【オリパラ】世界各国の“五輪虎の穴”~米国編

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(写真:photoAC)※写真はイメージ
五輪の日本代表らを鍛える「味の素ナショナルトレーニングセンター」が、20年6月から順次、営業や業務を再開している。新型コロナウイルス感染拡大の影響で練習拠点が閉鎖に追い込まれたのは日本も世界も同じ。今夏に開催される予定だった20年東京大会に出場していたであろう、日本のライバルたちが鍛錬してきた各国の“虎の穴”を紹介する。
 

米国の総本山「コロラド・スプリングス」

ロシア、カナダに次ぐ世界第3位の国土(983万平方キロメートル)を誇る米国は、全国にナショナルトレーニングセンターが4カ所、強化拠点が11カ所ある。その総本山といえるのが、コロラド州のコロラド・スプリングス市にある「アメリカ・オリンピック・パラリンピック・トレーニングセンター(U.S. Olympic & Paralympic Training Center)」。自然豊かな小さな街だが、全米からトップアスリートや金の卵たちが集まってくる。

スポーツ組織が勢揃いする五輪シティ

コロラド・スプリングスは米国オリンピック委員会(USOC)本部に加え、20のナショナルオリンピック運営組織、さらに50のナショナルスポーツ組織が存在する“オリンピック・シティ”。「米国オリンピック・コンプレックス」という名称の区画があり、トップアスリートたちの一大トレーニング拠点となっている。

バドミントン、ボクシング、自転車競技、柔道、射撃、水泳、テコンドー、トライアスロン、重量挙げ競技の複合本部に加え、12競技(アーチェリー、バスケ、フェンシング、フィールドホッケー、フィギュアスケート、アイスホッケー、ラケットボール、卓球、ハンドボール、バレーボール、水球、レスリング)の独立した本部も同地域内にある。

米国空軍拠点に本部移設

米国空軍の拠点だったコロラド・スプリングスに、USOCが本部をニューヨークから移設したのが1978年。同地をオリンピック・シティとする目的で、前年77年には全米初のナショナルトレーニングセンターが、約14万平方メートル(東京ドーム約3個分)の広さの土地に建設された。96年10月と97年4月には、2000万ドル(約21億円)以上の予算をかけてスポーツ医療・科学センターと食堂と居住スペースを兼ね備えたアスリートセンターを新たに建設。550人以上のコーチと選手に衣食住に関連したサービスを同時に提供できる体制が整った。

年間1万アスリートが利用

同地域は標高約1840メートルに位置し、1年の平均日照が250日という理想的なトレーニング環境にある。現在では、米国のオリパラ選手や選手候補生が毎年1万人以上もコロラド・スプリングスのトレーニングセンターで練習する。その多くが市内に滞在し、512床あるトレセン内の寮にも居住しながら訓練をしている選手が多い。施設内のカフェテリアでは、年間34万食が提供されている。

また、オリパラ関係者、従事者ら約2100人がコロラド・スプリングスで勤務。例年13万人の観光客がトレセンの見学ツアーに訪れる。

プール、ジムともに最先端設備

施設内には、水上と水中にカメラを備え付け、動画を取り入れた練習もできる50m×25mのプールに加え、トレセンの中で最初に建設された複合体育館で、5500平方メートルの広さに6つの体育館あるいはジムがある「スポーツセンターⅠ」、93年10月にオープンし、4370平方メートル以上の敷地にトレーニング施設が並ぶ「スポーツセンターⅡ」がある。

スポーツセンターⅠでは体操、ボクシング、柔道などオリンピック、パラリンピックの14競技の練習が可能。スポーツセンターⅡでも9競技が行え、スポンサー各社から提供された最先端技術のトレーニング機器や装置が配備された24時間使用可能のジムも併設されている。

超巨大な室内射撃施設は圧巻

圧巻は、「西半球最大」や「世界で3番目の大きさ」といわれる室内射撃施設。1985年に設立された同施設には、ライフルとピストル用の奥行50メートルの射撃レーンが29列、ラオウッドファイアーピストルと女子競技用の奥行き25メートルのレーンが8列、ランニングターゲット射撃用の10メートルレーンが4列、そしてエアライフル、エアピストル用の奥行10メートルレーンがなんと72列もある。

全米に医療ネットワーク

「スポーツメディスン・リカバリールーム」と呼ばれる施設を備えた医療体制も世界トップクラスといえる。

「メディスンルーム」では、けがや病気の処置を行うマルチ治療のベッド、内科、外科、眼科、歯科の処置室、超音波室、レントゲン・MRI室、リハビリ用のトレーニングルーム、テーピングテーブル等が完備。ここで得られた診察や検査の結果は、USOCとネットワークをもつ全米の医療機関と共有され、アスリートが遠征などでトレセンを離れた際のけがや病気の場合に、一貫性のある処置とリハビリを行うことができる。

リハビリについても、スタッフは極力機器を使用したリハビリプログラムを提供しない方針にある。アスリートが遠征中にも一貫したリハビリテーションプログラムが継続できるようにとの配慮からという。
 
 

疲労回復中はコーチ入室厳禁

「リカバリールーム」には、アスリートが毎日のトレーニングの疲労回復を目的として訪れる。筋疲労回復の機器、セラピューティックマッサージ室、栄養コンサルティングルーム、ドライおよびスチームサウナ、冷水と温水の浴槽、さらに流水プールが完備されている。アスリートが肉体的にも精神的にも疲労回復を図る場所とすることから、アスリートが疲労回復処置を受けている間のコーチの立ち入りは原則として禁止されている。
(mimiyori編集部)

 

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