卒業生が母校のユニークな側面を語るコラム3校目は、通称「SFC」こと、慶應義塾湘南藤沢中高等部について。
湘南藤沢(SFC)第2回は「SFCあるある」。
在校生以外がSFC行きのバスに乗ると、どんな目に遭うのか?
校舎が攻略不能な迷路?
SFC生以外にはトラップのバス
SFCまでは最寄り駅からバスで20分弱。スクールバスではないが、登下校の時間帯はSFC生でギュウギュウとなる。
駅と学校はどちらも終点のため、途中の停留所で降りたい人は運転手のすぐ横にいないと降りられない。
乗り慣れている人ならいいのだが、そうでない人が後ろの席に座っていると大変だ。前にいる生徒が降りてなんとか通路を開け、やっと降りられたころには4、5分経っていることもざらだ。
日曜日、途中の停留所にある体育館で試合をする他校生数十人が、何も知らずにバスの後ろに乗ってしまうのは「SFCあるある」。その時間ロスのため、筆者は何度か部活動に遅れたことがある。
校舎は攻略不可能な迷路
校舎は打ちっぱなしのコンクリート。一見都会的だが、よく見るとひびがたくさん入っているし、冬は冷たくなってとにかく寒い。
設計したデザイナーによると、6年通っても飽きないようにいろいろなルートで教室を移動できるようにしたという。つまり、最短ルートは存在せず、どこを通っても遠回りになる。
例えば、5年生(高2のこと。SFCでは高1~3を4~6年生と呼ぶ)の教室から音楽室に行くには、どこをどう通っても10分もかかる。
SFCの授業間の休憩は20分。だから前の授業が音楽で次の授業が体育だと、ほぼ確実に間に合わない。移動教室のダッシュは日常的な光景だ。
ちなみに、雨の日はもっと困る。屋根がある道だけを通ろうとするとさらに遠回りしなければならないからだ。
「ロッカーキー」が何よりも大事
SFC生にとって最も大事なものは「ロッカーキー」だろう。
教室の外に設置されたロッカーが1人ひとつ割り振られており、そこに教科書やノート、体操服や辞書など、授業に必要なものをしまっている。
ロッカーは常に施錠しておくという決まりがあるため、ロッカーキーを家に忘れて来ると万事休す。何から何まで友達に借りに走ることになる。
ロッカーキーを忘れて絶望的な気分になる。
筆者は忘れたりなくしたりしないように、直径15センチくらいの大きなマスコットを付けていた。
そのおかげで、行方不明になっても、落ちてたよ、と届けてもらい命拾いしたことが多々ある。
教師の趣味が輝く「ゆとりの時間」
教師がまるで専門家というのも「SFCあるある」だが、その究極と言えるカリキュラムが、前期に週2時間行われる「ゆとりの時間」だ。
教師一人ひとりがクラスを開講していて、1~5年生は約50種類のクラスの中から選んで希望を出し、学年関係なく受講する。
成績が振るわない下級生に上級生が勉強を教えるクラスや、自習のクラスなどもあったが、ほとんどが担当教師の専門ーーいや、趣味の延長だった。
教諭によるクラシック演奏をただ見るだけの音楽。
教諭による古文書を解読する国語。
教諭による陶芸の美術。
筆者が最も印象に残っている内容は、「能・狂言」のクラスだ。
国語教諭の「ホンモノ」に触れてほしいという思いから、現役の能楽師を招いて開講された。
発声の仕方や楽器の演奏方法を教えてくれるだけでなく、本物の面や衣装を持ってきてくれたことも。実際に舞台で使う面や衣装を身につける体験は、もう二度と出来ないだろう。
(ひがあゆみ)