日本最年少金メダリストがスキーも練習再開へ~村岡桃佳
諦める気持ちはどこにもない。
18年平昌冬季パラリンピックのアルペンスキー女子座位で日本史上最年少の金メダルを獲得した村岡桃花は、19年から陸上競技にも取り組んでいる。本命の100m(T54)では優勝したものの、自己ベスト更新はならず、さらにパラリンピック出場に関わる世界ランキング“パラリンピック番付”も6位から順位を上げることができなかった。
19年春から本格的に陸上をスタート。同年7月には当時の日本記録を破り、20年1月には豪州で行われた国際大会「サマーダウン・アンダー」で自身の日本記録を更新する16秒34をマーク。夏のパラリンピック出場へ着実に前進している。
東京大会への強化もさることながら、冬季の22年北京大会出場に向けてスキーの練習も進めなければならない時期に入る。陸上は一旦今大会までとし、状況を見ながらスキーに復帰する予定。再び陸上に戻ってくる時期も今後検討するという。
「陸上から離れている間に他の選手が速くなっているかもしれない」と不安も口にしたが、「1年間、本気で陸上に取り組んできて、本当の陸上競技者になれたのかな。(陸上とスキー)どちらも大事」と、一度決めた大きな決断を覆すつもりはない。
予想だにしなかった新型コロナウイルスの猛威も重なり、さらに状況はハードだ。「たくさん考えたけど、諦められない」。18年平昌パラリンピックで全5種目にわたってメダルを獲得した“冬の女王”は、それでも挑戦を続ける。
新星・大島健吾 強豪撃破も「まだまだ」
大学生が第一人者を破った。男子100m(T64)でアジア記録保持者・井谷俊介が決勝で12秒01の2位。先にゴールしたのはダークホース、大島健吾(名古屋学院大3年)だ。11秒93を叩き出し、井谷を100分の8秒上回った。
19年に日本パラ陸上競技連盟の強化育成指定選手に選ばれ、海外遠征も経験。成長の要因として理学療法士のサポートを受けて柔軟性や体幹を強化したこと、さらに栄養士の管理による食事を挙げた。「バテなくなった」と、走りの中で効果を実感している。
一方、井谷はスタートが思うようにいかず、中盤で失速。「調子は良かったが、走ってみたらタイムが出なかった。普通に惨敗」と淡々とした口調で敗戦を振り返った。続けて「大島君が1年間しっかりやってきたことが成果として出ているんじゃないかな」と、ライバルを称えた。
東京パラリンピックが1年延期されたことで登場した新星の大学生。強豪撃破は自信となったが、「まだまだ」と記録には満足していない。目標は11秒8切りだ。「他の選手も本調子ではなかったと思う。もっともっと上げていきたい」。伸びしろ十分のスピードスターが、また1人現れた。 (岡田 剛)