【雑学】自然観察指導員の徒然草=寒い冬でも花は楽しめる~後編

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東京・新宿御苑で美しく咲いていた紅梅の花。2017年2月3日 (撮影:安藤伸良)


企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、一念発起で転身した自然観察指導員の写真コラム。

 

つれづれなるままに、今回は「冬の花」の後編。

 

花を咲かせる樹木や草本が少ない寒い季節、しかもコロナ禍で鬱々とした気分になりがちな今だからこそ、懸命に咲いている姿を見つけるとほっこり温かい気持ちになれる。

 

 

 

 

「ヤツデ」でコロナを追い払え!

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東京・新宿御苑のヤツデの雄性期の花。2017年12月16日 (撮影:安藤伸良)

「ヤツデ(八手)」は、ウコギ科ヤツデ属の常緑低木で、大型で独特の葉の形から別名は「テングノハウチワ(天狗の羽団扇)」。魔物を追い払う力があると考えられていたという。

 

関東地方以南、四国、九州の林内の日陰に自生し、庭木としてもよく栽培される。花期は11~12月で、枝咲きに球形の花序を円錐状につけ、白色の花を多数つける。花が少なくなる冬だからこそよく目立つ。

 

花序の上部には両性花、下部に雄花を付ける。両性花では雄しべが先に花粉を出し、終わった後で雌しべが成熟する。花粉が自分の雌しべに付かないようにしている。

 

アジアで2番目に人気の花

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東京・神代植物公園の白梅の花。アジア3カ国では不動の2番人気。2020年2月1日 (撮影:安藤伸良)

「ウメ(紅梅・白梅)」はバラ科アンズ属の落葉樹。中国原産で奈良時代に渡来したといわれる。万葉集には、ウメを採りあげた歌が119首もある(ちなみにサクラは42首)。

 

花期は2~3月。花色は白色に加え紅色、淡紅色のものもある。

 

早春の寒い中でいち早く花を咲かせ、どこか寂し気ではあるが、孤高を保つ強さがあることから人々に愛されてきた。日本ではサクラ、韓国ではムクゲ、中国ではボタンに次いで人気があるという。

 

ごはんのお供にもなる「ツワブキ」

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東京・浜離宮恩賜公園に咲いていたツワブキの花。2016年11月11日 (撮影:安藤伸良)


 「ツワブキ(石蕗)」は、キク科ツワブキ属の常緑多年草。北海道、東北を除く日本各地の沿海地や海辺の山に自生する。

 

花期は10~12月で、太い花柄を伸ばし鮮やかな黄色の頭花をつける。

 

若い葉っぱは食用になり、佃煮にしたものが「キャラブキ」でごはんのお供におすすめ。また、葉は切り傷、おできなどに薬効がある。

 

美しさにだまされるな!「スイセン」の毒に要注意

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東京・善福寺公園のスイセンの花とスジグロシロチョウ。葉や球根を食べてはいけません。2009年12月8日 (撮影:安藤伸良)

 

 

 


 「スイセン(水仙)」は、ヒガンバナ科スイセン属の多年草で、地中海沿岸原産。平安時代末期に中国経由で渡来したといわれる。

 

関東以西、四国、九州の沿海地に野生化している。東京近郊では静岡県下田市の爪木崎が有名で、シーズンには300万本のスイセンが咲き誇る。

 

花期は12~4月。20~40センチの花茎を伸ばし、5~7個の白花を横向きにつける。中央の黄色の部分も花弁。園芸品種も多く作られている。

 

ほのかな甘い香りがあるが、スイセンの葉や球根にはアルカロイドという毒があり、食べると悪心や下痢、発汗、頭痛、嘔吐などの中毒症状を引き起こす。葉っぱがニラ、球根がタマネギに似ていることから、年間で約5~20人が誤飲してしまうとされ、厚生労働省などでは注意を呼びかけている。

 

豆まきの時期に咲く「セツブンソウ」

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東京・野川公園のセツブンソウの花。2016年2月18日 (撮影:安藤伸良)

 

「セツブンソウ(節分草)」は、キンポウゲ科セツブンソウ属の多年草。日本原産の植物で、本州の関東以西の石灰岩の多い落葉樹林内に群生する。

 

花期はその名の通り、節分の時期の2~3月。3~5センチの葉身の先に約2センチの小さな白花をつける。白い和紙のような花弁に見えるのはガク片で通常5枚ある。花の内部の黄色の部分が実際の花弁。

 

名前に似つかわしくない可憐な花

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東京・野川公園に咲くオオイヌノフグリの花。その名から想像できない青い花はかわいらしい。2009年2月16日 (撮影:安藤伸良)

「オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢)」は、オオバコ科クワガタソウ属の二年草。二年草とは、タネをまいてから1年以上たって開花し、2年以内に枯れてしまう植物のことをいう。

 

欧州やアフリカ原産とされ、明治時代初めに日本に伝わってきた。現在は全国各地に広まっている。日本に古来よりある「イヌノフグリ」によく似ていて、イヌノフグリより大きいことから、その名で呼ばれるようになったとされる。また、タネの形が雄犬のフグリ(陰嚢)に似ているため、オオイヌノフグリと呼ばれるようになったという説もある。

 

花期は3~5月だが、最近では12月に開花しているのが見られるようになった。別名は「星の瞳」。花のない時期に美しい青紫色の花が草原一面に咲き、日本の春を彩る花になっている。

(安藤 伸良)

 

 

 

 

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