読んでいるうちに行ったつもりになれるかもしれない、プチ旅行の紀行文コラム「行ったつもりシリーズ」。
春の恒例にしているお花見サイクリング、4回目の今年は千葉県へ。県内を走るローカル線の小湊鉄道といすみ鉄道の沿線には、桜と菜の花が一緒に楽しめるスポットがたくさんあるそうなので、サイクリングでめぐってみた。最終回となる第3回は、いすみ鉄道の上総中川駅から終点の大原駅までのいすみ市内を走る。
「いすみん」といすみ鉄道カレー
「城見ヶ丘駅」で上り列車を見送った後、国道465号を西へ。大多喜町を抜けていすみ市に入り、「上総中川駅」に到着。
民家の間にひっそりと立つ無人駅だ。下り列車がやってきたと思ったら、そのまま止まらず通過していった。いすみ鉄道には何本か急行列車もあるようだ。
再び国道を進み、次の「国吉駅」へ。
ここは大きな駅で、この日は何やらイベントをやっていて、いすみ市のゆるキャラ「いすみん」が出迎えてくれた。
引退した車両も何両か展示されていて、写真を撮っている人もいる。
屋台やキッチンカーも出ているので、もうすぐ午後1時ということで僕もランチタイムに。いすみ鉄道カレーなるものがあったので、話のタネにと注文。列車の形をしたサフランライスに、カレーが添えられている。お店の人が「子ども向けなんで全然辛くないですよ」と言っていたが、確かに辛くなくて大人にはちょっと物足りなかった。
のどかな田園風景が広がる
お腹を満たしたところで自転車にまたがり、隣の「新田野駅」へ向かう。このあたりまで来るとだいぶ標高が低くなって、田んぼが広がる風景になってきた。なんて思ってたら、気づかずに新田野駅を通り過ぎてしまった。それくらいポツンと立つ小さな無人駅だ。
この駅の先に新田野桜街道という桜並木があり、いすみ鉄道の沿線でも人気の撮影スポットのようだ。すでに半分ほど散って葉桜になっていたが、近くの踏切では10人ぐらいの撮り鉄さんたちが待ち構えていた。列車が来るのを待たずに走りだしたけど、2~3分後には通ったので待っておけばよかったとちょっと後悔。
終点を目指してあと一息
「上総東駅」、「西大原駅」と無人駅を過ぎ、終点の「大原駅」へ午後2時前にゴール。
ここはJR外房線との乗り換えの駅。大原漁港までも1kmちょっとだが、この日は気が向かなかったのか行きそびれた。結局、いすみ市内は6駅14.8kmの区間を自転車では16km走った。スタートからは約60kmの旅路だった。
ちょうどいすみ鉄道の列車が到着しそうだったので、ホームに入ってくるのを待つ。この日は観光客が多いので、降りてくる乗客と乗ろうとする乗客で少しごった返す時間もあった。
終点「大原駅」からとんぼ返り
さて、ここからスタート地点の高滝湖まで戻らないといけない。ちなみに、いすみ鉄道は運賃に210円の追加料金を払えば、自転車をそのまま載せられるサイクルトレイン的なサービスがある(輪行袋に入れれば無料になる)。ただし、混雑時には載せられないので、この日は難しかったかもしれない。小湊鉄道の方はかつてサイクルトレインを運用していたが、現在は輪行のみOKだそうだ。
とはいえ、最初から列車に乗る予定はなかったので、自転車で走って帰ることに。なるべく、線路沿いの道を走りつつも、往路のように寄り道は極力しないルートを選んでいく。そう思って走り出したが、上総中川駅のそばで「札森さくら街道」という看板を見かけて、ちょっと気になった。線路沿いから離れて、立ち寄ってみることに。田んぼと山以外は何もないような道をしばらく行くと、桜並木が見えてくる。約1.2kmの区間に200本の桜が植えられているという。菜の花畑とのコラボが見られるところもあるし、夜間はライトアップされ、水田の水面に桜が映りこむ景色も人気だそうだ。
再び線路沿いに戻る。帰りは2、3本列車と遭遇したけど、タイミング悪く桜も菜の花も咲いてないところだったりした。ただ車も信号も少なく、もっとも高い峠でも標高200m弱とサイクリング的には気持ちよく走れる道が続く。
復路は約45km走り、午後5時前に高滝湖にゴール。最終的に計約105kmの行程だった。
今回は桜が散り始めている時期だったし、小湊鉄道の五井駅から高滝駅の区間も走っていないし、見逃しているスポットもまだまだありそうだった。何より行く先々の景色がよかったので、また走ってみたいなと思わせるルートだった。
(光石 達哉)