自転車初心者の編集部見習いコイケとともに、サイクリングをより楽しむためのノウハウやアイテムを学んでいくシリーズ「若葉マーク脱出計画」。
2022年も全国的に暑い夏がやってきた(終わりかけてるけど…)。こんな時でも自転車に乗りたいのならば、標高の高い地方に行って避暑サイクリングするしかない!
ということで、サイクリング初心者の編集部見習いコイケとともに、輪行で栃木県の日光に向かった。完結編の第3回は、戦場ヶ原から日光湯元温泉の方へと駆け上っていく。
竜頭ノ滝で湯葉を味わい 戦場ヶ原へ
前回は中禅寺湖の北岸にある湖畔展望テラスまで走ってきたが、ここから湖に沿ってさらに西へ向かう。日光二荒山神社中宮祠、中禅寺金谷ホテル、中禅寺湖畔ボートハウスなどの名所を横目に見ながら進み、湖畔から離れて北に進路を変え戦場ヶ原方面へ。展望テラスから5kmほど進んだところに、竜頭ノ滝(りゅうずのたき)がある。ここは華厳の滝に続く、奥日光三名瀑の2つ目だ。
食堂兼お土産物屋の中を抜けたところにある小さなテラスから、竜頭ノ滝が目の前に見える。渓流に沿って斜めに流れる渓流滝というそうで、全長210m。スケールは華厳の滝の方がはるかに大きいけど、間近に見られる分、迫力はある。秋は紅葉もきれいだそうだ。
食堂のメニューを見て「日光は湯葉(ゆば)が名物なんですね」とコイケが言うので、すでに午後3時半ごろだったがようやくランチタイム。コイケは「ゆばそば」の大盛り、僕は日光新名物という「ゆばからあげ」のねぎ塩味を注文。何を揚げているのかと思ったら、湯葉を巻いて丸めたものを串に刺し、軽く粉をつけて揚げているもので、肉などは入っていない。あっさりした味と食感で、ほかでは食べられないおいしさだ。ゆばそばも、いい出汁(だし)がしみ込んでいるようでおいしそうだった。
神話が由来の湿原「戦場ヶ原」
ここからさらに北へ向かう。久しぶりに上り坂が現れ、コイケが「アタックします!」と言って先行するが、しばらくすると道は再び平たんになった。戦場ヶ原の湿原の中に入ったようだ。空もだんだん晴れてきて、道中ずっと雲がかかっていた男体山もようやくその全容を見ることができた。
竜頭ノ滝から約3km、三本松茶屋というドライブインに自転車をとめ、国道を渡ってすぐのところの展望台から湿原を眺める。戦場ヶ原は、男体山の噴火によって川がせき止められてできた湿原。男体山の神と赤城山の神が中禅寺湖をめぐって争った「戦場」だった、という神話が名前の由来だそうだ。
どっちが勝ったかは知らないが、男体山は目の前にあるけど赤城山は30kmぐらい離れたところにあるのに、なんでケンカになったのだろうか。貴重な植物や野鳥も多く、ハイキングコースとしても人気だそうだ。
ド迫力の湯滝とシカが遊ぶ日光湯元温泉
さらに3kmほど北に進んで、湯滝へ。ここは、奥日光三名瀑の最後のひとつ。すぐ上にある湯ノ湖から岩壁の斜面に沿って流れる滝は、高さ70m、長さ110m。滝つぼのそばまで行くことができて、今回、いや今まで見た中でもトップクラスのド迫力だ。
湯ノ湖まで上ると、ちょうど滝が流れ落ちるところも間近で見られ、これも圧巻の景色だ。滝のすぐそばだが、湯ノ湖は静かな湖。釣り人が腰まで湖水につかってフライフィッシングをしている。その名の通り、このあたりで温泉が湧いているのかうっすら硫黄のにおいも漂っている。
湖の北側には、日光湯元温泉という温泉街が広がっている。ここも観光地的な賑やかさはなく、高原の中に大小さまざまなホテルや旅館が20軒ほどポツポツと立っている。すでに夕方で標高約1500mあるので、涼しいを通り越して肌寒いぐらいだ。近くにスキー場があるので、冬はもっと賑やかなのかもしれないが、夏にこの静かな温泉地でひっそり過ごすのも心穏やかになりそうだ。
温泉街の中を走っていると、シカの親子がトットットッと目の前を通り過ぎていく。さらに行くと7、8匹が群れて草をついばんでいた。どうやら野生のシカのようだ。
温泉街の裏手にある湯の平湿原の源泉へ行ってみる。湿原は雪解け水と白灰色の温泉水が混ざった感じで。熱いところもあれば冷たいところもある。場所によっては魚が泳いでいたり、シカが脚をつけて歩いていたりする。奥まで行くと源泉小屋というヒザぐらいの高さの小さな小屋がいくつか建っていて、ここから温泉をくみ上げているようだ。
ひとまずゴールも山男コイケはそのまま野宿
すでに時刻は午後6時前。いろいろめぐったものの実はまだ40kmほどしか走ってないが、ひとまずここでゴール。なんと大学が夏休みに入ったばかりの山男コイケはここに野宿し、翌日は日光白根山を登るという。だから、寝袋なんかも持ってきていたのだ。
野宿の準備も登山の覚悟もない僕はここで別れ、1人帰ることに。中禅寺湖、第一いろは坂と下って東武日光駅に7時過ぎに到着したが、まだこの日の走行距離は70km弱。実はこの時、STRAVA内のイベントでツール・ド・フランスのレース距離の5分の1(665km)をツール開催中の3週間以内に走るという課題にチャレンジしていて、もっと距離を稼ごうと思い、約35km先の宇都宮まで脚を伸ばしてから輪行した。いろは坂を下ったあたりから空気がもわっと蒸し暑くなってきて、奥日光の涼しさが早くも恋しくなった。
ちなみにコイケは翌日、日光白根山に登頂成功。その後、男体山も登ろうとしたのだが、二荒山神社の神域のため正午までに入山しないといけないらしく断念したものの、無事帰京したとのこと。いろんな興味深い景色に出会えた夏の日光旅だった。
(光石 達哉)