感染予防のため不要不急の移動を控え、まだまだ自由に旅行するのは難しい日々が続いている。そんな中、サイクリングで訪れたちょっとマイナーだけど個人的なお気に入りスポットを紹介して、今後の旅の参考にしてもらおうというこの企画。今回も東京のギリギリ端っこを探検ということで、多摩川河口の平和の大鳥居からよみうりランドまで神奈川との県境に沿って走ってみた。
今回は海側・平地側からの景色を紹介
過去数回、山側から東京都と他県との境を見てきたが、今回は目線を変えて海側・平地側から東京のギリギリ端っこを走って、どんな景色が見えるのか探検してみる。まずは東京と神奈川の間を流れる多摩川の河口へ。スタート地点は羽田空港近くの平和の大鳥居。実際の河口はもうちょっと先で、羽田空港のエリアとなる。空港内もある程度までは自転車で入れて、僕も昔、迷い込んだことがあるが、今回は深入りせずにこの大鳥居から出発だ。
平和の大鳥居の歴史 なぜ近くに神社がない?
この平和の大鳥居は、鳥居があるだけで近くに神社はない。もともとは昭和初期に京急電鉄から穴守稲荷神社に寄付された鳥居だったという。しかし、太平洋戦争終結後の1945年9月、GHQが羽田空港建設のため付近の住民を48時間で強制退去させ、穴守稲荷も移転を余儀なくされた。ところが、この大鳥居だけは撤去を免れ、空港敷地内に残されたそうだ。その後も取り壊しや移転の危機があったが、大鳥居の不思議な力かはたまた祟りか、そのたびに事故が起こったという。結局、その後の空港拡張に伴い、1999年に現在の位置に移転されたとのことだ。
この大鳥居から河口の方を見ると、対岸の川崎の方へ新たな橋が建設されているのが見える。これは羽田連絡道路といって、もともとは2020年度中の開通予定だったが、台風などの悪天候により工事が遅れ、今は2021年度中の開通を目指しているという。今後は平和の大鳥居のあたりも開発されて、「HANEDA GLOBAL WINGS」という新しい街になり、企業誘致や商業施設建設なども進んで、東京の新玄関口としてインバウンド客を取り込んでいくようだ。今はまだ下町感ある川沿いの景色も、あと数年で様変わりするかもしれない。
「多摩サイ」をさかのぼる
話はそれたが、ここから多摩川をさかのぼっていく。堤防の上の道は、サイクリストの間では多摩川サイクリングロード、略して「多摩サイ」とも呼ばれている。とはいえ、普段は散歩やランニングしている人も多いのであえて避ける自転車乗りも多いが、この日は猛暑の平日だったので人影もまばらだ。
1kmほどさかのぼると、首都高1号線横羽線と大師橋が川崎の方へとかかっている。今のところ、この大師橋が一般道で県境を越えられる最も河口側の橋となる。
さらに10kmほど進んだ丸子橋の手前で舗装されたサイクリングロードは途切れるので、ここからは多摩堤通りを走る。その後も多摩川を左に見つつ、堤防の上の道と車道を行ったり来たりしながら、上流の方へと進んでいく。
多摩河原橋の上からは、ゆったりとした川の流れが見える(撮影:光石達哉)
河口から25kmほど登ってきたところにかかる多摩河原橋を使って、多摩川を渡る。この辺りから対岸も東京都稲城市となるからだ。
「よみうりV通り」巨人の選手・監督・コーチらの手形が!
このあたりの県境は、住宅地の中を複雑に走っている。ひとまず県境を越えないように鶴川街道を西へ進む。榎戸の交差点を左へ曲がり、数100m進むと左に京王よみうりランド駅が見え、その先に上り坂がそびえている。この坂は「よみうりV通り」と名付けられているが、サイクリストの間では「ランド坂」とも呼ばれ、上り坂の練習に訪れるロードバイク乗りも多い。
坂の歩道には、数年前の巨人の選手・監督・コーチらの手形が背番号順に等間隔に並べられている。さらに右に大きくカーブしながら登っていくと、巨人の二軍本拠地である読売ジャイアンツ球場の入り口が見えてくる。巨人の追っかけファンが出待ちをしていることもある。
さらにスカイシャトルと呼ばれるゴンドラが通る下で自転車を降りると、駅からの階段があり、その頂上にはミスター長嶋茂雄さんの筆による「巨人の道」の石碑がある。この道をそのまま行けばよみうりランドの正面にも行けるのだが、道の途中に県境が通っているため、ここでいったん停止。続きは次回以降に!
(光石 達哉)