読んでいるうちに行ったつもりになれるかもしれない、プチ旅行の紀行文コラム「行ったつもりシリーズ」。
5月はサイクリングに最適な季節ということで、今回は新緑の東京・武蔵野エリアでデジタルスタンプラリーに挑戦し、玉川上水周辺の20のポイントを回る。
前編では都立小金井公園内の「江戸東京たてもの園」まで11のスタンプをゲットし、後編はその続きから。
- 都内最長の直線道路 「多摩湖自転車歩行者道」を進む
- 順調にスタンプゲット!と思いきや…チェーンに緊急事態発生
- 小平市に点在する「オープンガーデン」とは?
- ゴール地点に到着も→せっかく集めたスタンプが…
都内最長の直線道路 「多摩湖自転車歩行者道」を進む
武蔵野市、三鷹市、小金井市、小平市、東大和市を巡る「第18回森の地図スタンプラリー」。小金井公園を出て北へ向かうと、南東から北西に走る「多摩湖自転車歩行者道」にぶつかる。
多摩湖から武蔵境の境浄水場まで伸びる水道管の上に作られた道で、「都立狭山・境緑道」とも呼ばれる。直線部分は全長約10.5kmで、都内最長の直線道路とのことだ。
自転車道として整備されていると言っても、ロードバイクでシャーッと気持ちよく走れる感じではなく、地元の人たちがママチャリでのんびり走っていたり、車止めも多かったりと生活のための道路という雰囲気。
デジタルスタンプは江戸東京たてもの園から約1.5km走った「グリーンロード花南公園」や「馬の背」と呼ばれる堤防のように高くなっている付近でゲットできる。
そのまま多摩湖自転車歩行者道を北西に約2km走り、「小平ふるさと村」へ。古民家などが移築・復元された小さな公園で、中ではベーゴマ教室が開かれていたりと平和な時間が流れている。
ここで紙のスタンプラリーの用紙もようやく見つけたので、一部もらっておく。ちなみに、リアルのスタンプが押せるポイントは20カ所中8カ所となっている。
さらに自転車道を少し進んで、新小金井街道にぶつかったら約1.5km南下し、「小平市鈴木遺跡資料館」へ。
ここは街道を挟んだ向かいにある小平市立鈴木小学校の建設工事のときに発見された、約1万6000年前~3万6000年前の旧石器時代後期の遺跡からの出土品などが展示されている。
外から見たらただのプレハブの建物なので、ちょっとだけ中を見学。石器だけでなく、当時のバーベキューの跡、漢字の書かれた奈良時代の器なども展示されていた。
順調にスタンプゲット!と思いきや…チェーンに緊急事態発生
今度は玉川上水と並行に西へ約2.5km進み、「平櫛田中彫刻美術館」へ。
自分がこの辺りに住んでいたときは「ひらぐしたなか」って何だ? と思っていたが、本当は「ひらぐしでんちゅう」と読む彫刻家で、100歳を超えても作品を作っていたことでも有名。ここは晩年住んでいた自宅跡に美術館が併設されているという。
再び玉川上水に沿って西へ約1,5km。府中街道にぶつかったら、ちょっと左手にある「小平市ふれあい 下水道館」が次のポイント。日本で唯一、現役で使われている下水道管の中を見学できる施設だそうだ。
再び次のポイントを目指して玉川上水沿いを西に漕ぎ出したとき、急にペダルの踏みごたえがなくなった。
なんと、チェーンが切れてしまったのだ。
滅多にないことだがこういうトラブルに備えて工具も持っていたので、なんとか修理して走り出す。チェーントラブルについては、またの機会に詳しく書きたいと思う。
小平市に点在する「オープンガーデン」とは?
気を取り直して約3km西に走り、立川通りにぶつかったところで右折して「森田オープンガーデン」へ。
小平市では個人の庭を一般開放するオープンガーデンが盛んだそうで、この森田オープンガーデンは約1000坪の広さがある英国風の庭園。ちょっとした絵本の中のような景色で、オーナーさんとご近所さんらしき女性たちがお茶をしていたりする。
オープンガーデンと言われても、よそさまのお宅の庭に入っていくのはちょっとためらわれるので、2、3枚写真を撮って立ち去る。
玉川上水に沿ってクネクネと約1km西へ。次のポイントは「こもれびの足湯」で、その名の通り足湯に入れる施設。
温泉ではなく、地下250mからくみ上げた井戸水をごみ焼却炉の熱で温めているそうだ。この日はちょっと暖かかったが、それでも10数人が足湯を利用していた。
ここから西武拝島線に沿って北東へ約1km。東大和駅のそばの「東京都薬用植物園」へ。昭和21年に開園した植物園で、世界中の薬草、珍しい植物を見学できる。
入口そばの温室の中はやはり夏のように暑く、熱帯ぽい植物が栽培されていた。
ゴール地点に到着も→せっかく集めたスタンプが…
次は東大和駅の北側を走る桜街道を通って、西へ約1.5km。「都立東大和南公園」が最後のポイントだ。
スタンプは園内のサービスセンター付近でゲットできる。この公園には昨年、幻の東京五輪聖火リレーコースを走る企画でも訪れた「旧日立航空機 立川工場変電所」がある。1年前は中に入れなかったが、現在は一般公開されていて内部が見学可能だった。
ここは、かつて軍用機のエンジン工場に高圧線からの電気の電圧を下げて送っていた変電所。太平洋戦争末期には米軍の空襲を受け、工場は8割方壊滅したが、この鉄筋コンクリート製の変電所は無事だった。
それでも、外壁は機銃掃射や爆弾の破片の痕が生々しい。戦後も変電所は使われ、編み物機の製造工場などに電気を送り続け、平成5(1993)年まで操業を続けていたという。
中に入るとガイドのおじさんがすぐ隣の部屋に案内してくれて、銃弾が貫通した痕を見せてくれた。かなり分厚いコンクリートだが、それすらぶち抜くぐらいの威力だったのだろう。
その他にも変電設備や当時の写真などが展示されている。世界情勢を考えると、当時ここで働いていた人が感じていた恐怖を、今も世界のどこかで誰かが感じているんだなということを想像させられる。
というわけで、全20個のデジタルスタンプをコンプリート。30kmちょっと走って、約3時間と長い距離のサイクリングに慣れてない人でも十分に楽しめるだろう。
デジタルスタンプは3つ集めるとスマホ用の壁紙、8つ集めると2000円相当の地域のお土産詰め合わせ抽選権などと交換できる。
しかしこの後、スマホの調子悪くなって修理に出してフォーマットしてしまい、アプリのアカウントを作ってなかったのでデータを引き継げず、集めたスタンプもすべて消えてしまった。
まあ、いろんなところをサイクリングして回れただけで十分楽しかったので、今回はそれでよしとしよう。このスタンプラリーは6月12日(日)まで開催しているので、ご興味のある方は挑戦してみては。
(光石 達哉)