【母校トリビア】公立校トップレベルの進学校は「秩序のあるカオス」~都立西高校①

都立西高

20代OGが校風について「秩序のあるカオス」と表現する都立西高校(撮影:丸井乙生)

卒業生が母校のユニークな側面を語るコラム。 

第2回は、都立西高校(東京・杉並区)を20代OGが紹介する。公立校トップレベルの進学校であり、個性派勢ぞろいである点も特徴的だ。

西高前編では、「居場所は必ずどこかにある」という多様性に満ちた校風について。受験戦争の後に訪れる”国境争い”とは? 〇〇族って何?

知性に裏打ちされたユーモアも垣間見える。

 

 

   

公立高校トップレベルの進学校

都立西は、秩序のあるカオスである。矛盾しているかもしれない。しかし、「都立の星」「日比谷とともに都立の双璧を成す」と評され、進学者実績も公立高校の中ではトップレベルを誇りながらも人種のるつぼであり、その延長線上に多文化社会を築いてきた。通称「西高」で育まれ、伝統として引き継がれてきた精神・文化をひもといていく。

 

ネリッシュが万里の長城を越えてくる

受験戦争の後には、“国境争い”が襲ってくる。

全国有数の進学校である都立西高等学校は東京都杉並区にあり、生徒たちは地元の杉並区からはもちろん、隣の武蔵野市、東京都区部最大の人口を有する世田谷区などあちこちから通学してくる。

それらのマジョリティーに虐げられているのが、ネリッシュこと練馬区民と、町田市民だ。西高でいう“虐げられる”とは、ただ愛を持っていじられるということで、決していじめられるわけではない。

23区の南に位置する杉並区、世田谷区にとって、北にある練馬区は埼玉も同然であり、北方の騎馬民族“ネリッシュ”が、万里の長城である「西武線」を乗り越え、侵入してくるという、世界史になぞらえたユーモアでいじられる。

一方、町田市は東京都の南に位置し、ほぼ神奈川と同然であるということで、それをプライドとする生徒たちは、町田の良さを訴える町田市民の会を立ち上げ、オリジナルTシャツまで作ったという。

 

愛があることを忘れるなかれ

また、都下では田舎と言われがちな多摩地区勢では、歩いて通える距離だと証明するために、午後11時に家を出発して、徒歩で西高まで通った生徒もいたという。

他の高校でも「私は区民」「オレは市民」の争いは起きるかもしれないが、身を賭してまで活発に議論が交わされる理由は、西高が市と区の境界に所在しているからだろう。この絶妙な距離感では、区民のプライドを持つ西高生も、自転車なら10分で行ける武蔵野市吉祥寺を多用せずにはいられない。

厳しい受験競争を勝ち抜いてきた西高生は、何かとプライドを持ち出しては競争関係に持ち込むことが、本能的に好きなのだろう。そこには愛があることを忘れるなかれ。 

 

文化の源泉 〇〇族

“西高のプライド”の中でも忘れてはならないものがある。「〇〇族」だ。

上履きを脱ぎ捨ててスリッパで生活する「スリッパ族」、夏も冬も通学時も白衣を着て生活する「白衣族」、部活動の朝練、昼練を理由に常にジャージを着ていたら、引退してもジャージをやめられない「ジャージ族」、中庭で昼食を取りながら花を愛でる「華族」。

似たもの同士が集まり、群れを成し、勢力の拡大を狙う。

例えば「ジャージ族」とは、服装に決まりがない西高では私服や“なんちゃって制服”を可愛く着こなす女子がいる中、部活勢としての誇りを持ち、ジャージを愛する人々を言う。その誇りは後に、ジャージしか着ないというプライドに変化し、引退しても止むに止まれずジャージを貫く人々もいる。

しかし、それを貫いていた女子が、高3の冬、残された青春を謳歌したい、JKを楽しみたいと言って、そろって制服を着るようになる姿も趣深い。もちろん部活動にいそしみながら私服に着替える女子も一定数存在するため、幻滅しないで欲しい。 

 

居場所は必ずどこかにある

個性あふれんばかりの生徒たちの中においても、西高では誰もがヒーローになれる。

それを実感できる瞬間が西高の運動会だ。

応援団、運動会実行委員、そしてマスコット隊の3つが主軸を担う。応援団はダンス部を中心に、3学年の各クラスが振り分けられた4チームに分かれ、その「団」のイメージカラーに合ったペアダンスを行う。黄団のダンスでは、女子の黄色い声援(悲鳴)が聞こえるとか聞こえないとか。

運動会実行委員はたった1日のために半年前から準備を始め、生徒主体の企画・運営の厳しさと達成感を体感できる。

そしてマスコット隊は、団の象徴となる高さ4mの巨大なマスコットを制作する。デザイン性、倒れない骨組みを設計する創造力、ひたすら新聞紙をまとめる集中力が必要とされる。マスコット隊は自分が手がけたマスコットの優勝よりも、当日の朝にマスコット4体すべてを校庭に並ばせるために、団の垣根を越えて協力する。西高生の大半はこの3つのどこかに属し、各々の持ち味を発揮する。

 

活躍の場がなければ作ってしまえばいい

驚くべきは開会式。小中学校のような“規則正しい入場行進をして、校長先生の話、選手宣誓を聞いて、準備体操をして…”という形式的な式次第を予想していると、唖然とするだろう。

近年の応援団幹部によるエール交換では、ウイットに富んだ四字熟語のスローガンと、アレンジの加わった奇妙な応援合戦が行われる。さらに某倶楽部による体を張ったネタ披露、奇妙な格好の人々による奇妙な聖火の点火など、朝から笑いのオンパレードである。 

別途行われるクラス対抗戦「クラスマッチ」では、スポーツだけでなく百人一首もあり、クラスごとに制作するおそろいのTシャツ「クラT」のデザイン、応援に命をかける人もいる。文化祭である「記念祭」ではクラスの活動のみならず、部活動や同好会、記念祭用の有志団体を結成し、活躍する人も多い。運動会同様、クラスマッチも記念祭も生徒主体だからこそ運営する幹部も重要になる。

西高の行事では、誰でもどこかに必ず活躍の場がある。もし、活躍の場がないと思えば、作ってしまえばいいのだ。

(②につづく=五島由紀子)

 

 

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