毒ではなく、毒を消す薬草
春から夏にかけ、庭に生える雑草の中で勢いよく葉を伸ばし、白い花を咲かせるのが「ドクダミ」。葉に触れると独特の臭気を発するのが大きな特徴だ。 ドクダミは、ドクダミ科ドクダミ属の多年草。「毒があるからドクダミ?」と思われがちだが、「毒を矯(た)める(直す)」ことから「ドクダミ」と呼ばれるようになったという。多くの薬効があり、「十薬(じゅうやく)」とも言われて、日本では昔から生薬として活用されてきた。消炎や利尿効果もあり、干した葉をお茶にした「ドクダミ茶」も飲まれている。
「ラッキードクダミ」を見つけた!
6〜7月頃に茎上部から1〜3センチの花穂を出し、花弁がない淡黄色の小花を多数付ける。最下部の4つの花が白い「総苞片(そうほうへん=葉の一種)」を十字形に伸ばし、これが花弁のように見える。花が小さく目立たないために白い総苞片を伸ばし、昆虫に花の場所を示していると考えられている。 ほとんどの花は4枚の総苞片を十字形に出すが、まれに5枚、もしくはそれ以上の総苞片を出すものがある。先日朝のNHKラジオ放送で、5枚の花を「ラッキードクダミ」と呼ぶ視聴者の投稿があった。四葉のクローバーを見つけられると幸運だとする話に似ていておもしろい。 自慢ではないが(いや、自慢かも?)、筆者もかつて総苞片が7枚もあるドクダミの花を見つけたことがある(写真㊤)。
八重咲き品種もある
改良品種だと思われるが、「八重のドクダミ」もある。文字通り、総苞片が八重咲きになっている。 筆者宅の庭にも、近所の方からいただいた八重のドクダミの花が咲いている。シーズン本番に向けて、最近は少しずつ広がりをみせてきた。
カラフルな「カメレオン」は欧州で人気あり
東京都調布市にある野草園を訪れた際、葉が緑の単色ではなく、黄色や赤みがかったドクダミを見つけたことがある。この斑入り品種の名前を聞いたところ、「カメレオン」と教えてもらった。カラフルなこともあり、英国など欧州では観賞用として人気なのだとか。「ゴシキ(五色)ドクダミ」と呼ばれることもあるという。
ハンゲショウの香りも嗅いでみよう
同じドクダミ科に「ハンゲショウ」というドクダミと同様に独特の臭気のある草本がある。漢字では「半夏生、半化粧」と書き、別名は「カタシログサ」。 「半夏生」とは、広辞苑によれば、72候の1つで夏至から11日目に当たる日(太陽暦では7月2日頃)のこと。梅雨が明け、田植えの終期とされる日をいう。ちょうどこの時期に花が咲くことから、この名前が付いたとされる。 花穂に小さな白花が多数付き、下から順に咲き上がっていく。この花も目立たないことから花穂の近くの葉を花の時期だけ半分程度、白くしている。別名のカタシログサや漢字の「半化粧」は、ここからきていると思われる。公園などで見かけたら、葉の匂いをそっと嗅いでみてください。(安藤 伸良)