【雑学】自然観察指導員の徒然草=君たちがいて僕がいる 花と蝶の深い関係~前編

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長野・入笠すずらん山野草公園のヨツバヒヨドリの花とアサギマダラ。2021年6月22日 (撮影:安藤伸良)

企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、一念発起で転身した自然観察指導員の写真コラム。

 

つれづれなるままに、今回は「花と蝶」の前編。

 

筆者が自然観察会に参加し始めた頃、自ら動けない植物はどのようにして子孫を広げているのか、なぜ花はいろんな形や色をしているのかなど、次々と疑問がわいてきた。

 

大部分の樹木や草本は、昆虫(や鳥)に花粉を仲間の花の雌しべまで運んでもらって子孫を増やしている。春には多くの樹木や草本が花を咲かせるため、自分の花に昆虫が首尾よく来てくれるか分からない。このため、植物はそれぞれ花蜜を出したり、昆虫の好きな匂いを出したりしてアピールしている。

 

花の色がいろいろあるのは、他の花より少しでも目立つようにしているから、花の形がいろいろあるのは、来てもらいたい昆虫の口吻(口)の形に合わせているからなどと言われている。今回は、これまで撮り貯めてきた写真の中から、花に来ている昆虫の中でもひと際目立つ蝶の写真を紹介したい。

 

 

「旅する蝶」のアサギマダラ

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東京・日比谷公園のフジバカマの花とアサギマダラ。2013年11月3日 (撮影:安藤伸良)

「アサギマダラ」は、タテハチョウ科の蝶で成虫は長距離の飛翔が可能。「旅する蝶」として知られ、2000キロ以上も飛んだ記録があるという。

 

体長5~6センチで、黒や茶色の縁取りがある浅黄色の美しい羽を持つ。夏には涼しい地域へ北上し、秋には南西諸島など暖かい地域に向けて南下するのが特徴。

 

幼虫の食草は、キジョランなどガガイモ科の植物。成虫はフジバカマ、ヨツバヒヨドリなどキク科フジバカマ属の花で吸蜜している姿がよく見られる。

 

日本で最も一般的なナミアゲハ

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東京・武蔵国分寺に咲いていたヒガンバナの花とナミアゲハ。2017年9月29日 (撮影:安藤伸良)

「ナミアゲハ」は、アゲハチョウ科の中では最も日常的に見られる蝶。人家の周辺や草原、農耕地、伐採地など、日当たりのよい場所を好む。

 

幼虫の食草はサンショウの仲間や柑橘類。成虫はさまざまな花の蜜を吸う。

 

クスノキに産卵するアオスジアゲハ

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東京・野川公園のリョウブの花とアオスジアゲハ。2009年6月26日 (撮影:安藤伸良)

「アオスジアゲハ」は、と本州(太平洋側は岩手県以南、日本海側は秋田県以南)、四国、九州、南西諸島に生息している。北海道には分布しない。

 

幼虫の食草はクスノキ科の樹木の葉。クスノキが公園や社寺林に多く植樹されていることから、都市周辺でもアオスジアゲハがよく見られるようになった。

 

 セリ好きなキアゲハ

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長野・白馬山麓植物園のカクトラノオの花とキアゲハ。2010年8月27日 (撮影:安藤伸良)

「キアゲハ」は、全体が黄色と黒で,後ろばねに青やオレンジ色の模様がある。最近は都市部でも増加していて、公園などでもよく見ることができる。

 

幼虫の食草はセリ、ミツバ、アシタバなどセリ科の植物。成虫は各種の花を訪れる。

 

 ダイナミックなクロアゲハ

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東京・神田川沿いのボタンクサギの花とクロアゲハ。2012年7月8日 (撮影:安藤伸良)

「クロアゲハ」は、アゲハの中でも大型で、体の下部に赤い斑点がある。平地や低い山地の森林、公園の中などで見られる。速くダイナミックに飛ぶため捕らえにくい。

 

幼虫の食草は、サンショウや柑橘類など。クロアゲハを含むアゲハチョウ科は脚の先に味覚を感じる器官があり、脚で葉をたたく「ドラミング」によって葉に小さな傷を付けることで産卵前にエサかどうかを確認するという。

 

 地面すれすれを飛ぶベニシジミ

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長野・戸隠高原のノコンギクの花とベニシジミ。2008年10月13日 (撮影:安藤伸良)

「ベニシジミ」は、シジミチョウ科の小型の蝶。前ばねは濃いオレンジ色で黒い斑点がある。日本全国の平地や山地の草原、都市部などでも見られる。

 

幼虫の食草はスイバ、ギシギシなどタデ科の野菊。成虫は地面近くを飛び、タンポポ、シロツメクサなどいろいろな花の蜜を吸う。近くまで寄っても平然としているため、比較的写真が撮りやすい。

(安藤 伸良)

 

 

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