企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、一念発起で転身した自然観察指導員の写真コラム。
つれづれなるままに、今回は「バラ(薔薇)」の中編。
世界の各国が美を競うように作出してきた色とりどりの園芸種を紹介する。
日本代表は「真紅の女王」と「五輪聖火」
「クイーン・オブ・神代」は東京都調布市にある神代植物公園作出のバラ。
2009年(平成21)年度の国際バラ新品種コンクールで金賞を受賞した。
13年の開園50周年を記念して名前を一般公募し、翌14年に新品種登録された。
同園では、1961(昭和36)年の開園時から育てている古株や原種バラなど、さまざまな品種のバラを栽培している。
ばら園の本園はシンメトリックに設計された沈床式庭園で、新品種金賞受賞と同じ09年に「世界バラ会連合優秀庭園賞」を受賞した。
他にも「野生種・オールドローズ園」と「国際ばらコンクール花壇」があり、ばら園全体で約300品種5000株の秋バラを楽しむことができる。
「聖火」、英名では「オリンピック・トーチ」とも呼ばれるバラは、「ミスター・バラ」と称された日本の鈴木省三氏の作出による。
1964年10月に東京五輪が開催されたのにちなみ、66年に京成バラ園芸でつくられた。
花径は12センチほどの大輪。
花色は白地に濃いローズ色の覆輪で、開花するにつれて全体に赤みが増す。
赤色が全体を覆うように花色を美しく変化させるさまは、五輪の聖火台に炎が灯る様子を思い起こさせる。
71年にニュージーランドで開かれた国際コンクールで金賞を受賞した。
それまでバラ園芸の分野では後進だった日本のバラ育種の実力を世界に知らしめた品種とされている。
フランス代表は「あの大統領」と「日本が誇る小説」
1974年にフランスで作出された「シャルル・ド・ゴール」は、ラベンダー色と花型の華やかさが素晴らしく、濃厚な香りも楽しめる四季咲き大輪系の木バラ。
花つきがよく、丈夫な大株になり、棘(とげ)が少ない品種として知られる。鉢植えやプランターに適しているため、一般家庭でも親しまれている。
花名は、元フランス大統領「シャルル・ド・ゴール」の名前がそのまま命名された。
フランス国民は同大統領の栄誉をたたえて国際空港や海軍の原子力空母にも名付けているが、バラの品種もその1つとなったようだ。
フランスで作出された「伊豆の踊子」は鮮やかな黄色のバラ。
1本のシュートに4~6輪の花が付き、春から晩秋まで咲き続ける。黄色のバラでは数少ない遅咲き品種で、乾燥に強いとされている。
フランス名は「カルトドール(黄金のカード)」。
2001年に静岡県河津町の「河津バガテル公園」が「パリ・バガテル公園」の姉妹園として開園した際、パリ市と河津町の友好の証として贈呈されたのが、このバラだった。
以来、和名は「伊豆の踊子」とされた。
ベルギー代表は切り花にオススメ
1963年にベルギーで作出された「パスカリ」は、91年の世界バラ会議「ベルファースト大会」で、7番目の殿堂入り品種として登録された。
「パスカリ」の名前には、キリスト教の復活祭という意味もある。
香りは軽めだが、クリーム色の地に、花弁の外側にいくほどアイボリーから鮮やかな白色になるグラデーションには上品な印象がある。
強健で、耐病性に優れていることから、特に切り花におすすめ。
(安藤 伸良)