【雑学】自然観察指導員の徒然草=動物の名前の付いた植物シリーズ~鳥類編(続)

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東京都調布市の深大寺自然広場(通称かに山)で見つけたスズメノテッポウの花穂。2013年4月13日(撮影:安藤伸良)

企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、一念発起で転身した自然観察指導員の自然コラム。つれづれなるままに、今回は「動物の名前の付いた植物シリーズ」の第3弾。東京の街中でもよく見かける鳥のカラスとスズメから命名された植物は多く、カラスは総じて「人間の役に立たないもの」、スズメはカラスの名前が付いたものと比べて小さい草本に付けられている。

 

 

カラスウリのタネは金運のお守り

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東京・井の頭公園に咲いていたカラスウリの雌花㊧と新宿御苑で発見したカラスウリの実㊨ (撮影:安藤伸良)

「カラスウリ」はウリ科カラスウリ属のつる性草本で、開花時期は8~9月。レースで飾られたような白い花が咲く。日没後に咲き、朝になると閉じてしまうため目に触れる機会は少ない。夜に活動するスズメガを受粉に誘うため良い香りを出す。

秋になると実は鮮やかな朱色に熟すが、食べられないために「カラスウリ」と名付けられたという。タネは扁平で形が「大黒様」に似ていることから「金運をもたらす」といわれる縁起物で、財布に入れておくといいらしい。皆さんも試されてはいかが?

カラスも食べない「エンドウ」と「ゴマ」

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調布市の野草園に咲くカラスノエンドウの花㊧と東京・石神井公園のカラスノエンドウの豆果㊨ (撮影:安藤伸良)

「カラスノエンドウ」はマメ科ソラマメ属のつる性草本。北海道を除く全国で見られる春の野草で、花期は3~6月。花は小さいが紅紫色の蝶形花が咲く。豆果は3~5センチで、熟すと鞘が黒くなることから命名された。若い茎葉や豆果は、かつては食用にされていたという。

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東京・石神井公園のカラスノゴマの花。2013年9月21日 (撮影:安藤伸良)

「カラスノゴマ」はアオイ科カラスノゴマ属の草本で、花期は8~9月。名前に似合わず黄色で可愛らしい花が下向きに咲く。秋になると、細長い鞘の中に小さなゴマ状のタネがたくさん入っている。これが食べられないためにカラスノゴマと名付けられたか、と勝手に推察している。

 

生薬として役立つカラスもいる

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東京・善福寺公園のカラスビシャクの花。2016年6月8日 (撮影:安藤伸良)

「カラスビシャク」はサトイモ科ハンゲ属の草本で、同じサトイモ科の「ムサシアブミ」に似ている。緑色の筒の中から細いひも状のものが外へ上向きに出る変わった形をしている。花期は5~8月で、日本全国で見られる。緑色の筒状の部分を仏炎苞(ぶつえんほう)と言い、これは葉が変化したもの。仏炎苞の内側に隠れるように雄花、雌花の付いた花序が見られる。除去が困難な畑の雑草として嫌われがちだが、塊茎は生薬に用いられている。

オキナワスズメウリの実は有毒

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東京・野川公園で見かけたスズメウリの花㊧とスズメウリの実㊨。球形の実は小さい卵のように見える。 (撮影:安藤伸良)

「スズメウリ」はウリ科スズメウリ属のつる性草本で、赤い実が「カラスウリ」よりも小さいことから名付けられた。花期は8~9月で、雄花、雌花ともに白花で小さい。実は1~2センチの球形または卵形で、熟すと灰白色となる。

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東京都内にある筆者の自宅で咲いたオキナワスズメウリの花㊧とその実㊨。赤い実は有毒なので要注意! (撮影:安藤伸良)

「オキナワスズメウリ」はウリ科オキナワスズメウリ属のつる性草本。原産地は台湾、南中国、インドなどで、日本では琉球列島に自生する。実が赤く可愛いため園芸品種として人気がある。花は雄花、雌花ともに白花で小さい。実が熟すのは8月下旬~9月上旬で、球形で白の縦線が入っている。熟すと赤くなるが、有毒(中国名は「毒瓜」)のため絶対に食べないこと。

 

スズメノエンドウはカラスのミニチュア版

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東京・神田川沿いで見かけたスズメノエンドウの花㊧とスズメノエンドウの実㊨ (撮影:安藤伸良)

「スズメノエンドウ」はマメ科ソラマメ属のつる性草本で、「カラスノエンドウ」と比べて花も葉も小さいことから名付けられた。花期は4~6月で、長さ3~5ミリの小さい白紫色の蝶形花が咲く。豆果は1センチほどで、中にはタネが2個入っている。

スズメの「道具」も咲いている

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東京・神代植物公園の水生植物園で見かけたスズメノヤリの花穂。2014年4月17日 (撮影:安藤伸良)

「スズメノヤリ」はイグサ科スズメノヤリ属の草本で、日本全国の草はらで普通に見られる。花期は4~5月。茎先に赤褐色の花が球形に多数集まって咲き、この形が大名行列の毛槍に似ていることから名付けられた。

この他にもスズメの名前が付く草本に「スズメノテッポウ」、「スズメノカタビラ」などがあり、草はらで見つけることができる。
(安藤 伸良)