【自転車】若葉マーク脱出計画25=オフロードも走れるロードバイクの新ジャンル「グラベルロード」を初試乗!

シクロクロス東京の会場でグラベルロードを試乗!(撮影:光石 達哉)

 

自転車初心者の編集部見習いコイケとともに、サイクリングをより楽しむためのノウハウやアイテムを学んでいくシリーズ。今回はロードバイクのような見た目ながらオフロードも走れるグラベルロードを初試乗してみた。

 

 

 グラベルロードってどんな自転車!?

ほとんどのグラベルロードに使われているディスクブレーキ。高い制動力を誇る
(撮影:光石 達哉)

2023年2月11~12日にお台場海浜公園で開催されたシクロクロス東京の会場には、自転車関連のブースも多数出展。その中で、新しい自転車のジャンルであるグラベルロードの試乗車を借りてみた。コイケも「グラベルロードに乗ってみたい」と、以前から気になっていた車種だ。

グラベルロードとはいったい何か?

一見するとロードバイクと同じようなドロップハンドルの自転車だが、マウンテンバイクのようなブロックタイヤを履いていて、グラベル、つまり未舗装路も走れるようになっている。

そもそも、なぜグラベルロードという新しいジャンルが誕生したのか。昨今のアウトドアブームなど要因はいろいろあるが、技術的な理由のひとつはロードバイクのディスクブレーキ化だ。

 

数年前までロードバイクで主流だったリムブレーキ。太いタイヤが履けず、泥詰まりもしやすく、オフロードでは使用できなかった(撮影:光石 達哉)

数年前までロードバイクで主流だったリムブレーキは構造が単純な分、重量が軽いというメリットがあったが、太いタイヤが履けない、泥が詰まりやすいなどの理由でオフロードには不向きだった。

一方、ディスクブレーキは自動車やオートバイでは広く使われているブレーキで、自転車でもマウンテンバイク、シクロクロスの順で浸透してきた。ロードバイクでは重量面などから敬遠されてきたが、ここ数年である程度軽くなり、普及してきた。そのメリットはなんといっても制動力。油圧によって軽い力で握っても強い制動力が発揮できるので、長距離走って疲れているときも安心だし、雨でもしっかり効く。

ディスクブレーキが広まった副産物として、以前リムブレーキがついていたスペースが空き、太いタイヤも履けるようになった。またタイヤ表面とブレーキが離れているので、泥つまりでブレーキが効かなくなるというリスクもかなり減っている。その結果として、太いタイヤを履けるグラベルロードが誕生したのだ。

 

ロードバイクのような見た目でオフロードも走れるというと、シクロクロスバイクと同じじゃないかという疑問もあるだろう。シクロクロスバイクはシクロクロスという競技のための自転車で、担ぎやすいように重量も軽く、フレームの形状や剛性、ケーブルの配線なども工夫されている。公式戦では、タイヤ幅も33mmまでしか使えない。

一方、グラベルロードは旅やツーリングが主な目的で、フレーム形状なども上半身が起きた快適な姿勢がとりやすくなっていたり、タイヤももっと太いものが履けたり、キャリア(荷台)やバッグを取り付けるためのダボ穴(ネジ穴)が各所に空けられている。とはいえ、最近はグラベルロードのレースも開催されていたりするので、こだわる人でなければ両ジャンルの境界線を細かく気にする必要もないだろう。

 

 カンゾー・アドベンチャーに試乗

カーボンフレームのリドレー・カンゾー・アドベンチャー、完成車価格39万6,000円(撮影:光石 達哉)

今回は、シクロクロスの本場でもあるベルギーの自転車ブランド、リドレーのブースからカーボンフレームのKANZO Adventure(カンゾー・アドベンチャー)とアルミフレームの初級モデルKanzo A(カンゾーA)の2車種を試乗。シクロクロス東京の会場に設定されている試乗コースで走ってみた。

