【エンタメ】「行ったつもりシリーズ」=浮世絵の江戸を歩いてみた~深川万年橋

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(出典:富嶽三十六景「深川万年橋下」葛飾北斎 メトロポリタン美術館 パブリックドメイン)
2020年のゴールデンウイークは不要不急の外出自粛が求められ、季節がいいのに散歩すら楽しめなかった人もいるのでは。

筆者は、都内の自宅から片道30~40分、遠くても1時間で到着できる浮世絵スポットまでのウオーキングが運動習慣だった。令和の東京を、江戸時代の風景と見比べているが、最近は外出を控え、浮世絵本を鑑賞するだけになっている。

そこで、散歩好きの人のために浮世絵スポットのプチ情報を紹介。近くの人は運動不足解消の散歩に、遠方の人はコロナウイルス感染拡大が収まった後の旅の参考にしてみては。

今回は、葛飾北斎と歌川広重がともに描いた「深川万年橋」。
 
 

 富士山も亀も見えなかった

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東京・江東区にある万年橋。橋の上から隅田川を眺めたが、浮世絵に描かれている富士山は見えない。亀もいない。隅田川にかかる青い橋は清洲橋。(撮影:砂田友美)

富士山はまったく見えない。北斎が描いた富嶽三十六景「深川万年橋下」(冒頭写真)も、広重の名所江戸百景「深川万年橋」も、隅田川を挟んで富士山がのぞめる構図になっているが、現在はその方角にビルやマンションがずらり。代わりに、青く山型の清洲橋を眺めることができる。ちなみに、橋の上から川をのぞきこんでみたが、残念ながら広重の浮世絵でぶら下がっている「亀は万年」の亀も見当たらなかった。

 

かつては木製アーチ 今は緑の鉄骨製

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隅田川サイドから見た万年橋。江戸時代は木製のアーチ型だったが、今は緑色の鉄骨製。(撮影:砂田俊雄)

万年橋は、江戸の深川を流れる小名木川が隅田川に合流する地点にかかる橋。小名木川は、江戸に拠点を置いた徳川家康が江戸城建設に先立って掘割を実施したところといい、行徳の塩をはじめとする各地からの物資を江戸城下に輸送するための大動脈としての役割を担っていた。

現在は緑色の鉄骨でできた短い橋だが、北斎は木製で美しいアーチ型の橋を描いた。この橋のたもとには幕府の番所があって積み荷の検査をしていたために舟の出入りが多く、高い荷を積んでいても通行の邪魔にならないよう、この形状だったのではないかといわれている。画中では往来する人が多いことから、江戸時代もにぎわっていた場所だったことがわかる。

万年VS永代?

「万年橋」という名前の由来は、近くにある「永代橋」に対抗したという説があるらしい。意外と単純だな、と思いながら、北斎の「深川万年橋」と似た構図で写真を撮るスポットを探したのだが、橋の東側の川沿いには降りられないようになっていた。橋の西側は両岸とも遊歩道として整備されていて、隅田川沿いのウオーキングを楽しめるようになっている。

大相撲ファンにはたまらない

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(出典:歌川国照 メトロポリタン美術館 パブリックドメイン)

この深川エリアは、ちょっとした相撲タウンでもある。初めて江戸幕府公認の相撲が執り行われたのが富岡八幡宮だったため、同じ江東区のこの辺りには相撲に縁のある寺院や相撲部屋が数多くある。万年橋から徒歩5分圏内に、尾車部屋、高田川部屋、錣山部屋、大嶽部屋と、4つの部屋を発見。大嶽部屋のすぐ近く、万年橋の南側には、元大嶽親方の貴闘力がプロデュースした焼肉屋「ドラゴ横綱通り店」も見つけ、なぜかニヤニヤしながら再び万年橋を北側に渡った。

 

芭蕉が暮らした江戸の町

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出典:江戸名所図会 7巻(国立国会図書館デジタルコレクション)

橋から北へ歩くと、すぐ左手に芭蕉稲荷神社がある。1917(大正6)年に地元の人たちの手でまつられたという神社の境内には、芭蕉庵跡の碑や芭蕉の句碑がある。この辺りに芭蕉の住んだ「芭蕉庵」があったとされ、東京都の旧跡になっている。庵の土地は、芭蕉の古くからの門人だった杉山杉風(さんぷう)の所有地で、芭蕉に提供されていた。芭蕉は、1680(延宝8)年に移り住んでから、51歳で亡くなる1694(元禄7)年まで、この地から全国の旅に出たという。

この神社から、万年橋通りをさらに北へ進むと、左手に「江東区芭蕉記念館」がドンと構えている。恥ずかしながら、東京で暮らしていながらこの記念館を知らなかった。現在は臨時休館しているが、外出自粛が解消されたら、江戸の空気を感じるために訪れてみたい。
(mimiyori編集部)