【母校トリビア】北の雄 ”頭脳で遊ぶ”奇人変人たち~札幌南高校(北海道)

札幌南高校 六華の門

札幌南高校の「六華の門」=写真:mataro / PIXTA(ピクスタ)

卒業生が母校のユニークな側面を語るコラム第4回は、通称「札南」こと北海道立札幌南高校について。

北海道きっての進学校だというのに、卒業式は仮装コスプレでバズりまくり⁉

卒業生は何年経っても、「We must respect…」と暗唱できるとか。

 

北の大地にそびえる名門校の伝統と文化とは―。

 

 

 

北海道の頭脳派が大集結

札幌南高校は北海道中の“神童”が集う、天才のサラダボウルだ。

校則はほとんどない。

生徒一人ひとりが各々の持つ個性をためらうことなく放ち、生徒の自主性で学校が動いている。

 

 

まるで仮装パーティー?”ザ・札南”スタイルの卒業式

 

 

札南生以外の人に、「札幌南ってどんな学校?」と聞かれたとしたら、間違いなく筆者は卒業式の映像を見せるだろう。

卒業式を見れば、独特の自由や個性が一目で分かる。

 

もはや「仮装パーティー」だ。

制服がないため、基本的に式では何を着ても許される。

スーツ、和装、ドレス、マリオ、ルイージ、ムーミンの着ぐるみ…。

マリオとルイージに至ってはカートまで自作して式場に入場する。

雰囲気は京都大学の卒業式そっくりで、同大学における卒業式の伝統は札南OBがスタートさせたという都市伝説もあるほどだ。

 

式自体は途中までは粛々と進行する。

しかし、クラス代表が校長からクラス全員分の卒業証書を受け取る場面になると、代表の後ろに賑やかし隊が付いていき、証書を受け取ると賑やかし隊は代表と校長をはけさせて歌い、コントや漫才、バンド演奏と続き、卒業式は瞬く間にパフォーマンス選手権と化す。

 

 

 

この色物行事に地元メディアもこぞってカメラを構えるほか、卒業式の映像をTwitterにアップすると、リツイートで拡散されて「バズる」とことも毎年見慣れた光景となっている。

卒業式は3年間過ごした仲間や先生たちとの別れの場となるため、通常はしんみりとした空気の流れることが多い行事であるが、札幌南の卒業式は真逆と言える。

互いの新たな旅立ちを祝福し合い、生徒全員で高校生活最後の思い出を全力で作りにいく。

生徒の自主性を重んじる高校だからこそ作り出せる雰囲気なのだろう。

 

明晰な頭脳回路を持った奇人変人

 

 

 

最大の特徴は、明晰な頭脳回路を持った奇人変人だ。

個性豊かで、独特の感性と発想力を持つ生徒たちであふれている。

独学でプログラミングを学び、某音楽再生器を改造して通話機能を付け加えたA君、日直ノートにQRコードを手書きで記し、スマホで読み取ると内容が映し出される仕掛けを自作したS君…。

彼らの個性に触れるだけで、日常は楽しく彩られた。

 

その中でも、筆者の友人であったU君の休み時間中の楽しみ方には驚かされた。

その当時、あるクラスでルービックキューブが流行っていた。

U君もそのクラスの一員で、6面をそろえることがずば抜けて得意だった。

ある日の休み時間、U君は席に座ったまま目をつぶっていた。

瞑想でもしているのかと思ったが、どうやら様子がおかしい。

近づいてみると、なんと目を閉じたままルービックキューブを動かしていた。

彼は、最初の色の配置を暗記し、その記憶だけを頼りに6面をそろえていた。

時間を持て余した天才の遊びと言うべきか、筆者はその様子をただ黙って見つめることしか出来なかった。

 

唯一無二の個性を持った生徒が集まる学校は、まるで「おもちゃ箱」のようだった。

ちなみに、U君は高3の夏にインターハイに出場し、京都大学に現役で合格した。

 

「Duo」に始まり「Duo」に終わる

 

 

 

多様な個性を持つ生徒が混在する高校であるが、教科書の内容から大きく逸脱した授業や、名物と言われるような強烈な個性を放つ先生はあまり見かけない。

ベテランの先生が多く、大学受験をゴールとして粛々と授業が進められるため、落ち着いて勉強に集中できる反面、名物授業と呼べるものは意外と存在しなかった。

 

しかし、名物がないわけではない。

全国の受験生にとってバイブルとなっている英単語帳「Duo」だ。

560本の英文が掲載されており、その英文には1本あたり3~7語ほどの重要単語が詰まっているため、560本の英文を暗記するだけで、2569語の重要単語と熟語が覚えられる。

 

札幌南では英語の授業の半分をDuoに費やす上に、校内模試の1/3がDuoの問題だったことも。

したがって、入学式の翌日から同級生同士で『Duo』の英文暗記レースが繰り広げられる。

“Duo英文暗記ダービー“がスタート。

クラスメート同士で「俺30番!」「俺40番まで覚えた!」と声が飛び交う中、「私110番」と言う生徒が出現すると、突如クラス全員が羨望の眼差しで見つめるようになる。

授業内でも「Duo」の確認テストがひんぱんに行われ、1年かけて560本全てを学年全員の暗記コンプリートを目指す。

 

これが、札南生の英語力の基礎となっており、大人になっても戻るべき場所にもなっている。

筆者は海外旅行や英語圏への留学前には必ず「Duo」を1周見返した。

もし札幌南のOB・OGに出会ったら、「『Duo』の1番は?」と質問してみてほしい。

おそらく、「We must respect the will of the individual(個人の意志は尊重しなければならない)」と即答するだろう。

(濱野 航)

 

 

 

 

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