カンゾー・アドベンチャーはリドレーのグラベルロードの中でも最もオフロード寄りのモデルで、オンロード30%、オフロード70%走ることを想定している。試乗車は装着しているタイヤ幅も43mmと太めだ。

 

カンゾー・アドベンチャーは、フロントシングルと呼ばれるフロント変速機がない仕様。チェーンが落ちるトラブルを大幅に減らせる。ギアの歯数は40(撮影:光石 達哉)

また、フロントの変速機がないのも特徴のひとつ。ロードバイクはフロント2速が一般的だが、最近はマウンテンバイク、シクロクロスバイク、グラベルロードなどオフロードを走る自転車はフロントシングルと呼ばれるフロントの変速機がなく、ギア1枚のモデルが増えてきている。

 

一方、スプロケットと呼ばれる後輪のギアは11速。11~42までの歯数をカバーする(撮影:光石 達哉)

フロントシングルが広まった技術的な理由のひとつは、リアの変速機が11速、12速と多段化して、リアだけでより幅広いギア比をカバーできるようになったから。軽量化や空気抵抗軽減などのメリットもあるが、最も大きいのはチェーンが落ちる(外れる)リスクを大幅に減らせること。

チェーンが落ちるタイミングは9割以上がフロントを変速したときで、特に車体が跳ねるオフロードだとそのリスクも高まる。レースをする人なら、なおさらチェーン落ちのトラブルは避けたいところだ。フロントシングルの方が、見た目がシンプルでカッコイイというサイクリストも多い。

 

 続いてカンゾーAに試乗

アルミフレームのリドレー・カンゾーA、完成車価格25万3,000円(撮影:光石 達哉)

一方、初心者向けのカンゾーAはティアグラというロードバイク向けのコンポーネント(変速機などのパーツ群)を搭載していて、フロント2速×リア10速でカバーするギア比もより大きくなっている。

 

カンゾーAはロードバイク用の前2速、後10速の変速機を備える。もちろん、こちらでも十分に楽しく走れる(撮影:光石 達哉)

試乗してみた感想だが、どちらもアルミとカーボンといった素材の差を感じることなくよく走る。オフロードのちょっとした上り坂でも路面をとらえてグイグイ進んでくれるし、ディスクブレーキもよく効くので、下り坂のコーナーなども恐怖心を感じることなく操作できる。思っていた以上に、オフロードを軽快に走れるという印象だ。

 

幅37mmといった太いタイヤを履けるのが、グラベルロードの特徴(撮影:光石 達哉)

ただ舗装路を走るには、オフロード用のごついタイヤは重くて抵抗も大きい。サイクリングがメインの自分のようなサイクリストなら、グラベルロードに普段はオンロード用のタイヤを履かせて、オフロードを走る日はタイヤを換えるというのも楽しみ方のひとつな気がする。

 

グラベルロードはフレームの各所にダボ穴(ネジ穴)があり、バッグやキャリア(荷台)を取り付けられる(撮影:光石 達哉)

もともとグラベルロードは、e-Bike(スポーツタイプの電動アシスト自転車)と同様、欧米で生まれたジャンルで、その後、日本に入ってきたもの。日本でもグラベルロードに乗る人が徐々に増えてきているが、登山道などのオフロードを走るには住民、登山者などに迷惑がかからないように気をつけなければならない。

山男のコイケも「登山中に自転車走行禁止の看板を見かけたことがある」と言っているし、SNSなどでもそうしたトラブルを散見することがある。

 

同じオフロードを走る自転車でも、シクロクロスバイクはレース中に担ぐこともあるため、重量やフレーム形状なども考慮されている(撮影:光石 達哉)

1980年代後半~90年代のマウンテンバイクブームも、こうしたマナーの問題で下火になったという過去もある。

グラベルロードはどんな道でも走れる自転車でありながら、一方で日本の状況ではどんな道でも走っていいわけではないという矛盾も抱えており、今後もっと広まるかどうかは慎重に見守る必要があるだろう。

 

(光石 達哉)

 

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