【行ったつもりシリーズ】常磐線サイクルトレインで行く筑波山とあじさいの名所(1)自転車と一緒に電車に乗ろう

JR常磐線で自転車をそのまま載せられるサイクルトレインが運航開始。さっそく乗ってみた(撮影:光石 達哉)

読んでいるうちに行ったつもりになれるかもしれない、プチ旅行の紀行文コラム「行ったつもりシリーズ」。

自転車を解体することなく、鉄道の車内にそのまま持ち込むことができるサイクルトレイン。6月からJR常磐線の上野~土浦間で通年運行が始まったため、梅雨の晴れ間にさっそく利用して筑波山やあじさい鑑賞に出かけてみた。第1回は、常磐線サイクルトレインの乗車体験記をお届け。

 

サイクルトレイン拡大中

車内は普通の電車と一緒。ガラガラだったため、ボックスシートに座ってみた(撮影:光石 達哉)

自転車を電車内に持ち込んで運ぶには、「輪行」と呼ばれる方法が一般的。車輪などを外して解体し、輪行袋と呼ばれる専用の袋に入れて、抱えて運ぶことになる。ただ、ロードバイクなどを傷つけないように輪行袋に収納する作業は、慣れていても10~20分かかることもある。自転車の入った輪行袋を駅の構内で抱えて運ぶのも、ちょっと大変だ。

 

その点、サイクルトレインは自転車をそのまま電車内に持ち込めるサービスなので、ハードルが低い。もちろん、すべての鉄道がサイクルトレインとして利用できるわけではなく、2022年度時点では71社141路線(国土交通省ホームページより)で実施されている。

 

国交省から補助金も

改札を出たところにはサイクルトレインをPRする展示も。土浦はサイクリスト
ウエルカムな街だ(撮影:光石 達哉)

サイクルトレインは乗客の少ない路線や時間帯を有効活用することで、観光促進やローカル線活性化といった経済効果もあり、国土交通省も補助金を出すなど支援していて、今後も増えていくことが期待されている。

 

ただ、サイクルトレインは地方の町と町の間の路線で運行されている場合が多い。都内に住んでいると東京から地方への移動手段として利用したいが、そういう路線はまだ数が少ない。

 

これまではJR東日本千葉支社の専用列車B.B,BASE(両国~館山、銚子など千葉県各地、運航日により変更)、西武鉄道(石神井公園~飯能・西武秩父)ぐらいだったが、JR東日本水戸支社の常磐線で2023年10~12月の期間限定実施に続き、2024年6月から通年運行を開始。新たな選択肢が増えたわけだ。

 

サイクルトレインによっては運行日や運行時間の制限、事前予約の要不要、自転車持込料金の要不要があって、さらにそれぞれルールや確認事項があるので、利用するには鉄道会社HPで確認しておく必要がある。

 

ちなみに2023年秋、御岳山ケーブルカーでサイクルトレインを利用したが、事前予約は必要なく、券売機で追加の切符(片道大人600円+自転車260円)を買えば、基本どの便にも乗ることができた。

 

旅立つ前に要チェック

サイクルトレインは上野駅から出発。公園口から乗り込む(撮影:光石 達哉)

常磐線サイクルトレインは、土日のみ1日上下2本ずつ普通列車で運行。発車時刻は上野発土浦行きの下りが午前7時2分発、午前7時53分発、土浦発上野行きの上りが午後5時発、午後5時28分発となっている。土曜の朝に出て1泊して日曜の夕方に帰ってくる計画も立てられるが、今回は6月下旬の梅雨の晴れ間に1日で往復することにした。

 

ネットでの事前予約が必要。追加料金はなく普通運賃(Suikaで1166円)のみで乗れる。ただ1便につき10台しか乗せられず、サービス開始間もないため直前だと予約が埋まっている場合がある。キャンセルは発車直前まで可能であり、天気が悪かったり、体調がよくない時も安心。キャンセル待ちも可能だ。

 

プリントアウトした予約・利用証を自転車につけて目印にする(撮影:光石 達哉)

その他、注意すべき点がいくつかある。予約したらホームページから利用証(PDF)をプリントアウトし、必要事項を記入。これを駅構内や電車内ではフレームなど見えるところに掲げておく。ちょっとアナログな手順だ。

 

また、混雑時は専用の袋に入れなければならない場合もあるため、念のため輪行袋を持って行かないといけない。土浦以外の途中の駅で下車したり、他の路線に乗り換えたりする場合も輪行袋に収納する必要がある。

 

上野駅での”歩き方”

いつもと同じようにSuikaをタッチして、自転車をそのまま自動改札を通す。今までない不思議な感覚(撮影:光石 達哉)

以上を確認して、時間的に余裕のある上野発午前7時53分、土浦発午後5時28分の便を予約。当日、上野駅に向かった。上野まで輪行したら、その後でサイクルトレインに乗るありがたみがないため、世田谷区の自宅から約17kmを自走。乗り遅れないようにと早めに出て急いだら、発車時刻の30~40分前に着いてしまった。

 

上野駅では、サイクルトレインの利用者は公園口改札しか使えないことになっている。駅前広場に着くと、すでにサイクリストが数人待っていた。駅に入るには特に駅員のチェックはなく、自転車を裸のまま自動改札を通す。ちょっと不思議な感じだ。

 

構内には自転車置き場が1カ所ある。売店やトイレに寄りたいときは、ここを利用(撮影:光石 達哉)

常磐線のホーム(9・10番線)に降りる階段の横に、自転車の一時置きスペースがある。ここに停めて構内のコンビニで少し買い物した後、自転車を担いで階段を降りる。

 

自転車を載せられるのは、端っこの14、15号車(撮影:光石 達哉)

サイクルトレインとして利用できるのは15両編成の14、15号車のみ。15号車を予約していたので、ホームの端っこまで移動する。自転車は各車両5台、1便あたり10台が定員(?)だ。車内は普通の車両とまったく同じで、自転車固定用の器具などはない。ドアの前や車いすスペースを避けて、自転車を置くことになる。

 

興味津々の乗客から質問される

土浦駅は改札の中と外にもサイクルラックがあるので、便利(撮影:光石 達哉)

乗ったのはボックス席のある車両だった。ほかの乗客はお父さんと小学生ぐらいの男の子の2人組を含むサイクリストに加え、一般の乗客は2、3人ほどで車内は余裕がある。座席は自由なので、せっかくだからボックス席に座った。混んできたら移動しようかなと思っていたが、途中の駅でも乗客が数人乗り降りしたぐらいだった。

 

土浦駅に到着。他のサイクリストと一緒にホームを歩いて改札を目指す(撮影:光石 達哉)

1時間15分の電車の旅で、土浦駅に到着。降車時、近くに座っていたおじさんから「自転車を載せるのにいくらかかるんですか?」と聞かれたりした。やはり始まったばかりのサイクルトレインが珍しいようだ。

 

期間限定でもらえるサイクルトレインのノベルティ。ポーチやステッカー、駅の施設で使えるクーポンなど(撮影:光石 達哉)

ノベルティの引き換えは駅直結の「星野リゾート BEB5 土浦」のフロントで。自転車を客室内に持ち込めるサイクリストフレンドリーなホテルだ(撮影:光石 達哉)

土浦駅で改札を出るときは有人改札を通り、スマホで予約メールを見せる。期間限定のノベルティ引き換え券をもらったので、駅直結のホテルで交換する。使わない荷物をコインロッカーに預け、さあ出発だ。

 

(光石 達哉)

 

 

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