読んでいるうちに行ったつもりになれるかもしれない、プチ旅行の紀行文コラム「行ったつもりシリーズ」。
本当に今年の夏は暑い! 8月後半になってもまだまだ暑い日が続いているが、少しでも涼しさを味わえる場所がないものかといろいろ調べていたら、東京の下町に滝が流れ落ちるスポットがいくつかあるそうなので、サイクリングしてきた。
日本庭園の中を流れ落ちる「名主の滝」
今年の夏も東京を離れた避暑地に行って自転車に乗ろうかと思いつつ、コロナ禍の制限がなくなってどこも人出も多そうだしな、とか考えると二の足を踏んでしまい、結局のところ自宅発のサイクリングばかりになっている。そんなわけで今回は東京・下町にある滝をめぐることに。
まずは明治通りを北に向かって進み、北区に入る。王子駅付近で脇道に入り、「名主の滝公園」へ。その名の通り、滝のある公園だ。住宅街に囲まれていて最初は入口がわからなかったが、急な坂を下りて公園の東側に出ると正門的な入口があった。たまに思うのだけど、地図アプリは施設や建物の入口がわかるようにしてくれるとありがたいのだけどな。
中に入ると、ゴーゴーと滝が流れている音が聞こえてくる。少し奥に進むと男滝(おだき)と呼ばれる滝が見えてきた。町中の公園の割には落差が8mもあり、23区内でも屈指の規模の滝だそうだ。歩いて滝のそばまで近づくことができ、涼しさを感じられる。
先ほど坂を下ってきたように王子あたりは武蔵野台地の端っこで、その高低差によって「王子七滝」と呼ばれる7つの滝があったという。このうち名主の滝だけが今も残っているそうだ。
この名主の滝はその名の通り江戸時代末期に王子村の名主が開いたそうで、戦前には食堂やプールもある歓楽地だったそうだ。しかし、現在の滝は自然の水の流れではなく、池の水をポンプで汲み上げて流しているとのこと。しかも滝の流れる時間は10~16時に限られている。
園内には他にも女滝(めだき)、独鈷の滝(どっこのたき)、湧玉の滝(ゆうぎょくのたき)がり、すべて合わせて「名主の滝」と呼ばれていたが、現在は男滝以外は水は流れていない。
滝の周囲は日本庭園のように整備されていて、秋には紅葉もきれいなようだ。池や小川もあり、木陰を散歩したりベンチで休むのも気持ちがいい。しかし、水場が多いだけに蚊も多く、脚を何カ所も刺されてしまって、耐えられず長居できなかった。虫除けは塗っていった方がいいだろう。
街の雰囲気を味わう
脚をさすりながら公園を出て、王寺駅の方へ。駅前には桜の名所としても有名な飛鳥山公園があり、駅から飛鳥山山頂までを結ぶ高低差約18m、料金無料の飛鳥山モノレール(あすかパークレール)も見える。
公園の周りには都電荒川線も走っていて、ちょっと東京の他の町とは違う雰囲気も感じられる。
滝の裏側にも入れる「岩屋の滝」
ここでパラパラと雨が降ってきたが、空は晴れていて通り雨だったので、駅のガード下で少し雨宿りして再出発。荒川サイクリングロードなどを通って10kmちょっと東へ、足立区の「しょうぶ沼公園」に到着。東京メトロ・千代田線の終点、北綾瀬駅の目の前にある公園だ。
駅前の広場の片隅に、「岩屋の滝」と呼ばれる滝が勢いよく流れている。高さ4mで、岩山も滝も明らかな人工物だ。しかし、滝の裏側に回ることができ、なかなか他では体験できないので楽しい。この日は午後からスタートして、ここに到着したのは夕方だったので、ちょっと肌寒いくらいだった。
公園の南側にはその名の通り菖蒲田があり、5~6月には約140品種、8100株のハナショウブが咲くそうだ。駅を降りてすぐ、こんな公園があるのは地元の人にとってもありがたいだろう。
9月もまだまだ暑い日が続きそうなので、流れ落ちる滝を見てつかの間の涼を味わってみては?
(光石 達哉)