東京オリンピック・パラリンピックまで、あと1年を切った。オリパラともに、開会式の華やかな演出は見どころの1つ。
オリ・パラの開閉会式について野村萬斎が総合演出を担当する中、ひそかにどこまで続くのか注目したい演出がある。12年ロンドン五輪開会式から続く演出シリーズ、「瞬間移動芸」だ。
※記事再掲
エリザベス女王がまさかの参加
12年ロンドン五輪開会式では、まさかの人物が「瞬間移動芸」に参加した。当時御年86歳、英国王室のエリザベス女王だ。
同年7月27日(現地=日本時間28日)の開会式で流されたVTR内で、その“ロイヤルコント”が行われた。
まずは、映画「007」の主役ジェームズ・ボンドを演じる俳優ダニエル・クレイグが登場。タキシード姿でいわゆる“ロンドンタクシー”でバッキンガム宮殿を訪れた。
驚くべきは、宮殿も本物なら、謁見したエリザベス女王も本人だった。ボンドは女王を屋外へエスコートし、英国民にはおなじみの飼い犬・コーギー2匹が見送る中、英国旗をあしらったヘリコプターに乗り込んだ。
女王がヘリからスカイダイビング
英国を体現する2人を乗せたヘリコプターは一路、ロンドン郊外のオリンピック・スタジアムへ向かった。道々では国民が国旗を振り、チャーチル元首相の銅像もにわかに動き出して手を振った。スタジアム上空には映像と同時進行で、本物のヘリコプターが現れた。スタジアムは大盛り上がりとなった。
映像では、女王はパラシュートを背にヘリからスカイダイビング。ボンドも後から続き、2人の英国旗模様のパラシュートが開いた瞬間、映画「007」のテーマ曲が流れた。実際はスタントマンが降下していたが、女王はスタジアムの貴賓席に映像と同じピンク色のドレスで現れ、“瞬間移動”を成し遂げた。
総合演出は、08年の英国映画でアカデミー賞8部門を獲得した「スラムドッグ$ミリオネア」のダニー・ボイル監督が総合演出を担当。開かれた王室を標ぼうするエリザベス女王にとって、世界に驚きを与えつつ称賛を受ける心憎い演出となった。
OLYMPIC CHANNEL公式=12年ロンドン開会式の当該VTR
リオ五輪閉会式では“安倍マリオ”
その4年後、16年8月21日(現地=日本時間22日)に行われたリオ五輪閉会式では、安倍晋三首相がゲームキャラクターの「スーパーマリオ」に扮した。
会場の「エスタジオ・ド・マラカナン」で流された次回五輪紹介VTR内で、安倍首相は多忙な業務をこなしながら都内を走る車中でマリオに変身。「3、2、1」とカウントダウン終了と同時に、日本から地球の裏側にあたるブラジルへ瞬間的に移動したというテイで安倍首相本人が舞台に出現した。
世界に認知されている日本企業のゲームキャラクターを起用しつつ、さらにエリザベス女王ばりに一国の首相が演出に参加するという意外性が世界を驚かせた。
リオパラ開会式では会長が瞬間移動
さらに、同年9月7日(現地=日本時間に行われたリオパラリンピック開会式では、国際パラリンピック連盟の会長(当時)が瞬間移動シリーズに出演した。五輪と同じ「エスタジオ・ド・マラカナン」ことマラカナン競技場で行われ、オープニング映像でいきなりシリーズ第3弾が始まった。
車いすユーザーで当時会長のフィリップ・クレイバン卿がある朝、ブラジルに出発する荷づくりからスタート。空港では飛行機が軒並みキャンセルになり、唯一運行していたブラジル北部の都市・ベレン行きでブラジルに降り立った。
道路の看板「リオ・デ・ジャネイロまで3125キロ」を横目に、港町を駆け、森を抜け、ついにはリオを象徴する石像「コルコバードのキリスト像」まで到達。ホッと一息つく間もなく、開会式が行われるマラカナン競技場へ車いすで駆け込み、開会式に登場したーー
Paralympic Games公式=16年リオパラリンピック開会式のライブ映像
果たして20年東京では
これらの瞬間移動芸は、いずれも会場は拍手喝采で盛り上がった。東京オリパラでは果たしてどんな瞬間移動芸が飛び出すのか。大がかりなマスゲームもさることながら、小粋な演出にも注目したいところだ。