【連載「生きる理由」115】柔道金メダリスト・内柴正人氏 「夢と地獄の日々」⑥~懐かしい後輩と数十年ぶりに再会

出勤前の早朝、内柴氏は一人でトレーニングを再開している(提供:合同会社EDGE&AXIS)

2004年アテネ、08年北京五輪柔道男子66キロ級を連覇した内柴正人氏は現在、熊本県内の温浴施設でマネジャーを務めている。18年からキルギス共和国の柔道総監督に就任し、19年秋に帰国した後は柔術と柔道の練習をしながら働く、いち社会人となった。

これまで、彼はどんな日々を過ごしてきたのか。内柴氏本人がつづる心象風景のコラム連載、今回は、「夢と地獄の日々」の話⑥。

少年柔道の道場を辞め、遠く離れた中学へ転校。
内柴氏にとって、その中学の柔道部はいわゆる普通の部活動だったため、
自分で自分に厳しい練習を課す習慣がついていく。

その少年柔道時代の後輩が、新郎として披露宴に招待してくれた。
内柴氏を「まっ先輩」と呼ぶ懐かしい後輩たちに囲まれ、
思いを新たにしている。

 

 

 

辞めた道場の息子さんの披露宴に出席

夫人が監督を務める道場「EDGE&AXIS」には、内柴氏が現役時代の趣味として行っていたサーフィンのボードが掛けられている(提供:合同会社EDGE&AXIS)

どんなに厳しい状況に置かれても、僕が折れないのはきっと育ちです。

柔道に対しては心折れてるのだけど、
それでも習いに来る者がいれば教えるし、
昨夏のようにキルギス共和国から元弟子たちから「日本へ行きたい」と言われれば、
セミナーをして資金集めもします。


人のためになるのなら道場だって造ります。

こんな僕がね、
みなさんが知っているように世間的には悪者の僕がね。
結婚式の披露宴に呼ばれました。

辞めた道場の!
道場の先生の息子さんの結婚式に出席してきました。

ドキドキしたね。
少し、ガクガクしたね。
来なきゃ良かったなあ。
って会場に入る前に思った。

 

数十年ぶりに再会

内柴氏が内装を手掛けた道場はおしゃれな雰囲気(提供:合同会社EDGE&AXIS)

新郎側の参列者。

恩師、恩師、日体大の山本洋介先生。熊本出身の大先生。
僕の席は全部後輩。
「まっ先輩」と呼ぶ後輩から、年が離れすぎて「まっ先輩」と呼べない後輩。
僕の現役時代に全日本に上がってきてくれた後輩。

30年ぶり、もっとか。
20年ぶり10年ぶりに会うことができました。

すべては先生の息子が僕を招待してくれたおかげです。
ありがとう。

「親同士がどうあろうと、子どもは関係ない」
20年ほど前に、僕が息子に言ったこともいまだに覚えています。
息子も覚えてくれています。

現役時代に
中学の後輩が国士舘に進学してくれることをとてもうれしく思っていたことは
先ほどしましたが、
実は
道場の後輩たちが足立学園、講道学舎に進学したり、日体大に何人も進学したり。
全日本の強化選手にはい上がろうとしていたこと。

ずっと心から応援していました。

あの頃は
「先輩はバリバリの現役で声をかけづらかった」
など。
僕も「お前、つれなかったよなあ」
寂しかったぞ。

そんな話で盛り上がりました。

 

未来に向けての話ができる自分になれるように

道場「EDGE&AXIS」のロゴは、内柴氏が柔道の説明をする時に描いていた人文字がベース(提供:合同会社EDGE&AXIS)

みんながみんな、僕が道場を熊本で造る。
知っていました。

本当にトンカントンカンやって造りますからね。

僕が10年ほど前に、熊本に帰ってきた時に強く思っていたこと。
派閥や学閥関係なく、柔道ができる環境をつくりたい。
人の好き嫌いで判断しない。

今では嫌われっぱなしの僕が出入りできる道場なんて、ごくわずかであります。

大丈夫、
自分で道場を造るから。
種目は
柔術、グラップリング、健康体操、何でもいい。
出来れば、僕は柔道が得意なんだよね。

また、
いつか未来に向けての話ができる自分になれるように願います。

この少年時代の道場も、受け入れてもらった一の宮中学の柔道部も今はないんです。

僕がじゃなくて、
僕の次の世代の柔道選手が、熊本の柔道をもっと楽しいものにできるような空間が一つでも多く増えることを願っています。


(内柴正人=この項目おわり)

 

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◆内柴正人氏による柔道指導の動画配信      

内柴氏が現在、熊本・八代市で小学生から大学生を対象に開催している練習会を中心に、指導内容を盛り込んだ動画配信を22年4月から開始している。
より詳しい内容について、メンバーシップ配信も開始した。
メンバーシップ配信では、今回の道場づくりについても動画をアップ中。
詳細は下記YouTubeのコミュニティ欄へ。

www.youtube.com

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うちしば・まさと

1978年6月17日、熊本県合志市出身。小3から柔道を始め、熊本・一宮中3年時に全国中学大会優勝。高3でインターハイ優勝。大学2年時の99年、嘉納治五郎杯東京国際大会では準決勝で野村忠宏を破って優勝。減量にも苦しんだことから03年に階級を66キロ級へ上げて2004年アテネ五輪は5試合すべて一本勝ちで金メダル獲得。08年北京は連覇した。10年秋引退表明。11年に教え子に乱暴したとして罪に問われ、上告するも棄却。17年9月出所。得意技は巴投げ。160センチ。18年に現在の夫人と再婚し、1男がいる。20年1月から現在の職場に勤務。

 

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