【連載「生きる理由」71】柔道金メダリスト・内柴正人氏 「意外な特技の話」②

休日は実家に戻ることが多い内柴正人氏(写真:本人提供)

2004年アテネ、08年北京五輪柔道男子66キロ級を連覇した内柴正人氏は現在、熊本県内の温浴施設でマネジャーを務めている。18年からキルギス共和国の柔道総監督に就任し、19年秋に帰国した後は柔術と柔道の練習をしながら働く、いち社会人となった。

これまで、彼はどんな日々を過ごしてきたのか。内柴氏本人がつづる心象風景のコラム連載、今回は「意外な特技の話」②。

小学生時代から柔道で下宿生活を送ってきたことで、身についた特技がある。
まるで自衛隊ばりのベッドメイキングだ。
第2回は上手になった理由、そして柔道の「組手」に思いをはせた。

 

 

 

布の扱いが上手な理由は

小学生の頃から中学生、高校、大学生と長年にわたって寮生活をする中で身についたからか、ベッドメイキングは上手です。

シーツは布。
道着は布。
もしかしたら、長年道着をつかんだりつかまれたり、つかまれるのが嫌で相手に切られたり、自分が切ってしまったり。
布の扱いがうまい理由は、組手の中で布を触ってきたからだ、ともいえるかもしれません。

 

組手は勝負のすべてを左右する

現役時代に着ていた柔道衣(撮影:丸井 乙生)

組手。
組手とは、柔道において勝負のすべてを左右する。

先ほど書いた通り、相手は自分が不利な組手を嫌がって切る。
「切ってしまったり」と書いた通り、僕は基本、組手を切ることは許されていませんでした。
(絶対に切らなければならないところはバンバン切るけれど)

 

これね、ほとんどの人が切る。意地でも切る。
そうして自分だけが好きなところで組もうする。当たり前の話でありますが。

組手の意識を持たされた時期は大学生の頃、斉藤仁先生に指導されるようになってからです。

 

斉藤仁先生から「離すな」をすり込まれた

「てめえ、離してんじゃねえぞ」
「コノヤロウ」

 

けんか四つ(自分が左組み、相手が右組み)の場合、引き手を何気なく離してしまう。
相四つ(左対左)、これは切ったもん勝ち。

自分がどんなに組まされていても、相手がいて成立する競技。
相手が切るから自分が離してしまうものなのです。

それを先生は「組め」と言う。


(いやいや、相手が切るし)


これが切らせないで組ませることが技術だ、ということは出来るようになって初めて分かる。

持ったものを簡単に離さない。絶対に離さない。
その感覚を身につけるだけで、勝率がぐんと跳ね上がります。

 

「組む」「つかみ」「離さない」は技術

〝師匠〟に学びながら金魚を育てて2年目。水槽が増え続けている(写真:本人提供)

今は分かるけれど、当時はつかむために力も使ったし、離さないことを意識をしているから、そこに意識がいってしまい、投げられることもたくさんありました。

今、教える中で、
組むということ、つかむということ、離さないということを技術として教える機会があるのだけど。
なぜ、斉藤仁先生はそう教えてくれなかったのだろう。

 

と!
学生当時は(分かりづらいんだよ)と心の中で思っていました。
自分のコーチングは自分。
自己責任。
その上に先生がいる感覚を強く持つ。

学生時代は特に、この意識でやっていたから今があるのでしょう。
今は風呂屋だけど。

 

合宿中のルーティーン「シーツで背負い投げ」

さて、技術の話の渦に入っていく前に、ベッドメイキング。


僕がホテルのベッドで嫌なことがあります。
それはベッドに入る時に、掛け布団側のシーツがベッドの下に折り込まれていると、なかなか足を出せないこと。

僕、寝る時は足を布団の外に出すんです。

足を布団の下から出したいのに、ホテルのベッドはシーツがマットの下に折り込まれているのでどうしようもない。

なので、合宿では毎日、いつも掛け布団とシーツをまとめてつかみ、寝転がって1回背負い投げをするんです。
しかも左右。

そうすると、足元のシーツがマットから抜けて、足の先を布団から出せるようになる。
スッキリ。今もたまの外泊の時はします。

 

お客さんの身になってベッドメイキング

勤務先の温浴施設で、湯舟の修理。左官や内装のコツは先輩に学んだり、プロのYouTube動画で学んだりする(写真:本人提供)

