都道府県間の移動は自粛が要請され、まだまだ自由に旅行できない日々が続く中、過去にサイクリングで訪れたちょっとマイナーだけど個人的なお気に入りスポットを紹介して、旅気分を味わってもらおうという企画。今回は、前回の南アルプス街道の旅のスピンオフとして山梨県の身延山を巡る旅をご案内する。
壮大なスケールの日蓮宗総本山・身延山
実は南アルプス街道の旅は1泊2日だったのだが、1日目はその南にある身延山周辺をサイクリングしていた。身延山は鎌倉時代に日蓮が開いた日蓮宗の総本山で、山全体が身延山久遠寺というひとつの寺になっており、かなりスケールが大きい。
ふもとの参道は温泉街にもなっていて、観光地のようなたたずまいでもある。さらに奥に進み、三門と呼ばれる巨大な門から先が本格的なお寺のエリア。参拝者は石段を上がっていくが、僕はロードバイクで行けるところまで行ってみようと舗装された脇道を登っていく。しかし、途中から自分の脚じゃ太刀打ちできないほどの”激坂”になり、やむなく押して歩くことに。上がった先に駐車場があったので、その脇に自転車をとめる。
神秘的な白装束の隊列
ここからちょっとだけ階段を上がると、広大な境内に出る。本堂、五重塔など大きくて立派な建物がいくつも並んでいる。夏なので咲いているところは見られなかったが、大きなしだれ桜の木も有名だという。
この日は、白装束をまとった信徒のみなさんが列をなして参拝されていた。ちょうど僕がいたタイミングで夕立のような通り雨が降り、雨もやの中を進む白装束の隊列はなかなか神秘的だった。正直、身延山について何の知識もなく立ち寄ったが、壮麗さにちょっと圧倒されてしまった。
ちなみに身延山自体はこの辺りがまだ中腹で、さらに先はロープウェーで上がって山頂付近の奥之院をお参りできるようだ。
底の抜けた柄杓がまつられた小さな祠
身延山を後にして、細い山道を走っていると底の抜けた柄杓(ひしゃく)がたくさんまつられている小さな祠があった。あらためて調べてみると「産宮神」、通称「さんごじさん」という安産の神様の祠のようだ。
昔、この地に難産に苦しんでいた女性がいたが、旅の僧侶が柄杓を用意させ、お経を唱えて底を抜くと元気な男の子が生まれた逸話があるという。今でも、安産祈願で底の抜けた柄杓を奉納する人が絶えないそうだ。
いつものように行き当たりばったりの旅だが、思いがけず興味をそそられるヒト・コト・モノとの出会いは楽しいものだ。
(光石 達哉)