【行ったつもりシリーズ】常磐線サイクルトレインで行く筑波山とあじさいの名所(2)筑波山目指してヒルクライム

筑波山の中腹にある「つつじが丘駐車場」。あじさいが少し咲いていた(撮影:光石 達哉)

読んでいるうちに行ったつもりになれるかもしれない、プチ旅行の紀行文コラム「行ったつもりシリーズ」。

自転車を解体することなく、鉄道の車内にそのまま持ち込むことができるサイクルトレイン。2024年6月からJR常磐線の上野~土浦間で通年運行が始まったため、梅雨の晴れ間にさっそく利用して筑波山やあじさい鑑賞に出かけてみた。第2回は、廃線跡のサイクリングロードから筑波山へ向かう。

 

「元・線路」をサイクリングできる

土浦駅西口を出て右へ。路面のペイントとブルーラインに従って横断歩道を2つ渡ると、廃線跡の「つくば霞ケ浦りんりんロード」に入る(撮影:光石 達哉)

6月下旬の梅雨の晴れ間、自転車をそのまま載せられる常磐線サイクルトレインに乗って、茨城・土浦に到着。輪行とは違い、自転車を組み立てる手間がないため、すぐに駅から出発できる。

 

土浦はサイクリング・ウエルカムな街で、駅直結の自転車ショップやシャワールーム、サイクリスト向けのホテルなどの施設が充実。さらに土浦駅を起点の一つとする「つくば霞ヶ浦りんりんロード」は、日本を代表し世界に誇れるサイクリングルートとして国が指定する「ナショナルサイクルルート」にも選ばれている。

 

「つくば霞ヶ浦りんりんロード」は霞ヶ浦方面と筑波山方面に分かれており、合計176km。霞ヶ浦方面は以前、約90kmのショートコースを走ったことがあるため、今回は筑波山方面を目指す。

 

筑波山方面は、1987年まで運行していた筑波鉄道の線路跡を再利用したコース。土浦駅からJR水戸線の岩瀬駅まで片道40kmある。線路跡でほぼ平坦な道なので普通に往復するだけじゃおもしろくないと、途中で筑波山にも寄ったりしつつ、この時期が見ごろのあじさいの名所も回っていく。

 

サイクリングロードと言っても、一般道と交わる箇所は多いので注意。広い幹線道路から農道のような細い道までたくさんあり、そのたびに止まったり、減速したりする(撮影:光石 達哉)

土浦駅西口に出てロータリーを歩いて右方向に進むと、「つくば霞ヶ浦りんりんロード」の標識が見えてくる。ここも右へ。路面の青いラインに沿って進むと、幅の広い歩道のような道に出た。ここが、線路跡に作られたサイクリングロードのようだ。ただ、途中で交差する道が多く注意が必要で、ほぼノンストップで走れる霞ヶ浦一周とは異なる。

 

スタートから4.1km地点、旧筑波鉄道・虫掛駅跡のホーム跡を利用している「虫掛休憩所」。新しくきれいなトイレもある(撮影:光石 達哉)

街中を抜けると、左右には田んぼやレンコン畑が広がる景色が目に入ってきた。のんびりサイクリングを楽しんでいる人もチラホラ。4kmちょっと走ったところで、虫掛(むしかけ)休憩所がある。旧筑波鉄道の虫掛駅跡で、駅のホームのようなつくりになっており、このコースにはこういった休憩所が何カ所かあるようだ。

 

超穴場スポット~〇〇が静かに咲き誇る

7.8km地点の「藤沢休憩所」。ここも駅のホームを再利用している。コース上には各ポイントまでの距離を表示した標識がたくさん設置されていて、わかりやすい(撮影:光石 達哉)

7.8km地点には、同じく昔は駅だった藤沢休憩所がある。そのちょっと先でりんりんロードを右にそれる。500mほど走ると「新治(にいはり)ふるさとの森」という小高い丘に造られた小さな公園がある。県のスポーツ推進課が作成している「サイクリングいばらき」というサイトで、あじさいの穴場として紹介されていたので寄ってみた。

 

穴場のあじさいスポット「新治ふるさとの森」。写真のガクアジサイだけでなく、よく見かけるアジサイも咲いていた(撮影:光石 達哉)

園内は木々が生い茂って薄暗く、人の気配はなくひっそりしている。鹿嶋神社という小さな神社もある。その中でガクアジサイや、おなじみのアジサイが静かに咲いていた。

 

約13km地点にある「小田休憩所」。近くに小田城の城跡があったが、土塁等しか残っていないので写真は割愛(撮影:光石 達哉)

公園を出て、りんりんロードに戻る。約13km地点には戦国時代までこの地域を支配した小田氏の小田城跡があり、そのそばには小田休憩所がある。

 

16km地点過ぎで、再びりんりんロードを右に外れ、筑波山へのヒルクライムに向かう。

 

サイクリングロードを少し離れたところにある「サイクルパークつくば」。BMXのコースで、高いスタート台が迫力。このときは親子が練習していた(撮影:光石 達哉)

