【雑学】自然観察指導員の徒然草=香りのよい木 臭気のある木~前編

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東京・善福寺公園のサンショウの葉。和食の香り付けに欠かせない。2017年6月10日 (撮影:安藤伸良)

企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、一念発起で転身した自然観察指導員の写真コラム。

つれづれなるままに、今回は「香りのよい木、臭気のある木」の前編を紹介する。

コロナ感染症の拡大が続いて外出の際にはマスクを着用し、最近は自然の香りや匂いを感じる機会が少なくなった。本来、四季を彩る花木は見るだけでなく、香りも併せて楽しむもの。残念ながら写真では香りまで届けることができないが、ほんの少しでも読者の皆様の癒しになればと願う。

 

 

 

春に香るジンチョウゲ

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都内の自宅に咲いたジンチョウゲの花。春の訪れを香りで告げてくれる。2009年2月28日 (撮影:安藤伸良)

「ジンチョウゲ(沈丁花)」は、ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の常緑樹。中国原産で、日本には室町時代に渡来した。

花期は2~4月で、枝先に強い芳香のある花を多数つける。花色は白または淡い紫紅色。濃い緑色の葉とのコントラストが美しい。

夏のクチナシ、秋のキンモクセイとともに「三大芳香花」の1つで、中国では「七里香」(七里の遠くから匂う)と言われる。

 

たくあんを染めるクチナシ

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東京・新宿御苑に咲いていたクチナシの花。2009年6月11日 (撮影:安藤伸良)

「クチナシ(梔子)」は、アカネ科クチナシ属の常緑樹。東海地方から以西、沖縄、中国、台湾などに分布している。

花期は6~7月で、枝先に芳香のある白色の花を一輪付ける。花弁は6枚に見えるが、これは漏斗状の花が6つに裂けたもの。

「三大芳香花」の1つ。果実は楕円形で冬に橙色に熟す。黄色の無毒な着色料として栗きんとん、たくあんなどの着色や草木染に利用される。

 

秋の夜に漂うキンモクセイ

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東京・善福寺公園のキンモクセイの花。強い芳香は秋の運動会を連想させる。2020年10月4日 (撮影:安藤伸良)

「キンモクセイ(金木犀)」は、モクセイ科モクセイ属の常緑樹。中国原産と言われるが諸説ある。同じモクセイ科のギンモクセイ(銀木犀)の変種で、日本では雄株しか知られていない。

花期は9~10月。葉の根元に強い芳香のある橙黄色の小花を多数付ける。

これも「三大芳香花」の1つで、中国では「九里香」と言われる。特に夜間は、近くにいなくても香りが感じられるほど強く香る。

 

料理に重宝するゲッケイジュ

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東京・木場公園で見つけたゲッケイジュの花。2014年4月16日 (撮影:安藤伸良)

「ゲッケイジュ(月桂樹)」は、クスノキ科ゲッケイジュ属の常緑樹。地中海沿岸原産で、明治時代にフランスから渡来した。

花期は4月。雌雄別株で、葉の根元に淡黄色の小花が集まって咲く。葉や果実に独特の芳香がある。

乾燥させた葉はベイリーフやローレル(ローリエ)と呼ばれ、カレーやシチュー、スープなどの煮込み料理の香り付けや、肉の臭みを消すために使われる。拙宅にも植えてあり、かなり重宝している。

 

日本食に欠かせないサンショウ

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都内の自宅で咲いたサンショウの雄花。2015年4月16日 (撮影:安藤伸良)

「サンショウ(山椒)」は、ミカン科サンショウ属の落葉樹。日本では北海道から九州にかけて分布している。

花期は4~5月。雌雄別株で、枝先に花序を出し淡黄緑色の小花をつける。果実は9~10月に紅色、赤褐色に熟し、中から黒色で光沢のあるタネを出す。

若葉はちらし寿司や煮つけの香り付けに、熟したタネは粉末にして粉山椒として、また幹はすりこぎとして使われるなど、日本食には欠かせない。

(安藤 伸良)

 

 

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