【母校トリビア】二大伝説 「雪の国立」と「ハンターH」とは?~鵬翔高校②(宮崎)

高校サッカー全国優勝の記念碑

高校サッカー全国優勝の記念碑(写真:黒木 達矢)

卒業生が母校のユニークな側面を語るコラム6校目は、宮崎県にある私立高校・鵬翔高校(宮崎市)について。

 

20年春に東大合格者を輩出した進学系の2学科に加え、工業・商業・看護の実業系3学科の計5学科8コースを束ねる手広い高校だ。

2022年には創立100周年を迎える。

 

サッカー部は全国から入部希望者が集う強豪。過去に10人以上プロを輩出している。現在浦和レッズでプレーし日本代表経験もある興梠慎三もその1人だ。

 

かつては地元民からヤンキー校というイメージを持たれていた。近年はヤンキーこそ見かけなくなったものの、幅広いジャンルの学科をそろえるため、生徒も教師もキャラクターが色とりどりだ。

連載1回目は劇せまのグラウンド、"ガリ勉"からリーゼントのヤンキーまでそろう幅広い生徒層について紹介した。

連載2回目の今回は、全国制覇を成し遂げたサッカー部とある理科教師の伝説について。

 

 

 

 

 

“雪の国立”を制し日本一に

事件はサッカー部創立から30年目、2013年全国高校選手権で起きた。

鵬翔は当時のGK浅田卓人の神がかり的な好セーブにより、3回戦まで無失点で切り抜けた。続く準々決勝では立正大淞南(島根)を下し、初めて国立競技場で行われる準決勝への切符を手にした。

 

この時点で在校生も卒業生も狂喜乱舞。SNSには喝采コメントがあふれ、鵬翔フィーバーが起きていた。筆者も、高校卒業後連絡を取っていなかった同級生とSNSで話すきっかけとなり、久しぶりに再会することができた。ありがとうサッカー部。

 

勢いそのままに、準決勝では星稜(石川)をPK戦で制して決勝進出。卒業生は「絶対生観戦しよう」と思ったはずだ。

13年1月は東京都心で8センチ、横浜では14センチの積雪を観測した大雪の年。除雪の影響で決勝は延期になったが、じらされる展開に筆者はアツくなってしまい、大学の友人達に「今、鵬翔、すごいことになってるんだよ」と熱弁をふるった。しかし、これがのちに悲劇を生むとは当時知るよしもなかった。

 

当日も雪が降る中、決勝戦は行われた。相手は同じく決勝初進出の京都橘(京都)。筆者は応援に行く予定だったが、気温の変化で体調を崩してしまった。当時住んでいた地域のテレビ局が試合を放映していたため、おとなしくテレビで観戦することに。

 

試合はシーソーゲーム。2-2のままPK戦にもつれ込んだ。鵬翔は本大会、1回戦から決勝までの6試合中4試合がPK戦。たびたびピンチを救った守護神・浅田がここでも意地を見せ、”雪の国立”を制して県勢初の栄冠をつかんだ。

 

しかし、筆者は複雑な心境だった。

サッカー部について熱弁をふるった相手の中に、サッカー好きの友人がいた。そんなに面白いならと、試合を生観戦したらしい。現地で優勝を見届け、「おめでとう」とメッセージを送ってくれたのだが、筆者がそれを受け取った時、テレビではまだPKが始まってもいなかった。

リアルタイムではなくディレイ放送だったようだ。

最悪な朗報のおかげで、最もドキドキするはずだった場面を心穏やかに見ることになってしまった。もう8年近く経つが、そのことについてはまだ根に持っている。

 

元AKBまゆゆも着た人気の制服

 

 

 

サッカー部の優勝報告を喜んだ人々の中には、元AKB48のまゆゆこと渡辺麻友もいた。前年に3rdソロシングル「ヒカルものたち」をリリース。そのカップリング曲「サヨナラの橋」MVで、渡辺は各都道府県から1校だけ選ばれた制服47着を順番にまとって登場した。

宮崎県からは鵬翔高校が選ばれたのだ。この制服は世界的デザイナー・森英恵がデザインしたもの。制服目当てで入学する女子生徒がいるほど人気が高い。

 

伝説の”ハンターH”

代々語り継がれる「ハンターH」伝説がある。

苗字のイニシャルでそう呼ばれる理科教師は、無類の爬(は)虫類好きだった。日本固有種を網羅した図鑑サイトを運営し、業界では名の知れた存在でもある。

 

筆者の入学時には、すでにいなかった。しかし、交流があったという恩師が顔をしかめながら、伝説について証言してくれた。

 

証言①自宅に行くと そこには…

自宅へ遊びに行った時のこと。

1LDKの部屋にヘビやカエルが入ったガラスケースが所狭しと並んでいた。どれも見たことがない生物ばかり。さながら爬虫類の動物園だった。さらに、風呂場に連れて行かれて浴槽をのぞくと、思わず悲鳴が。そこにはワニがいたのだ。思いもよらない対面に固まる横で、ハンターHは満足そうな笑みを浮かべていたという。当時はまだ大らかな時代で、たびたび生物を輸入しては家で飼っていたとか。

 

証言②ヘビ脱走事件

学校の理科室でもヘビを飼っていた。趣味ではなく、あくまで授業のためだと主張していた。しかし、ハンターHの専門は生物ではなく、化学だ。

ある日、前代未聞の大事件が起きた。ヘビが脱走したのだ。ハンターHはなぜか空になったケースをしばらく眺め、数分後にようやく事の重大さを理解したという。急いで各所に報告し、生徒がパニックを起こさないように教師数人で秘密裏に捜索が開始された。大惨事になる前に見つけられたが、どこから漏れたのか噂は広がり「ヘビ脱走事件」として語り継がれている。

 

 

ハンターHのように自由な教師、そして生徒もキャラクターがバラエティーに富んでいた。

筆者は卒業後、上京して髪を伸ばし、眼鏡からコンタクトに変えた。リーゼントの彼は今頃どうしているだろうか。

 

(黒木 達矢)

 

 

 

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