お正月のビッグスポーツイベントのひとつ、箱根駅伝。
しかし、2021年1月2~3日に予定されている第97回大会は、コロナ禍で沿道での応援・観戦は自粛が求められている。
それならば、大会前に往路5区間の107.5kmをロードバイクでひとりで走破することに挑戦し、選手や以前の観客の気分を味わってみた。
後編は4区、5区を走る!
- 4区:東海道の歴史を感じるコース
- 5区:いよいよ天下の険・箱根の山へ
- 5区:本格的な上り坂が始まる
- 5区:国道1号最高地点!めちゃくちゃ寒い!
- FINISH:芦ノ湖到着!自転車より早い箱根ランナーのすごさを実感
4区:東海道の歴史を感じるコース
前編では1~3区までを走り、平塚中継所まで到着。時計はすでに午後1時半で、スタートから5時間半が経過していた。
青山学院大学が2020年にマークした往路の新記録は5時間21分16秒なので、とっくに芦ノ湖にゴールしているころだが、こちらはまだ5分の3しか来ていない。
なんとか暗くなる前にゴールしたいが、日の入りは午後4時半ごろなのであと3時間でゴールできるかどうか…
ひとまず4区20.9kmをスタート。
平塚中継所を出るとすぐに大磯町だ。直進方向が有料道路の西湘バイパスとなるところで、左側の側道に入り、ちょっとだけ海岸沿いから離れて、大磯駅入口の交差点を左折。再び国道1号に合流する。
しばらく進むと、かつて旅人たちに木陰を提供していた東海道松並木が現れる。
沿道には旧大隈重信邸があったり、ちょっと先には旧吉田茂邸があったりと交通機関が発達する前はこの辺りがリゾート地的な感じだったのだろう、と東海道の歴史も感じられる区間だ。
4区はゆったりとした小刻みなアップダウンが続き、二宮町、小田原市へと突入。小田原城の近くも通るが、建物の隙間から小さく天守閣が見えるぐらいだった。
小田原の中心街を抜けたところで緩やかな上り坂となり、小田原中継所に到着した。
レストランやカフェが数件並んでいる駐車場で、箱根登山鉄道の車両も展示してある。道の反対側には、小田原名物かまぼこの老舗である鈴廣本店やかまぼこ博物館もある。
鈴廣の工事のため、2006年に小田原中継所は約3km手前のメガネスーパー前に移されたのだが、2017年からこの鈴廣前の中継所が復活している。
5区:いよいよ天下の険・箱根の山へ
4区までを走り終えて午後3時6分で、日没までは残り1時間半ほど。体力的には問題ないが、ここから最難関の5区20.8kmの山上りが待ち受ける。
走り出してすぐ箱根町に入り、箱根湯本駅前に。Go Toトラベルキャンペーンのニュースではこの駅前商店街の人だかりの映像がよくニュースで使われていたが、キャンペーンも休止中でかつ平日ということもあって、今は人影もさほど多くない。
湯本駅から700mほど進むと、函嶺洞門が見えてくる。がけ崩れを防ぐために作られた半分トンネルになったような道で、ここを選手たちが走るのは印象的な光景だった。
しかし、老朽化のため通行禁止となり、2015年の第91回大会からは右側のバイパスを走るようになっている。
5区:本格的な上り坂が始まる
函嶺洞門を過ぎると、塔ノ沢の温泉街に入り、このあたりから勾配がきつくなってくる。
道は左右にクネクネと曲がり、勾配は8~9%ぐらいが続く。きつい個所では12~13%。となるところもある(100m進んで1m上ったら勾配1%、10m上ったら10%)。
ロードバイクを一番軽いギアにしてスピードは7~8km/hまで落ちるも、なんとかペダルを回して上り続ける。
下から順に大平台、宮ノ下、小涌園と温泉街が現れるが、その間は何もない寂しい山道だ。
ちょうど宮ノ下で午後4時になり、町中に「箱根の山は 天下の険~」のメロディーの滝廉太郎作曲「箱根八里」が流れる。中継所からは約9kmで、まだ半分弱しか来ていない。
宮ノ下を過ぎるとクルマの数も減って走りやすくなったが、だんだん空も暗くなり、気温も下がってきて、寂しさが増してくる。
途中、箱根路を走って上っている人もいた。箱根ランナーみたいなガチ勢ではないようだったが、お互いがんばろーね、な気持ちになる。
5区:国道1号最高地点!めちゃくちゃ寒い!
16時57分、ようやく標高874mの国道1号最高地点に到着。とっくに日は沈んでいる時間だが、うっすらと空には明るさが残っている。
ここが16.26km地点で、芦ノ湖までの残り約4kmは下り基調。しかし、近くにあった温度計はすでにマイナス1℃! しかも、路面がところどころ光っているように見えて凍結も怖い。
ブレーキを握りながら恐る恐る下るけど、ブレーキレバーもつららのように冷たく感じ、生きた心地がしなかったが、やっと芦ノ湖畔の町、元箱根に到着した。
残り2㎞弱、湖に沿って南に進み、箱根関所南の交差点を右に曲がるとゴールは目の前だ。明るい時間だったら、ちょっと感動したかもしれないが、周りが真っ暗で体も疲労困憊で感傷に浸る余裕もなかった。
FINISH:芦ノ湖到着!自転車より早い箱根ランナーのすごさを実感
ゴールに到着したのは、17時18分。5区は信号も少ないので写真撮影も最低限にしてほとんど立ち止まらずに上ったのだが、2時間12分かかった。
5区の区間記録は2020年に東洋大学の宮下隼人選手がマークした1時間10分25秒だが、それよりも倍近くかかったわけだ。
こちらは乗り物を使っているのに、あらためて箱根ランナー恐るべし、とそのすごさを実感した。
スタートからは9時間18分かかり、青学の往路記録5時間21分16秒より、4時間近くオーバーしている。
サイクルコンピューターで記録した信号や休憩で止まっている時間を除いた走行タイムは6時間33分で1時間ちょっとの差だが、考えてみるとほぼほぼ5区でついた差とも言える。
ちなみに往路のコースは107.5kmだが、2区で一時的にコースを離れた今回の走行距離は108.26km、獲得標高(上った標高差の合計)は1,166mだった。
それにしても4区まではほぼ体にダメージは感じなかったが、久しぶりの本格的なヒルクライムだったこともあり5区を走り切ったら、体中バキバキになってしまった。
とはいえ、コースをほぼすべて走れたことで、今度からテレビ観戦するときに「ああ、ここ走ってんだ」と楽しめそうだし、コースの雰囲気も少しはお伝えできたかなと思う。(光石 達哉)