自転車初心者の編集部見習いコイケとともに、サイクリングをより楽しむためのノウハウやアイテムを学んでいくシリーズ。今回は2月18日(土)、夜の東京駅前で初開催された「丸の内クリテリウム」を観戦。東京のど真ん中を封鎖し、照明でライトアップされたコースで、いつもと違うレースの醍醐味を感じた。
国内では前代未聞のナイトクリテリウム
このレースは、自転車ロードレースの国内プロリーグを運営するジャパンサイクルリーグ(JCL)が、東京都の後援を受け開催したもの。「全世界から注目される丸の内エリアでの国際レース開催」を目指すJCLが、自転車ロードレースのショーケースとして行うエキジビジョンレースだ。
そもそもクリテリウムとは短距離の周回コースで行われる自転車ロードレースで、都市部で行われることが多い。昨年11月に観戦したツール・ド・フランスさいたまクリテリウムもそのひとつだ。
今回は日没後に行われるナイトクリテリウムということで、国内ではほぼ前例のない試み。しかも、コースが東京駅の真ん前というのも前菜未聞のシチュエーションだ。ロードレースの本場ヨーロッパでは、ツール・ド・フランスなどで活躍した選手たちがエキジビジョンで走るナイトクリテリウムが盛んなようだがあまり情報が入ってこないので、その雰囲気を日本で味わうまたとない機会となっている。
コースは、東京駅から皇居へと向かう行幸通りを一部封鎖した1周約400mで、これを60周する約24kmのレースだ。中央の歩道部分は皇室行事などで馬車列が通るときに使われるが、この日はチームピットや表彰台のステージなども設置されていた。
コイケと僕が会場に到着した午後4時ごろは、すでに多くの人で賑わっていた。ちょうどピットウォークなども行われていて、選手とファンが交流している。国内の自転車ロードレースでは、選手が気軽にレース前にファンサービスするのもよく見る光景。正直、ピットウォークなんてイベント化しなくても、選手と触れ合えるレース会場はたくさんある。
今回は参加選手15人と少人数でのレースだが、昨年のJCL年間王者・小野寺玲選手が出場、さらに元台湾王者で昨年まで世界最高峰のワールドツアーで走っていたフォン・チュンカイ選手(ともに宇都宮ブリッツェン)も日本移籍後初レースを走るなど、豪華な顔ぶれがそろっている。
夜の街を駆け抜けるレースに通行人もビックリ!
レーススタートが午後5時だと思っていたら午後6時だったようで、地下街のカフェでちょっと時間をつぶして再び地上に戻ると、すでに日は暮れていた。先ほどより観客の数が増えて、コース際の最前列はほぼ埋め尽くされている。コースを歩きながら観戦できるポイントを探していたら、レースがスタートした。
選手たちのロードバイクは、普段のレースではつけることのないライトを前後につけ、車輪のスポークやアームバンドにもLEDを点灯させ、ピカピカと光っている。それがライトアップされた東京駅の駅舎を背景に、ビルに挟まれたコースを駆け抜けていく。狭いコースだけど、速いところでは40km/hぐらい出ているだろう。1周の距離が短いので、数10秒ごとに選手たちが目の前にやってくる。
細かいアタック(少人数で飛び出す動き)が何度もあったようだが、正直、暗くて選手の見分けがつかないので、どういうレース展開なのかはよくわからない。でも、観客はみんなナイトレースの雰囲気を楽しんでいるようだ。
見に来ている人は自転車好きが多いようだが、たまたま通りがかりで遭遇した人たちも少なくなかったようで、「これ、ツール・ド・フランスみたいなのやってるんですか? すごいですね!」と僕たちに話しかけた人もいて、興味を引かれていたようだ。
レースは、平坦でのゴールスプリントを得意とする小野寺選手が優勝し、チャンピオンの貫録を見せた。選手たちも口々に東京駅の真ん前、さらにナイトレースという非日常な空間でレースができたこと、多くの観客が集まったことを喜んでいたようだった。
東京都は今後も「環境にやさしく、健康にもよい自転車を更に身近なものとするため」自転車イベントの開催に力を入れていくようで、今年12月3日には東京五輪のコースを活用したロードレースも予定されている。こうした取り組みで、自転車ロードレースが身近なスポーツになってくるかどうか楽しみだ。
(光石 達哉)