【雑学】自然観察指導員の徒然草=日本人に愛される果実 野イチゴの仲間~前編

東京 善福寺公園 ヤブヘビイチゴ 実 

東京・善福寺公園で見つけたヤブヘビイチゴの実。2011年6月1日 (撮影:安藤伸良)

企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、一念発起で転身した自然観察指導員の写真コラム。

つれづれなるままに、今回は「野イチゴの仲間」の前編を紹介する。

現代の日本では「イチゴ」は嫌いな人がいないほど広く好まれている。今、私たちが食べているイチゴはバラ科オランダイチゴ属のもので、江戸時代にオランダ人によってもたらされたもの。その後、各地で品種改良され現在は多くのブランドイチゴが流通している。

種子に見えるつぶつぶの痩果(そうか)が付いた花托(かたく)部分(以下果実と表記)が食用になる。果実は赤色になるのが一般的だが白色の品種もある。ここでは、バラ科キジムシロ属とキイチゴ属の野生のイチゴの花と果実を集めてみた。

 

 

 

人も蛇も食べないヘビイチゴ

東京 浜離宮恩賜公園 ヘビイチゴ 花 自然

東京・浜離宮恩賜公園のヘビイチゴの花。2018年4月11日 (撮影:安藤伸良)

「ヘビイチゴ(蛇苺)」は、バラ科キジムシロ属の多年草で、全国の日当たりのよい野原や道端で普通に見られる。名前の由来は、「人は食べずに蛇が食べるから」と言われているが、実際には蛇は果実を食べない。

 

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東京・善福寺公園のヘビイチゴの実。おいしそうに見えても食用ではない。2015年5月22日 (撮影:安藤伸良)

花期は4~6月。葉腋から柄を伸ばし、黄色の花を1個付ける。果実は5~6月に赤く熟し、表面のつぶつぶには細かいしわがある。

近い仲間に「ヤブヘビイチゴ」がある。花、果実ともにヘビイチゴより大きく、果実にはしわがなく光沢がある。

 

ジャムがお勧めのクサイチゴ

東京 新宿御苑 クサイチゴ 花 自然観察指導員

東京・新宿御苑のクサイチゴの花。2013年3月29日 (撮影:安藤伸良)

「クサイチゴ(草苺)」は、バラ科キイチゴ属の落葉低木で、本州~九州の山野に生える。木になるイチゴだが、葉や茎が草のように柔らかく、背丈も低くいたるところで見られるため、草の名前がつけられた。

 

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東京・新宿御苑のクサイチゴの実。ジャムにするとおいしい。2016年5月25日 (撮影:安藤伸良)

花期は4~5月。花茎の先に約4センチの白い花が咲く。

果実は5~6月に、約1センチの球形の集合果で赤く熟す。甘みがあり生食やジャムに利用される。摘み取る時は、トゲに気をつけて。

 

プチプチ食感が楽しいカジイチゴ

東京 善福寺公園 カジイチゴ 花 自然観察指導員

東京・善福寺公園のカジイチゴの花。2021年3月27日 (撮影:安藤伸良)

「カジイチゴ(梶苺)」は、バラ科キイチゴ属の落葉低木で、関東以西、四国、九州の沿海地の山地に生える。名前は、葉の形がクワ科のカジノキに似ていることに由来する。

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東京・善福寺公園のカジイチゴの実。赤ではなく、オレンジ色が特徴。2021年5月9日 (撮影:安藤伸良)

花期は4~5月で、枝先に3〜4センチの白い花が上向きに咲く。

果実は6~7月に、1センチの球形の集合果で淡黄色から橙黄(オレンジ)色に熟す。甘酸っぱく、生食でプチプチ食感を楽しむことができる。ジャムや果実酒にも利用する。

 

味では一番人気のモミジイチゴ

東京 石神井公園 モミジイチゴ 花 自然観察指導員

東京・石神井公園のモミジイチゴの花。2015年3月21日 (撮影:安藤伸良)

「モミジイチゴ(紅葉苺)」は、バラ科キイチゴ属の落葉低木で、中部地方以北の東日本に分布している。西日本には、「ナガバモミジイチゴ」がある。葉の形がモミジに似ていることから命名された。

 

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東京・多摩森林科学園のモミジイチゴの実。2017年5月27日 (撮影:安藤伸良)

花期は4〜5月で、葉腋に白い花が下向きに咲く。

果実は6〜7月に、約1.5センチの球形の集合果が橙黄色に熟す。甘みがあって味がよく、野生のイチゴでは最もおいしいともいわれている。

(安藤 伸良)

 

 

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