【母校トリビア】公立校トップレベルの進学校は「秩序のあるカオス」~都立西高校②

都立西高の「愛の泉」

西高正面にある通称「愛の泉」。中にはペリカンの像がある(撮影:丸井乙生)

卒業生が母校のユニークな側面を語るコラム。 

第2回は、都立西高校(東京・杉並区)を20代OGが紹介する。公立校トップレベルの進学校であり、個性派勢ぞろいである点も特徴的だ。

この後編では、西高のさらなる素顔が明らかに。

校歌よりもおなじみの歌がある!

受験生を出迎えた意外なアレとは?

生徒だけでなく、先生たちも超個性派?

 

偏差値より、進学実績よりも興味深い”プチ情報”をお伝え。

 

 

    

校歌はほとんど知らない

西高の歌といえば、校歌よりも学友歌よりも、「帰ろう」だろう。

「帰ろう」とは歌手・宇井かおりさんの曲で、下校時刻に毎日流れる。教室で勉強やおしゃべりをしていた人は、沈む夕陽とともに優しい歌声を聞いて感傷的な気分に浸り、部活勢は、この曲が終わるまでに部室の鍵を返して下校しなければならないという一刻を争う状態に陥る。いずれにしても、西高生の青春、“西春”の思い出深い曲だ。

学友歌は行事の締めに歌う風習はあるものの、校歌に限っては授業の音楽選択者しか歌えない。校内における歌の重要度は、帰ろう>>学友歌>>校歌という異様な順番になる。校歌斉唱では音楽選択の生徒の声がこだまするだけだが、宇井さんが実際に西高を訪れ「帰ろう」を歌った時は、ライブのような興奮状態でみんなが大声で熱唱したとか。

 

受験生を出迎えたモノ 水があふれだした〇〇⁉

入試当日、いよいよテストが始まる。あっ、その前に一応トイレに行っておこう。いざ扉を開けた時…。そこで和式トイレから水があふれているさまを見た受験生は、果たしてどう思っただろうか。

これは校内に代々伝わるトリビアである。いつの時代かは不明だが、事実ここ数年まで西高のトイレはほとんど和式で、設備も古く、汚く、臭かった。

中学生で記念祭を見学に来た際、かく言う筆者も衝撃を受けた。当時は、あちこちの高校を見てきた母親の方がショックを受け、「日比谷にする?」と真顔で聞いてきた。しかし、筆者は、妙に親近感を覚えた。

公立の中学生にとって、高校とは敷居が高いように感じるもので、自分がここで生活している姿が容易には思い浮かばない。私はその時ふと、「ああ、このトイレを使うだろうな」とテレパシーを感じたのだ。決して日比谷に合格する学力がなかったわけではない…。実際、西高に入学して生活していると、トイレに何の違和感も抱かなくなったどころか、トイレでの着替えも平気でできるようになった。

それもこれも昔の話で、トイレは少しずつ改修が進み、洋式の比率も増えているようなので西高を志望する方は安心してほしい。おそらく臭くもないはず。

 

 

先生の名言(迷言)は授業の端々に

生徒も設備も普通ではない高校に長く勤める先生方もやはり普通ではない。

ここでは西高名物の、ある化学の先生のトリビアを紹介したい。

 

・「僕とπ結合してください」=「僕と結婚してください」

・「隅田川に炎色反応を見に行きます」=「隅田川花火大会に行きます」

・「君が授業中に寝ている間にも化学は進歩しているんです」

・化学のプリントを「旬の化学」と名付け、「今やらないと腐っちゃうよ」と生徒を急かす。

 

NHK教育テレビ「高校講座」の講師も務めた権威でありながら、授業中は生徒の冗談にも笑って答え、つい寝てしまった生徒にもユーモアでアプローチする。実際に「π結合」の名言で、奥さんにプロポーズしたというから驚きだ。受け止められる奥さんもやはり大物なのかもしれない。

 

さらに

・日本史の先生は、旧石器時代を学習する時に、必ず猿のモノマネをさせる。

・国語科の先生は授業の50分間を雑談に使い、生徒を笑わせ続けた。

・校内放送「きれいな虹が出ています」

 

先生方のトリビアはまだまだあり、現在進行形で更新され続けていくだろう。

個性あふれる先生方が、さまざまな方策で興味を引こうとしてくるため、面白いことに目がない生徒たちも自然とやる気が出てしまう。生徒主体の行事においても、先生を巻き込んだ企画にノリノリで参加してくれる。ユーモアと抱擁力のある先生方のおかげで、西高生は自由に活動し、好きな勉強に取り組み、人間として成長していけるのだ。 

 

 

「飛翔」~西高の発展は止まらない

このように西高は、多種多様な文化・トリビアを築いてきた。そのトリビアが生まれ、受け継がれていくのが、西高百科事典とも言うべき冊子「飛翔」である。

 

「現代高校の偏狭な利己主義と受験至上主義の横行に対抗して、偽りなき現実認識と、幅広い人間的観点を持って、人類愛の精神を求め、高校生の自主的生き方に力したい」

 

飛翔発刊当時から受け継がれている願いである。

 

小難しい小冊子かと思いきや、中身はウイットと母校愛に満ちた西高生活のバイブルなのだ。3月に卒業する生徒たちが、4月に入学する新入生に向けて、自らの受験勉強の時間をすり減らしながら制作する卒業文集であり、新入生の手引きだ。

西高の代表的な部活動、アメリカン・フットボール部の学生が、車と衝突した時に車の方がへこんだとか、へこんでないとか。1年生の夏までに、食堂で天玉丼とラーメンをセットで食べると、東大に現役で合格するとか、しないとか。そういった300ページ近い飛翔のネタを胸に、新入生は友と語り、教師と議論し、新たな文化を創造する。

 

こうして代々、西高生は西高の文化を愛し、育み、受け継いでいく。

筆者の後世への教訓としては、食堂で天玉丼とラーメンをお腹いっぱい食べるより、勉強しておくべきだったと思う今日この頃(食堂では夜8時まで自習できる)。

(おわり=PN:五島由紀子)

 

 

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