【エンタメ】「行ったつもりシリーズ」=たどり着いたら行き止まり!? 南アルプス街道を往く

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事実上の終点のトンネルに到着。標高は800mぐらい(写真:光石達哉)

なかなか遠出できない今、過去にサイクリングで訪れたちょっとマイナーだけど、個人的なお気に入りスポットを紹介し、旅気分を味わってもらう企画の第4弾。今回はちょっとメジャーな富士山を望む絶景スポットにお出かけ。

 

 

 

秘境感満載の南アルプス街道

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山梨県の県道38号が通称「南アルプス街道」。右側に向かうと早川町へ(撮影:光石達哉)

南アルプス街道と聞くと、爽やかな高原を心地よい風が吹き抜けるような光景が思い浮かぶかもしれないが、実際は秘境ムード漂う違う意味で味わい深いところだった。


街道の起点は富士山の西、富士川沿いの「道の駅みのぶ」。このあたりが富士川とその支流である早川の合流点で、この早川に沿って街道は続く。最初は西へ、途中から北へ向かい、L字型に伸びている道だ。

スタートしてしばらくすると、早川町に入る。ここは地方自治体の「町」の中では、日本一人口が少ないと言われている。町のHPによると、2020年5月1日時点の人口は1,024人だそうだ。というわけで、今回の旅の大半はこの早川町内を走ることになる。  

序盤の町役場周辺はちょっとした集落もあるが、その後は民家もまばらで飲食店や商店もほとんどない。ちなみに、コンビニは町内には一軒もないそうだ。川沿いの渓谷なので、道の左右を山に囲まれちょっと薄暗い雰囲気もする。とはいえ、人口が少ないということはクルマも少ないわけで、自転車にとっては走りやすい。早川の上流に向かつれて道は緩やかに上っていく。行ったのは5年前の猛暑の夏で、スタート地点はまだ暑かったが、徐々に標高を稼ぐと空気も涼しくなっていく。

大断層の一部がむき出している「新倉の糸魚川-静岡構造線」

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「新倉の糸魚川-静岡構造線」。本州を東西にわける大断層だが、5年前の僕は断層そのものは見ずに駐車場の写真だけ撮って通り過ぎたようだ…(撮影:光石達哉)

途中、いくつか続くトンネルの間に「新倉の糸魚川-静岡構造線」という看板があった。本州を東西に分ける延長約250kmの大断層が一部むき出しになっているそうで、国指定天然記念物になっているという。北アメリカプレートとユーラシアプレートの境目とも言われているが、じっくり見学することもなく先へ進む。

 

孝謙天皇の伝説が残る奈良田温泉

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奈良田温泉のバス停。自ら「秘境」って言っているところが、すがすがしい。ここも温泉には入らずに通り過ぎただけ(撮影:光石達哉)

道中には、小さな温泉郷もいくつかある。その中でも、スタート地点から40km弱にある奈良田温泉が一番奥にあるところだ。ここは奈良時代、孝謙天皇が湯治に訪れたという伝説がある。孝謙天皇とは、東大寺を建立した聖武天皇の娘、つまり女性天皇で、のちに二度即位する重祚(ちょうそ)を行って称徳天皇となった。僧・道鏡との恋愛で政局を混乱に招いたエピソードもある。そんな孝謙天皇が8年間この地で過ごしたというが、奈良時代にこんな山深いところまで来るとは、当時としてはかなりの大冒険だったろう。

 

サイクリストにとってはたまらない道

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奈良田温泉近くのダム湖(撮影:光石達哉)

この奈良田温泉のそばに、水力発電用のダム湖である奈良田湖がある。さらにその先に進むとトンネルがあり、管理しているおじさんに「この先は行けないよ」と止められる。このトンネルは夏場はマイカー規制(バス、タクシーは通れる)、冬場は全面規制となっており、それより北の南アルプス市方面には行けない事実上の行き止まりになっているのだ。

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ゲートが閉まると「冬季閉鎖中」の看板。おそらくトンネルの先は、もっと山深いのだろう(撮影:光石達哉)

加えて、南アルプス街道は途中で左右に枝分かれする道も山深い峠道しかないので、延々40km近く続く袋小路のような状態になっている。こうした地理的条件が人里離れた秘境感を強めているのだ。そんなわけで、温泉客や南アルプスの登山客、物好きなバイク乗りや自転車乗りといった目的を持った人じゃないと、なかなか外部から訪れる機会もない道でもあるのだ。

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帰る途中、街道沿いの数少ない飲食店のひとつ「そば処 アルプス」でとろろ蕎麦をいただく。とあるベテラン俳優さんが来店されているようで、写真が飾ってあったのが印象に残っている(撮影:光石達哉)

そうはいっても、サイクリストにとっては走りやすいことこの上ないし、前回は温泉なども堪能していないので、また行ってみたいなあとたびたび思い返す道なのであった。
(光石 達哉)