その途中に「サイクルパークつくば」という施設があった。ここも休憩所的なところかと思って寄ってみたら、かなり本格的なBMXのコースだった。高いスタート台やバンクのついたコーナー、コブが連続するセクションなどがあって迫力がある。廃校の校舎とグラウンドを利用して作られているようだ。

 

細マッチョな若者と勝負できる不動峠

大池公園から筑波山を望む。このあたりから不動峠の上りが始まる(撮影:光石 達哉)

その先、大池公園という池を通り過ぎたところから、筑波山の南にある不動峠への上りが始まる。ヒルクライムの練習コースとしてサイクリストも多い峠だ。道幅は狭く薄暗い道が続くが、道端にカーブの番号や距離を示す標識が立っており、ゴールまであとどれくらいあるのかわかりやすい。

 

不動峠の上り、走りながら撮ったのでちょっとブレているけど、コーナーごとに標識が立っていて、ふもとからのコーナー数や距離がわかる(撮影:光石 達哉)

サイクリストとも何人かすれ違った結果、平坦な廃線跡を走っていた人たちよりも若くて体が引き締まっている人が多いようだ。この上りは距離3.8km、標高差270m、平均勾配7.1%。全体的に6~8%ぐらいの勾配が続くが、最後だけ10%強の厳しめの坂になる。普段は上りをサボり気味なので無事に走れるかなと思ったものの、なんとか峠の頂上にたどり着いた。

 

標高299mの「不動峠」に到達。石碑は令和4年3月と、わずか2年前に造られたもの。左に進むと、表筑波スカイラインに合流する(撮影:光石 達哉)

三叉路に、不動峠の大きな石碑がある。写真を撮るなどして少し休憩。ただ、このあたりが上りの終点ではなく、石碑の左側の道を上っていくと、表筑波スカイラインという道に出る。アップダウンを繰り返す道で、道幅は広くなり、景色も多少開けている。こちらにもコーナー数や距離の標識がある。

 

筑波山の麓から激坂を駆ける

アップダウンの続く表筑波スカイラインを走り、「風返し峠」へ。筑波山の双峰もさっきより近くに見えてきた。左が男体山、右が女体山(撮影:光石 達哉)

北へ約5,7km走ると、四方から道が集まる「風返し峠」に到着。標高は約410m。男体山、女体山と筑波山の2つの峰もよく見える。

 

標高530mの「つつじが丘駐車場」に到着。クルマやロードバイクで上れるのはここまで。筑波山ロープウェイのつつじが丘駅もある(撮影:光石 達哉)

ここも北へ直進すると、さらに上り坂が続く。クネクネと曲がっているややきつめの坂で、視界が開けるところでは筑波山もよく見える。約1.7km走り、標高約530mの「つつじヶ丘駐車場」に到着。ここが筑波山の舗装路で上がれる最も高いポイントと思われる。

登山道の起点のひとつで、女体山の山頂近くまで行けるロープウェイの駅もある。不動峠~風返し峠~つつじヶ丘駐車場まで続く上りは、数年前まで開催されていた「ツール・ド・つくば」というヒルクライムイベントのコースだったようだ。

蒸し暑くなってきて、ボトルも空になっていたので喉はカラカラ。山なので値段高めの自販機のコーラをがぶ飲みして、ひと休みする。

何度も触れてきたが、筑波山は女体山(標高877m)、男体山(同871m)の2つの峰があり、名前のイメージとは逆に女体山の方が少し高いようだ。広い平野にポンとそびえているので、800mを超える高い山だとは見えなかった、それでも、日本百名山の中では最も低い山だそう。

 

筑波山でガマガエルと遭遇

駐車場の一角にある「ガマランド・三井谷観光」。昭和のB級観光地っぽさがあふれている(撮影:光石 達哉)

駐車場の左奥を見ると、巨大なカエルの像が立っている不思議な建物がある。筑波山がガマの油が有名なのは聞いたことはあるし、この建物もTVか雑誌で見たことがあった気がするが、ここにあったのかと発見。これはガマランド・三井谷観光という観光客向けの施設で、食堂やお土産屋、ゲームセンターなどが入っている。ガマ洞窟なんてものもあるらしい。残念ながら、この日は閉まっていた。

 

展望台のそばにも巨大ガマ。鳥居もあって、お参りできるようになっている(撮影:光石 達哉)

展望台からの眺め。遠くに土浦の街並みや霞ヶ浦も見える(撮影:光石 達哉)

ちょっとした展望台もあるようで、せっかくここまで来たので景色も楽しみたいと登ってみる。ビンディングシューズで階段が歩きにくかったが、展望台からは筑波山の周囲が一望でき、遠くに霞ヶ浦も見えた。

次回は筑波山を下って再びりんりんロードを走り、あじさいで有名な雨引観音を目指す。

 

(光石 達哉)

 

今回のルート:①虫掛休憩所―②藤沢休憩所―③新治ふるさとの森―④小田休憩所―⑤サイクルパークつくば―⑥不動峠―⑦風返し峠―⑧つつじが丘駐車場

 

自転車ライター

 

mimi-yori.com

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