【雑学】自然観察指導員の徒然草=鼻も使って花を観察しよう 「ドクダミ」と「ハンゲショウ」

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毒ではありません! 東京・善福寺公園に咲いていたドクダミの花。2018年5月16日 (撮影:安藤伸良)
自然観察指導員とは、自然を守る登録制ボランティアのこと。「自然観察からはじまる自然保護」を合言葉に、日本各地で地域に根ざした自然観察会を開き、自然を守るための仲間づくりに励んでいる。 日本自然保護協会が主催する指導員講習会を受講、修了して登録申請すれば、誰でも登録可能。企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、63歳で登録し、指導歴13年を超えたシニア指導員の自然コラムを紹介する。 つれづれなるままに、今回は薬草としても知られる「ドクダミ」のあれこれ。目で見るだけでなく、鼻も使って観察するのがお勧めです。

 

 
  

毒ではなく、毒を消す薬草

春から夏にかけ、庭に生える雑草の中で勢いよく葉を伸ばし、白い花を咲かせるのが「ドクダミ」。葉に触れると独特の臭気を発するのが大きな特徴だ。 ドクダミは、ドクダミ科ドクダミ属の多年草。「毒があるからドクダミ?」と思われがちだが、「毒を矯(た)める(直す)」ことから「ドクダミ」と呼ばれるようになったという。多くの薬効があり、「十薬(じゅうやく)」とも言われて、日本では昔から生薬として活用されてきた。消炎や利尿効果もあり、干した葉をお茶にした「ドクダミ茶」も飲まれている。

「ラッキードクダミ」を見つけた!

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東京・善福寺公園で発見した総苞片7枚のドクダミの花。これ以上のラッキードクダミを見つけた方はいますか? 2014年6月30日 (撮影:安藤伸良)

6〜7月頃に茎上部から1〜3センチの花穂を出し、花弁がない淡黄色の小花を多数付ける。最下部の4つの花が白い「総苞片(そうほうへん=葉の一種)」を十字形に伸ばし、これが花弁のように見える。花が小さく目立たないために白い総苞片を伸ばし、昆虫に花の場所を示していると考えられている。 ほとんどの花は4枚の総苞片を十字形に出すが、まれに5枚、もしくはそれ以上の総苞片を出すものがある。先日朝のNHKラジオ放送で、5枚の花を「ラッキードクダミ」と呼ぶ視聴者の投稿があった。四葉のクローバーを見つけられると幸運だとする話に似ていておもしろい。 自慢ではないが(いや、自慢かも?)、筆者もかつて総苞片が7枚もあるドクダミの花を見つけたことがある(写真㊤)。

八重咲き品種もある

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東京都内にある筆者の自宅に咲いた八重ドクダミの花。2017年6月7日 (撮影:安藤伸良)

改良品種だと思われるが、「八重のドクダミ」もある。文字通り、総苞片が八重咲きになっている。 筆者宅の庭にも、近所の方からいただいた八重のドクダミの花が咲いている。シーズン本番に向けて、最近は少しずつ広がりをみせてきた。

 カラフルな「カメレオン」は欧州で人気あり

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自宅付近で見かけたカメレオンの花と葉。葉がカラフルで欧州では人気がある。2018年5月18日 (撮影:安藤伸良)

東京都調布市にある野草園を訪れた際、葉が緑の単色ではなく、黄色や赤みがかったドクダミを見つけたことがある。この斑入り品種の名前を聞いたところ、「カメレオン」と教えてもらった。カラフルなこともあり、英国など欧州では観賞用として人気なのだとか。「ゴシキ(五色)ドクダミ」と呼ばれることもあるという。

 

ハンゲショウの香りも嗅いでみよう

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東京・井の頭公園に咲いていたハンゲショウの花と白化した葉。折り鶴にも見える。2014年6月17日 (撮影:安藤伸良)

 

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東京・神代水生植物園のハンゲショウの群生。2014年6月19日 (撮影:安藤伸良)

同じドクダミ科に「ハンゲショウ」というドクダミと同様に独特の臭気のある草本がある。漢字では「半夏生、半化粧」と書き、別名は「カタシログサ」。 「半夏生」とは、広辞苑によれば、72候の1つで夏至から11日目に当たる日(太陽暦では7月2日頃)のこと。梅雨が明け、田植えの終期とされる日をいう。ちょうどこの時期に花が咲くことから、この名前が付いたとされる。 花穂に小さな白花が多数付き、下から順に咲き上がっていく。この花も目立たないことから花穂の近くの葉を花の時期だけ半分程度、白くしている。別名のカタシログサや漢字の「半化粧」は、ここからきていると思われる。公園などで見かけたら、葉の匂いをそっと嗅いでみてください。(安藤 伸良)