【雑学】自然観察指導員の徒然草=これであなたも花博士 「アヤメ」の見分け方

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東京・明治神宮内苑のハナショウブの花の群生。2006年6月19日(撮影:安藤伸良)
自然観察指導員とは、自然を守る登録制ボランティアのこと。「自然観察からはじまる自然保護」を合言葉に、日本各地で地域に根ざした自然観察会を開き、自然を守るための仲間づくりに励んでいる。

日本自然保護協会が主催する指導員講習会を受講、修了して登録申請すれば、誰でも登録可能。企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、63歳で登録し、指導歴13年を超えたシニア指導員の自然コラムを紹介する。

つれづれなるままに、今回は梅雨時の自然観察がもっと楽しくなるように、アヤメの仲間の見分け方を伝授。ポイントは「咲く場所」と「花弁の模様」です。
 
 
 

アヤメ、ハナショウブ、カキツバタは「アヤメ属」

アジサイとともに、梅雨の時期を彩る草花にアヤメの仲間の花がある。

名所は各地に多数あるが、東京では明治神宮内苑、水元公園、堀切菖蒲園などが有名。首都圏の外出自粛が明けて少しずつ足を運ぶ人も増えてくるだろう。

アヤメの仲間、つまりは同じアヤメ科アヤメ属の花である「アヤメ」「ハナショウブ」「カキツバタ」はよく似ているが、その見分け方をご存じだろうか。筆者は、自然観察指導員になったばかりの10数年前に、先輩の指導員から教わった。植物に詳しくない人でもすぐに誰かに教えたくなる、簡単な見分け方について触れてみたい。

アヤメには網目模様がある

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東京・目黒自然教育園に咲いていたアヤメの花。2019年4月27日(撮影:安藤伸良)

 

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東京・芝公園のジャーマンアイリスの花。独特の雰囲気を醸している。2012年5月16日(撮影:安藤伸良)

アヤメは、やや乾いた草原に生える。開花時期は5月上旬で、花弁に相当する外花被片(がいかひへん)の中央基部に網目状の模様があるのが最大の特徴となっている。

最近よく見かけるようになった「ジャーマンアイリス」は、アヤメをドイツやフランスで品種改良して作出された園芸品種で、「虹の花」とも呼ばれて花色が豊富。近年は育種が進んでフリルやフリンジが入った品種も多く育てられている。

 

黄色の斑紋があればハナショウブ

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東京・神代植物公園のハナショウブの花。花びらの黄色部分が目立つ。2011年6月10日(撮影:安藤伸良)

 

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神奈川・箱根湿生花園に咲いていたノハナショウブの花。2013年7月1日(撮影:安藤伸良)

ハナショウブは、野生のノハナショウブを品種改良したもので、湿地や湿り気のある草地に生える。開花時期は5月中旬から6月上旬。外花被片の中央基部には黄色の細長い斑紋がある。

ノハナショウブは万葉集に「はなかつみ」の名前で登場する。

カキツバタには白く細長い斑紋

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東京・国立科学博物館附属自然教育園のカキツバタの花。2018年4月30日(撮影:安藤伸良)

カキツバタは、万葉集にも「かきつはた」の名前で出てくる。水湿地に生え、外花被片の中央基部には白く細長い斑紋がある。

外国勢は個性派ぞろい

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東京・芝公園で見つけたシャガの花。2012年4月18日(撮影:安藤伸良)

アヤメ科アヤメ属の花には、他にも「シャガ」がある。その昔、中国から渡来したと言われている。花の時期はアヤメなどに比べて早く、4月ごろには咲き始める。タネはできず、根を伸ばすことで増えている。

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同属なのに敵? 東京・善福寺公園に咲いていたキショウブの花。2017年7月6日 (撮影:安藤伸良)

「キショウブ」は、明治時代に欧州から渡来したものだが、繁殖力が強く全国各地に広まっている。黄色い花できれいではあるが、同属のカキツバタやハナショウブを駆逐してしまうことで問題になっている。

なお、5月の端午の節句に風呂に葉を入れると芳香のある「ショウブ」はサトイモ科ショウブ属の花で、ハナショウブとは全くの別種。これも誰かに教えたくなるのでは?
(安藤 伸良)