仕事の中でシーツを張るたび、毎回、思います。
特に、足元のシーツを入れ込んでいる時に思います。
(お客さん、布団から足を出せないよなあ)

そう、やっぱりホテルはホテルの張り方なんです。

 

毎回、毎部屋やるたびに悩みます。
〝左右の背負い投げ〟をお客さんができるわけもなく。
朝の掃除の時にシーツを見ると、掛け布団側のシーツは足元に寄ってしまっています。

ベッドに入る時に左右の背負い投げをしないから、寝ている時に引っ張れずに次第に足でシーツを蹴って蹴って、結果、掛け布団と体の間にシーツがなくなっている状態なのです。
せっかく、シーツを張ったのに「寝て2時間も使われてないんだろうな」

そんな僕がホテルのベッドで寝る時は、掛け布団とシーツは必ず一緒になるようにセットしています。
だって、掛け布団は毎日洗濯しないでしょ。
シーツは毎日、交換洗濯していますから。

 

うちに泊まったお客さんは、もしかしたら2枚のシーツの上側をすんなり羽織れるベッドを見つけられるかも。
とにかく、シーツ張りだけは上手です。


(内柴 正人=この項おわり)

 

◆内柴正人氏による柔道指導の動画配信開始

内柴氏が現在、熊本・八代市で小学生から大学生を対象に週1回開催している練習会を中心に、指導内容を盛り込んだ動画配信を22年4月から開始している。

 

www.youtube.com

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うちしば・まさと

1978年6月17日、熊本県合志市出身。小3から柔道を始め、熊本・一宮中3年時に全国中学大会優勝。高3でインターハイ優勝。大学2年時の99年、嘉納治五郎杯東京国際大会では準決勝で野村忠宏を破って優勝。減量にも苦しんだことから03年に階級を66キロ級へ上げて2004年アテネ五輪は5試合すべて一本勝ちで金メダル獲得。08年北京は連覇した。10年秋引退表明。11年に教え子に乱暴したとして罪に問われ、上告するも棄却。17年9月出所。得意技は巴投げ。160センチ。18年に現在の夫人と再婚し、1男がいる。20年1月から現在の職場に勤務。

MasatoUchishiba

 

 

◆6月18日(土)愛知、同19日(日)東京でチャリティー柔道セミナーを開催

アテネオリンピック・北京オリンピック柔道男子66kg級金メダリスト内柴正人による、
柔道セミナーを開催いたします。

このセミナーでは「攻めに繋がる受け方」の習得を目標とし、受け方の基本から学んでいきます。そこから、崩しの基本などを伝授する超実践型の内容です。

このような急なスケジュールでの開催を決めた理由につきましては、以前、内柴が総監督を務めたキルギス共和国の選手支援が目的です。
以前、指導していたキルギス人選手3人がこのほど3カ月間日本に滞在し、仕事の研修もしながら柔道を学びにくることになりました。
少しの間ですが、彼らに柔道と向き合う環境を少しでも整え、金銭面にもサポートしてあげたいと考え、内柴本人が選手たちのためにできることをしたいと立ち上がった次第です。このセミナーにもキルギス代表候補3選手が参加いたします。

なお、参加者のかたには、内柴が実際に執筆した技術論、考え方についてまとめた冊子を配布します。

 

<愛知開催>
【日時】6月18日(土)午前9時30分~昼12時
【場所】愛知県 刈谷市体育館(〒448-0838 刈谷市逢妻町4丁目32番地)
【参加費】事前振り込み 5000円(15歳以下3000円)/当日払い現金6000円(15歳以下4000円)

<東京開催> 
【日時】6月19日(日)午後5時30分(受付)/午後6~8時(セミナー)
【場所】東京都 中央区総合スポーツセンター第1道場(〒103-0007 東京都中央区日本橋浜町2丁目59番1号 区立浜町公園内)
【参加費】事前振り込み 5000円(15歳以下3000円)/当日払い現金6000円(15歳以下4000円)

 

【申し込み】

piiita6u6@gmail.comまで

参加希望の方はメールにてお名前、電話番号、
事前振込、当日支払いのご希望を記載し、ご連絡ください。

 

※また、参加者、見学者のかたは前日~入場2時間前までにPCRまたは抗原検査キットで新型コロナウイルスの検査をお済ませの上、陰性結果のメール、写真など陰性結果が分かるものをお持ちください。

※体調が優れない方、当日現場にて37度以上の発熱がある方の参加、見学は御遠慮願います。

 

 

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