寝技の格闘技イベント「QUINTET」後楽園ホール大会が13日、東京・水道橋で行われ、お笑いコンビ「ガリットチュウ」の福島善成が参戦した。
福島はIQレスラー・桜庭和志大会プロデューサーとその長男・SAKU Jr.の親子コンビと対戦。途中で相方の熊谷茶と臨時で交代しながら5分間のエキシビジョンマッチを戦い、コンビで合計8本を取られる〝惨敗〟を喫したが、会場を大いに盛り上げた。
柔術は2020年12月から道場で習い始め、本大会に向けて芸人離れした本格的トレーニングを重ねてきた。今後も練習は続けていく予定だ。
“神のおじさん”後楽園ホールに散る
柔道二段、フライパンを曲げる怪力、週6日の猛練習。芸能界最強芸人ともささやかれる自信は、桜庭親子の前で崩れ去った。
福島は2020年10月に開催された同大会を観戦し、寝技の面白さに衝撃を受けたという。昔取った杵柄の柔道では、43歳は組手のスピードについていけないというが、寝技なら戦えると踏んだ。
同年12月から道場で柔術を習い始め、週6日練習。ウエートトレーニングはせず、スパーリングだけにもかかわらず、最高108キロあった体重は75キロまで落ちた。
練習の中で自分には才能があると感じ、自身を「神の子ならぬ神のおじさん」と称していた。しかし、試合前日になると不安で一睡もできなかったという。
試合は急きょコンビで交代しながら臨んだが、1本も取れなかった。
「気付いたら決まっていた。腕を決められても抜け出せるだろうと思っていたれど、全然抜けなかった」と試合を振り返り、「きょうも寝れないかもしれない」と悔しさをにじませた。
〝リアル・テリーマン〟VS 覆面軍団
入場ではゆでたまご作の漫画「キン肉マン」の主題歌が流れ、コンビで登場した。
福島はテリーマンを模したコスチュームで現れ、本家本元の眉間にある「米」の文字もしっかりひたいに記入。入場後はショートコントを披露し、気合十分の2人に会場は楽しげな雰囲気に包まれた。
続いて、試合直前まで発表されていなかった相手は桜庭和志のテーマ曲に乗って登場した。マスクをかぶった3人が入場し、最初にマスクを取った人物は、対戦相手ではなく島田レフェリー。
肩透かしを食らったコンビ2人と観客だったが、2人目が顔を見せた瞬間、驚きの声も上がった。相手は大会主催者である桜庭和志の長男・SAKU Jr.だった。
桜庭親子にコンビで計8本取られる
試合が始まると、福島は果敢に攻めた。幼少時から大学まで柔道一筋に打ち込んできたSAKU Jr.相手にひるまず、タックルしていったが、寝技地獄に持ち込まれ、開始1分13秒で左腕をきめられて一本を取られた。
続いて開始3分21秒、SAKU Jr.が2本目を取ったところで、3人目のマスクマンと交代した。正体を現した選手は大会プロデューサーの桜庭和志。観客は拍手で迎え入れ、大盛り上がりとなった。
試合再開と同時に福島は桜庭に飛びつかれ、10秒たたずしてこの試合3本目をあっさり奪われた。
たまらず相方・熊谷に助けを求め急きょ交代したが、熊谷は格闘技経験がなくこちらも秒殺された。
その後も、肋骨に肘を入れられてタップするも、島田レフェリーならではの「疑惑の無視」で攻撃は止まらず、熊谷の断末魔の叫びがしばらく会場に響き渡った。
心を折られながらもコンビ間での交代を繰り返して戦い、2人で合計8本取られた。試合後は各々握手を交わして健闘を称え合った。
福島の表情は晴れ晴れとしていたが、熊谷は握手後も桜庭親子2人ともに技をかけられ、ぐったりとした様子。
試合後の会見で、熊谷は「(格闘技の心得は)ゼロです。レジェンド相手にうれしかったです。でも、試合後も技をかけられた気が……」と遠い目をしていた。
週4日の柔術練習日獲得のために妻と交渉
桜庭は「フライパンを曲げるだけはある」、SAKU Jr.が「40過ぎのおじさんとは思えない」と福島の奮闘を称賛した。
一方、ガリットチュウの2人は共に対じした桜庭親子に「『怖っ』と思った」と恐怖を感じたことを告白した。福島は「普段のスパーリングと違って、きょうは1分で息があがった」と試合の怖さも感じたもよう。
今後も柔術を続けていくつもりだが、今まで週6日していた練習を夫人から週2日に減らすよう言われている。週4日を希望しており、次の試合の前に「妻への交渉」という名の負けられない戦いが待っている。
見事打ち勝ち、特技のフライパン以上のものを曲げる日が来るかもしれない。
(黒木達矢)