【パラスポーツ】パラ陸上日本選手権初日~走り幅跳びの女王&キング そろい踏みV

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走り幅跳びでアジア記録をマークした中西麻耶(撮影:岡田剛)

パラ陸上の日本選手権は9月5日、埼玉県の熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で開幕。19年世界選手権金メダリストで、4大会連続のパラリンピック代表に内定している女子走り幅跳び(T64)の中西麻耶(阪急交通社)が5m70のアジア新記録で優勝。今後は6mの大台を目標に、1年後に延期された東京パラリンピックでメダル獲得を目指す。また、同じく4大会連続代表内定の山本篤(新日本住設)も今季2戦目の走り幅跳び(T63)で6m49をマークし、優勝を飾った。

 

 

6mの大台で本番メダルを~中西麻耶

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走り幅跳びでアジア記録をマークした中西麻耶(撮影:岡田剛)

女王が進化を続けている。やれることをやり続けた結果が記録に表れた。

中西麻耶は4回目の跳躍でベストの5m70を記録。スピードに乗って勢い良く踏み切り、空中から目いっぱいに体を突き出して着地。新型コロナウイルスの影響があっても練習の質を落とさずに調整を続けてきたことが、好記録につながった。

競技場が使えなくても公園や河川敷で練習を行った。さらに活動拠点を故郷の大分から兵庫に移し、指導を受けている荒川大輔コーチの近くでトレーニングを続けた。2,3月の時点でパラリンピックの開催が危ぶまれることを予測し、ピークをどのように合わせていくかコーチと相談していたという。

4回目の跳躍の後、記録更新も期待されたが、5、6回目は記録が伸びなかった。「微妙な力の加減が…。試合の中でやらないと習得することが難しい」。記録を意識した時に、どうしてもスタートで力んでしまうことがある。逆に力を抜いてしまうと、走れているようで推進力がなくなって記録が伸びない。

「勝ち気が変な方向に行ってしまいファウルにつながっていた」という以前の跳躍よりは安定してきたが、力の入れ具合を完全にはつかみ切れていない。それでも「ちょっと合えば6mいける」と言い切った。ほんのわずかな部分の修正1つで、さらなる高みが見えてくる。課題は明確。1年後の本番へ、迷いなく突き進む。


目標まであと1センチ 記録に手応え~山本篤

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パラアスリートの顔・山本篤が6m49の大ジャンプ(撮影:岡田剛)

中西と同じく4大会連続のパラリンピック代表に内定している男子走り幅跳びの山本篤は、6m49で優勝。目標としていた6m50にわずかに届かなかったが、納得の表情で今季2戦目を終えた。

19年5月の北京GPで自己ベスト、さらにはアジア記録となる6m70をマーク。11月の世界選手権でパラリンピックへの切符をつかみ取って調整を続けていたが、肝心のパラリンピックは延期。国内外の大会も行われない状況が続いた。

8月に入って日本大学競技会で今季初の試合。「出る、出るってなってから2回ぐらい(試合が)飛んだ」と、大会に出場するだけでも難しい状況が続いていた。

8月の実戦で体感した「暑さ」。今回はコロナ対策とともに熱中症対策にも気を配り、自ら氷を持ち込むなど万全を期した。「熱中症対策をもう少し考えた方がいい」と、1年後の本番でも予想される「暑さ」への対策も、感染症と同様に考えなくてはならない課題として挙げた。

「夜は出歩かず、家族と過ごすことが一番のコロナ対策」とユニークなコメントで笑いを誘えば、「試合に出たい」と真剣な表情も見せた。早速、来週に予定されている大阪でのクラブ対抗競技会に状態次第で出場を検討。愛知パラ、関東パラ、さらには大学の記録会出場も予定している。コロナ禍でもリラックスしながら練習に取り組み、ゴルフでは自己ベストも出した。頂点を目指すベテランは自然体で挑み続ける。

トラック種目では世界記録誕生 

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女子200mで世界記録を樹立した湯口英理菜(撮影:岡田剛)


女子200m(T61)で湯口英理菜(日体大)が41秒27の世界記録を出した。同種目はパラリンピックで行われないが、期待の若手が偉業を成し遂げた。

高校では部活動に所属せず、切断障がい者のクラブ「スタートラインTOKYO」で力をつけた。大学入学と同時に陸上部に所属。「今まで以上に練習に打ち込め、知識が増えてどうしたら記録を伸ばせるか考えられている」と、成長の要因に練習環境を挙げた。現在は200mと同時に走り幅跳びにも取り組み、パラリンピック出場を目指している。

200m出場後の走り幅跳びでは2m58を記録し、同クラスではアジア記録。しかし、パラリンピックでは別のクラスの選手と争うことになるため、さらなる成長に期待がかかる。

 

無観客、取材対応の変化 コロナ禍の大会開催 

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新型コロナウイルス対策を立てた取材対応に臨む中西麻耶(撮影:岡田剛)

コロナ禍による大会の中止、延期が相次いだ中、ようやく開催されたパラスポーツの大会。新型コロナウイルス対策として無観客開催となるなど、予防策が徹底された。

選手への取材対応では、ソーシャルディスタンスを保ちながら質疑応答が行われた。ペン記者のみの取材時には、選手の目の前に透明のスタンドが置かれ、選手用のマイクはカバーがかけられていた。写真撮影もフィールド競技は代表撮影のみとなるなど、各所に配慮が施された。

選手からは、無観客開催や初日のみとなったネット配信についても意見が出た。終息の兆しが見えないウイルスへの対策は今後の開催大会、さらに21年の東京パラリンピックに向けて、あらゆるケースを想定して考え続けなければならない。
(岡田 剛)