日本国内でも連日ニュースとなっている新型コロナウイルス(COVID-19)。東京オリンピック・パラリンピックをはじめ、様々なスポーツイベントへの影響も心配されているのは周知のとおりだ。
そんな中、UAE(アラブ首長国連邦)で開催中の自転車ロードレース「UAEツアー」ではチーム関係者の新型コロナウイルス感染が明らかになり、2月28日、レースが途中で中止されることが主催者から発表された。
UAEツアーは、2月23日(日)から29日(土)までの7日間7ステージ(区間)で争われる予定で、20チーム140選手が参加していた。27日までに5ステージを消化し、アダム・イェーツ(英国、ミッチェルトン・スコット所属)が総合タイムで首位に立っていた。しかし、この決定により残る6、7ステージは開催されないことになり、第5ステージまでのリザルトでイェーツが総合優勝を獲得した。
イタリア人スタッフ2人の陽性でキャンセル決断
現地時間28日未明に発表された大会のプレスリリースによると、「UAEツアーに参加中の1チームのイタリア人スタッフ2人が新型コロナウイルス陽性と判定されたため、2020年UAEツアーの残りのステージをキャンセルした」とある。
さらに、レース主催者は「この決定は、レース参加者全員を守るためだ。安全はすべての優先事項の最上位にある」と決断に至った理由を述べている。またUAEの保健予防省はレース参加者、運営スタッフ、主催者を検査し、今後の感染拡大を防ぐという。UAEツアーは中東で唯一、ツール・ド・フランスなどと同格のワールドツアーに属する格式の高いレース。7日間をかけてドバイ、アブダビ、アルアインなどUAEの全7首長国を回り、様々な名所もコースに含まれている。春からの欧州での本格的なロードレースシーズン開幕を前に、トップ選手の顔見せ的な意味合いもあった。
その中には、ツール・ド・フランス総合優勝4度のクリス・フルーム(英国、チーム・イネオス所属)も参戦していた。フルームは2019年6月、レース試走中の落車で大ケガを負っていたため、本格的な復帰戦として注目されていた。
今後の国際大会への影響は
そのフルームは、自身のツイッターで「UAEツアーのキャンセルは残念だが、人々の安全が第一だ、我々全員は検査を待っていて、新たな通知があるまでホテルで缶詰めになっている。感染した方々のいち早い回復と再びコロナウイルスでこのようなことがないことを願っている」と心境を述べ、また選手やスタッフは検査待ちのためホテルから出られない状況であることを明らかにした。
なお、ツール・ド・フランスに日本人最多の7度出場し、東京五輪の代表有力候補でもある新城幸也(バーレーン・マクラーレン所属)もこのレースに参戦中だった。日本でも東京マラソンの一般参加中止、Jリーグの公式戦延期、プロ野球オープン戦の無観客開催などすでに多くの影響が出ているが、今回のチームスタッフのようにスポーツイベントの直接的な関係者が感染したというのは世界的に見てもほぼ前例がないだろう。それだけに、今後のどのような影響を及ぼしていくのか、自転車競技界、スポーツ界のみならず心配なところだ。
(光石 達哉)