【ビジネス】青学大・原晋監督から学ぶ「相手を引き出す力」前編

青学大陸上競技部・原晋監督

青学大陸上競技部・原晋監督(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

今年も駅伝の季節がやってきた。

先日の箱根駅伝予選会では1年生ルーキーの活躍、常連校の予選落ちなど涙あり、笑顔ありのドラマを経て、箱根駅伝出場校が出そろった。

本番での注目は、2020年1月に2年ぶり5度目の総合優勝を果たした青山学院大だ。原晋監督はスポーツ指導者としてだけでなく、マネジメントのスペシャリスト、理想のリーダーとして確固たる地位を築き、著書はビジネス・経済書としてランキング入りするほどだ。

そこで原監督の思考から、相手の魅力を引き出し、組織をまとめるコツは何かをひもといていく。自分の長所・短所をいまいちつかめていない就活生、後輩に手を焼く社会人、子育てに悩む方……誰にでもちょっとした気づきがあるかもしれない。

 

 

 

 

コロナ禍の今、「表面的」が進みやすい

「今どきの若者は、本質的な所を理解する力、突破する力がない」

「何事に対しても、基本がすぽっと抜け落ちている」

いつの時代も「今の若者は…」と言われ、その後には大抵ネガティブな表現が続く。

的確な指摘であったり、時には不条理な文句であったり。

 

原監督は「若者は以前と変わっていない」と言う。一方で、すべてに対して表面的で、本質を理解できなくなったと指摘する。

新型コロナウイルス感染拡大が依然として懸念される今、この表面的という言葉が胸にずしりと来る。

何でもオンラインで行うことが好ましいと言われ、人との関わりが薄くなっていると実感する毎日。

この一度染みついた関係性は、コロナが収まったとしても簡単に戻せないだろう。

では、コロナ後のコミュニケーションはどうなっていくのか。 

 

 

会話は「持ちつ持たれつ」 

 

テレビ番組で原監督と美穂夫人、そして学生たちが、陸上競技部の寮で家族のように楽しそうに生活している様子を覚えているだろう。

「グラウンドではピシッと、寮では楽しく」

原監督は選手とのコミュニケーションを大切にしているという。

 

しかし、親子ほどの年の差がある相手に対して、お互いが盛り上がれる話題を見つけることは簡単ではない。

コロナ禍で飲み会にも行きづらくなり、部下とは業務上の会話しかできず、打ち解けられないと悩む上司や、思春期の子どもとの距離感がつかめず寂しい想いをしているお母さんもいるはず。

そこで、原監督に学ぶコミュニケーションのコツは「持ちつ持たれつで会話すること」。

相手が知らないことを聞いたところで答えるわけもなく、「インターネットで調べれば」と言われるのがオチ。ならば、相手が興味のあること、好きなことについて話題を振ってしゃべらせる。そして、自分の興味がある事柄も相手に伝える、というものだ。

 

 

人と人が支え合うことはいつの時代も変わらない

簡単で当たり前のことのようだが、これが難しい。

昨今は、自立とは人に頼らないものであると勘違いしたり、コミュニケーションは業務に支障のない最低限の程度で良いと高をくくる人がいたり。

しかし、それでは、チーム・組織としての成熟は見込めない。

 

表面的な内容の会話は必要ないとコミュニケーションを取ることをさぼるのではなく、若者の得意な“情報を入手すること”を頼ってみる。

原監督は、携帯電話の操作など分からないことがあれば、学生に何でも聞くという。

 

上司・リーダーであっても、分からないことはある。

部下も分からないことだらけなのに、自立しなければと殻の中で苦悶する人もいる。

 

 

意地を張ってプライドを守るのではなく、仲間に頼ってみたら、問題もすぐに解決するし、コミュニケーションもできて仲も深まる。

 

人は人と支え合って生きていく。

時代が変わっても、それは変わらないだろう。 

 

 

最初からうまくはいかない

コミュニケーションに長けた原監督でも、就任当初は組織作りに苦労したという。

それは青学大が、箱根で活躍する以前のこと。

当時の出来上がったチームカラーは簡単には変わらない。

まずは、方向性が多少ずれていてもやり方を学ばせ、ルールを作った。

 

「君たちの4年間の中で優勝させること、夢を叶えさせることは約束できない。ただ、このチームは10年後に必ず優勝させるから、その礎を一緒に作ってくれないか」

 

基本的な考えは「一緒にこの部を立て直してくれ」「一緒にルール作りをしてくれ」.

 

そこにロマンや妄想が加わって初めて、一緒に闘おうとしてくれる。

第一印象で、「すげえこと言ってるな。だけどヤツはやるかもしれないな」と自分自身も思えて、相手にも思わせられるかどうか。

これは配置転換、転勤や転職などを何度も経験する社会人にも通じる。

(mimiyori編集部・五島由紀子=つづく)

 

 

 

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