【雑学】自然観察指導員の徒然草=まるで氷の花! シモバシラって何?

野川公園 シモバシラ

東京・野川公園のシモバシラの花の群生。2010年10月7日 (撮影:安藤伸良)

企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、一念発起で転身した自然観察指導員の写真コラム。 

つれづれなるままに、今回は「シモバシラ」を紹介する。 

シモバシラと言えば、寒い冬の朝に畑や庭の土を持ち上げている細い柱状の氷を思い浮かべる方が多いはずだが、ここでは植物のお話です。

 

 

 

 

夏は普通にかわいい白い花

軽井沢町植物園 シモバシラ

長野・軽井沢町植物園に咲いていたシモバシラの花。2011年9月22日 (撮影:安藤伸良)

「シモバシラ」はシソ科シモバシラ属の多年草で、主に山地の木陰に生える。関東以西、四国、九州に分布し、雪の降る山道や登山口、野山の林の中、低山の森林などで見られる。渓流周辺に群生をつくることもある。

 

草丈は40~90センチ程度で、花期は9~10月。上部の葉の腋から5~10センチの花穂を出し、一方方向に白い唇形花を付ける。

 

冬になると氷柱ができる

高尾山 シモバシラ

東京・高尾山で見つけたシモバシラ。2009年1月3日 (撮影:安藤伸良)

白い穂状の花もかわいらしいが、シモバシラの見どころは冬以降。12月中旬から2月までは花に代わって「氷の花」を咲かせるようになる。 

秋になると地上部の茎葉は枯れてしまうが、根は生きていて、地中の水分を吸い上げて地上部の茎に送る。地上部では茎から水分が蒸散し、寒さから氷結する。

 

時間と共に氷結した部分は成長し、大きな霜柱や、絹糸を巻き付けたような芸術的な形の氷の花のようになる。同じ形になることはなく、下が膨らんだり、横に広がったりと大きさもさまざまで、小さいものは数ミリ、大きいものだと20~25センチになることもある。 

このように枯れ枝に霜柱が付くことから、「シモバシラ」という名が付いた。別名「ユキヨセソウ(雪寄草)」ともいう。 

シモバシラは氷柱ができる代表的な植物だが、他にも「ヒキオコシ」「アキチョウジ」「ヤマハッカ」「キバナ」などにも氷柱を見ることができるそう。

 

晴れた寒い朝に探してみよう

高尾山 シモバシラ 氷の花

東京・高尾山のシモバシラ。「氷の花」のようで美しい。2009年1月3日(撮影:安藤伸良)

 

 

 

何度も氷結を繰り返すと茎が裂けてボロボロになり、小さいものしかできなくなるため、大きなものを観察したければ、1月半ばまでがお勧め。1日中見られる場所もあるが、やはり寒い早朝がよい。 

水が凍らなければいけないため、気温は氷点下でなければならず、雨や雪が降っている日や風が強い日でも氷の花はできない。 

10年以上前になるが、筆者は正月早々の東京・高尾山で実際に見ることができた。実物が見られた感動から、その後は東京都武蔵野市にある自宅でシモバシラの花を育て、冬は氷の花を咲かせることに挑戦してみた。

残念ながらこちらは寒さが十分でなく、氷の造形はできなかった。成功した方は、ぜひ写真に撮ってみてください。

(安藤 伸良)

 

 

mimi-yori.com

 

 

mimi-yori.com