは言いにくい。何よりも一流アスリートよりもゲームをやりこんでいるゲーマーの方が強いなんてことも普通に起こりえるだろう。さらにはNPBが開催した「プロ野球 “バーチャル”開幕戦 2020」はプロ野球選手ではなくeスポーツのプロプレイヤーによる対戦で行われ、ゲーム実況を見るという楽しみはあるものの、実際のアスリートのスゴ技を見たいという人にはちょっと物足りないかもしれない。
また「F1ヴァーチャル・グランプリ」では、本物のF1ドライバーがハンドルやアクセル・ブレーキペダルの形をしたコントローラーを操作するという実際のレースに近い環境で行われているが、これもゲームに強い人の方が有利になる場合もあるだろう。
プロの実力が反映される自転車ロードレースオンライン版
その点、自転車ロードレースのオンライン版は、プロ選手の鍛え上げられたフィジカルが反映されやすいヴァーチャルスポーツと言えるかもしれない。
これを始めるには、まず実際に選手がレースで使うロードバイクの後輪またはチェーンにスマートトレーナーと呼ばれるトレーニング機器をセットする。それをヴァーチャルのシステム(スマホのアプリなど)と接続することで、ヴァーチャル空間での上り坂や下り坂に合わせてペダルにかかる負荷が変わるようになる。さらに、オンライン上で他の選手と接続することで、一緒に走ったり、レースしたりできるようになるのだ。
多くのサイクリストがヴァーチャルシステムを導入
こうしたサービスはZWIFT、ROUVY、BKOOLなど何種類かあるが、もともと退屈になりがちなインドアでのトレーニングを楽しめるようにするため開発されたものだった。しかし、新型コロナの影響でロックダウンや外出自粛が続く中、多くの選手や一般のサイクリストが練習に取り入れて、一気に普及が進んでいる。実際に選手としてのパフォーマンスを上げる効果も期待できるので、積極的に導入を進めるチームやコーチも少なくない。要するにヴァーチャル空間の中でもペダルを踏み込む力が結果を左右するので、よりリアルに近い状況が発生するのだ。
さらにリアルさを追求するための様々な仕掛けもある。選手は体重を入力しなければならず、誤って軽い体重を申告するとドーピングとみなされたりする。またヴァーチャル空間で他の自転車の後ろに入ると、空気抵抗が減った状態になり負荷が軽くなる仕組みも取り入れられたりしている。
「デ・ロンド2020ザ・ロックダウン・エディション」を観戦
ヴァーチャルレース開催も盛り上がっている。すでに延期や中止となったジロ・デ・イタリアやツール・ド・スイスといったトップカテゴリーのレースも、ヴァーチャルで開催されトッププロ選手たちが参加している
その中でベルギーのレース、ロンド・ファン・フランデーレンのヴァーチャル版「デ・ロンド2020ザ・ロックダウン・エディション」が4月5日に開催され、YouTubeでアーカイブが残されていたので観戦してみた。
リアルさながらのガチレース!
実際のレースは自転車人気の高いベルギー北部フランダース地方が舞台で、ワンデーレースでは最高峰に位置づけられる栄誉ある大会だ。リアル版は走行距離266km、参加選手200人前後で行われる予定だったが、ヴァーチャル版は終盤32kmのコースを再現したヴァーチャル空間で、参加選手はわずか13人ながらトップ選手ばかりの豪華な顔ぶれ。各選手は自宅のリビングや庭などで自転車をこぎ、それをオンラインで繋いで行われた。
レース展開は、2019年このレースのリアル版で優勝したアルベルト・ベッティオール(イタリア)らが序盤からアタックし、そこに他の選手が次々と合流。ベッティオールが力尽きて脱落する一方、リオ五輪金メダリストで地元ベルギーの強豪グレッグ・ヴァンアーヴェルマートが最後の上り坂で抜け出して独走態勢を築き、優勝を飾るという実際のレースさながらの白熱の争いとなった。ゴールした選手が実際のレースさながら肩で息をしていたりと、ガチ感が半端ない戦いだったようだ。
こうしたヴァーチャル自転車のイベントは海外でも日本でもいろいろ企画され、アマチュアも参加できるイベントもたくさんあるので、興味ある人はのぞいてみてはどうだろうか? (光石 達哉)